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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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60. 高級店の展開

 冷蔵庫の発明から、それを使った流通経路を考えている。とりあえずはクラープ町とクルーズン市の間だ。


クラープ町と途中の宿場町に氷魔法使いを常駐させ、農産物などを運ぶことにした。



 冷蔵はそれなりに高くつく。冷蔵庫は大型化して、中にいれる食品当たりの冷蔵庫の重量や容積は小さくなったが、それでも運ぶのに余計に経費がかかる。


しかも冷蔵や冷凍には氷魔法使いも必要だ。だから運んでペイするのはわりと高級なものばかりだ。



 ただその辺はマルクが心得ていて、質のいいものをよこしてくれる。


それにセレル村もブドウなどはずいぶんよいものが取れるようになっていた。


そういえば前のパラダ騒動のときに、パラダの番頭がセレル村からブドウを買い付けられずによその村から買ったら、ずいぶん質が低かったことがあったそうだ。



 そんな風にしてわりと良質の商品を冷蔵で運ぶ。だが初めのころは売り方がよくわからなかった。


露店で売ろうとして、さすがに値付けが高いためか、ほとんど売れずに閉店前に投げ売りになってしまった。


考えたらそれはそうでだいたい露店では冷蔵庫を持って行くほどの余裕がない。


だからせっかく冷やして持ってきたのに常温で放置になってしまう。


しかもふつうの食品を売っている中に高級品が入っていたから、買いに来た人は戸惑うばかりだったらしい。


「何か売れませんね」

「また投げ売りになってます」

「このままだと大赤字ですね」


他で儲かっているので、商会自体は赤字にならないが、この事業で他の黒字を食いつぶすのも避けたい。


もちろん何かし始めるときに赤字なのは仕方ない。とはいえ営利事業でそれがずっと続くのは問題だ。


「せっかく冷蔵で持ってきたのに、常温で売ることないよな」

まったくもってその通りだ。


「じゃあ、冷蔵庫を備えた店をやってみよう」

せっかく冷蔵で持ってきたのだから、冷蔵で売った方がいいに決まっているのだ。


「そうすると露店というわけにはいかないよな」

冷蔵庫となると運ぶのが結構大変だ。


ところでうちは露店が多いが、固定の店も出していないわけではない。だから店を出すのも、一から手探りというわけでもない。


そんなわけで冷蔵庫を置く店を作ることにした。ちょっとやり方が泥縄過ぎる気がする。もう少し計画的にするべきだった。




 こちらの世界では珍しい冷蔵庫を備えた店で、しかも商品は質の良いものだ。そうすると高級店となる。


高級店となるとそれなりにいい場所に置かないといけない。場末に高級店を置いても金持ちは来ないし、庶民は買わないしで、また困ることになる。


ただいい場所となると借りるにしても家賃は高いし、物件を買ったらますます高くなる。けっこう頭の痛い問題だ。



 上手く行っていない事業にまた金を投入するのもちょっと危なっかしいところはある。どんどんお金が飲み込まれかねない。


とはいえ前世で大きな事業を作った人たちの過去を振り返ると、結構試行錯誤して失敗している。そんなに計画通り上手く行くというのもめったにないことなのだろう。


ごくたまにそう言うことがあってクローズアップされるが、偶然に過ぎないものを拾ってきた結果に過ぎないように思う。




 さすがに高い場所にいきなり物件を購入するのは危ないので賃借で始めることにする。けっこうおそるおそるだった。


「だいじょうぶですかね、あの店」

アランに言われるが、不安になることを言わないで欲しい。とは言え、失敗しても別に商会の屋台骨がどうにかなるわけでもない。



 冷蔵品についてはうちで売るだけでなく、ブリュール氏の店やレオーニ氏の店他にも取引先にも回している。


ブリュール氏だとちょっと競合しているので宣伝を頼むわけにもいかないが、レオーニ氏にはうちの新しい店の宣伝をお願いした。


そんなに大事でもない。ポスターを出してもらい、チラシを置いてもらうくらいだ。ただこのチラシもひと悶着あった。



 初めは文字だらけだったのだが、

「これじゃ誰も手に取ってもらえないわ」

と評判が悪い。


その手のものもデザイナーに依頼して少し高級感を出さないといけないらしい。


「また金がかかるよ」

「こういうのはかっこをつけないと」


赤字を増やしたくなかったが、元のままについては反対が多く頼むことになった。




 いろいろ不安もあったがふたを開けてみるとさすがにクルーズン市は金持ちもそれなりの割合でいるようだ。


けっこう値段も高くなってしまったが売れるようになった。果物も乳製品も露店の倍以上どころか3倍4倍したりしても売れるのだ。


もちろん味は違う。ただ味が2倍3倍4倍かというとそう言うわけでもない。値段に対して対数カーブぐらいでしかよくなって行かない気がする。


前世知識でチートしていたつもりだが、考えてみるとブラックにいたせいか高級品の世界とは縁遠かった。


こういう物の売り方は知らなかったことを思い知らされた。いくら複雑な社会にいたからって、何でも知っているわけではない。




 やはり高級品を買いたい人はいるらしい。


単に見栄の場合もあるし、見栄の一種かもしれないが人に渡すものは高級品だと示さないといけないこともあるみたいだ。


「なにか、一目で高級品だとわかるようにできませんかね」


そう言われて、うちの高級店でだと一目でわかるパッケージをやはりデザイナーに頼んで作ってもらうことにした。


うちのものを買う人はそういう見せびらかし以外にも、お金がありすぎて庶民が100ハルク使うのと同じ感覚で1万ハルクを使う人もいるようだ。


「いやあ、儲かってますね。あの店」


どうにも想定外だった。


こじんまりした店で始めたが、けっこう来客が多くさばききれないので、近くの大きい店に移ることにする。しかもやっていけそうなので今度は物件の購入もしてしまう。



 規模の拡大に合わせて輸入も拡大した。商品を切らすわけにはいかない。


氷魔法使いについてクラープ町とクルーズン市はそれなりの数がいるが、途中の宿場町は不安だ。


いちおう魔法使いに事故があっても魔法報で知らせてもらえば両隣の街から応援に行けばいいだけだが、今後も取扱いの荷物が増える可能性がある。


宿場町の住民に声をかけてうちが金を出してごく簡単な氷魔法を習ってもらうことにした。


彼らはふだんの生活で魔法が使えるし、うちはもし氷魔法使いが何かの事故で不在になったら時間はかかるが彼らに氷を作ってもらうこともできる。いちおうのバックアップだ。




 高級店を始めたからか、うちの商会の世間での扱いが少し変わってきた。


うちはもともと露店ばかりだったから、安い店扱いだったが、高級店でしかも包装紙のデザインの工夫などあって人の目に留まるようになると、今度は高い店扱いになるらしい。


なんとなく混乱しそうだ。たぶん商会は一つでもブランドは複数で展開した方がいいのだろう。


何か新しいことをすると思いもよらないことが起こるのを感じる。


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