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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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クラープ町との冷蔵流通についての相談

 冷蔵庫を「発明」して、いろいろありすぎたが、クラープ町からの輸送に利用する実験をしてみた。


プラムを運んでみたが、青果商のブリュール氏は仕入れ値の5倍以上でも売れるという。


それから冷蔵と冷凍で一長一短あることなど色々見えてくることがあった。




 クラープ町からクルーズン市までは馬車で2日弱で途中に宿場町が2つある。


もし恒常的に冷蔵品を送るとなると、2つの宿場町に氷魔法使いを置く必要がある。


それはそれでかなり経費も掛かるので、するべきなのかどうかわからない。




 ところで実験自体の収支はというと多少の赤字というところだ。


それは氷魔法使いを2日も拘束して、さらに移動までさせて、実際に魔法を使ったのは2回だけでしかないからだ。そこに猛烈に経費が掛かっている。


氷魔法使いが途中の宿場町に常駐して、1日に何度も魔法を使えば、荷物当たりの経費は減る。


だから実際に儲かるかどうかは流通量次第となる。役員たちと話してみる必要がありそうだ。


「この前、クラープ町からプラムを冷蔵で運んだんだけど、ブリュール氏が言うには仕入れ値の5倍よりもっと高く売れるそうなんだ」

「へえ、それなら大儲けじゃない?」

「かなり期待できそうだな」


「ただ経費も掛かっていて、氷魔法使いを同行させたから赤字になってしまったんだ」

「赤字じゃ仕方ないわね」


「そうは言っても、今回は実験だからものすごく非効率だったわけで、もっと効率よく魔法が運用できたら儲かる可能性は十分ある」

「なかなか難しそうだね」

「実際の数字を出してみる必要がありそうです」


それはもっともなことだ。実際の経費や儲けなどを計算しないといけない。


「考えたら、他の街道もあるんだよな」


それはその通りだ。クルーズン市は南北に大きな街道があり、東西への道はそれより小さい。クラープ町はその東への道の先になっている。


それ以外にももっと小さい道も別の方向に走っている。大きい道の方が流通には便利で、南北の道を優先することも考えられる。


「だけどクラープ町はみんなの出身地だし、それをおくとしても、うちは向こうの町との輸出入が多いんだよな」


もともとドナーティ商会がしていた輸出を引き継いで拡大しているので、そちらからの流入が多い。


「まだ実験段階だから、勝手のわかっているところでした方がよさそうですね」


それもその通りだ。やはりクラープ町との間で始めるのがよさそうだ。


「じゃあ、とりあえず初めはクラープ町との間にしようか」

「そうね」

「そうですね」

「賛成」


「よくよく考えてみると、クラープ町からクルーズンに冷蔵品を輸入するだけでなく、逆方向の輸出もありますよね」


それもその通りだ。クラープ町で商売していたころはよくクルーズンからの輸入品を売っていた。


「氷魔法使いは近隣出身者にすればどうですか? 宿場町は2つありますが、クルーズンよりの方なら半日でクルーズンにつけますし、クラープ町よりの方なら半日でクラープ町につけます」


とりあえずそれでいいと思う。こんご長く続けられるようなら、宿場町の出身者を氷魔法使いとして養成してもいい。


あれらも宿場町だけでは仕事がなくてクルーズンにできていたりする。もしかしたら探せばうちにもいるかもしれない。


「氷魔法使いはうちの経費で置くわけですが、よその業者に使わせてもいいわけですな。それはもちろん料金は取りますが」


まったくもってその通りだ。うちだけが独占的にクラープ町からの輸入をしているわけではない。


よその業者も高く売れることが分かれば、氷魔法を利用したがるだろう。だが氷魔法使いを一から養成してそれほど規模の大きくない輸出にまでは使えそうにはない。


そこでもしうちが有料で提供したら、かなり高額でも飛びついてくる可能性が高い。


「あと課題になるのは冷蔵庫のことなんだ」

「なにかあるの?」


「小さい冷蔵庫を何台も置いたから、けっこう場所取ってしまって、それほど肝心の果物は運べなかったんだよね」

「なるほど」

「そうだよな」

「大型化すればいいのですか?」

「大型化は一つの手になると思う」

「じゃあそうするということで」


「そんなに急いでいいのかな」

新しいことは小さくがモットーなので少し不安になる。


「でもそれほど大金じゃないだろ。しかも失敗しても誰かが嫌な目に合うわけでもないし」

「もう少し大きい冷蔵庫なんかも実験的に作ってもらったらどう?」


そう言われるとそんな気もしてきた。やはり一人で考えているよりいい。


そんなわけでクラープ町との間に冷蔵の流通ルートを作ることと大型の冷蔵庫を発注することを決めた。






 家に帰るといつものようにクロと神がいる。家に神がいるというのもすごいが、クロはそれより高い存在だ。


「クロ、今日は冷蔵庫を使った流通を考えてきたよ」

「にゃあ」

実際になくわけではないが、呼びかけに反応してこちらを見てくれる。


「なんじゃそれは?」

「冷やしたまま食品なんかを運ぶんだよ。そうすると痛まない。クロに新鮮なものがあげられる」

クロ相手よりぞんざいな口のきき方になる。


「そんなものワシが魔法をかければすぐに新鮮になるぞ」


そういえばこれは時間が戻せるのだった。


「冷やした方がおいしいものもあるからな」

「クロ様は冷たいものはお召し上がりにならない」


そう言えばそうだ。猫は冷たいものは食べない。


「お主のやることは無駄ばかりじゃな」


「猫を増やす計画はどうなっているんだ。猫が何千何万になったらあんたが面倒見切れなくなる。そうしたら冷蔵庫や流通の恩恵を受ける猫も出てくるぞ」

「そうなっても全部面倒を見られないわけじゃないんじゃがな」


なんか多頭飼育崩壊させる飼い主みたいだ。大丈夫だろうか。


「あ、なんか疑いの目で見たな。神を疑う所業だぞ」


これを信じろという方が無理な気もする。だが対抗するのも大人げない。


「まあまあ、猫様がたくさんになっても神様にご負担をかけずに猫様が幸せに暮らしていくための準備です」


「うむ、それでよい」


前世の日本のオッサン相手じゃないかと思う。


猫に様をつけるのも何か変な感じだが、そうした方が神は喜ぶだろう。


この神に様をつけるのは苦痛だが、ここは大人になろう。


あーあ、ゴマすりの技術だけが進歩していく。



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