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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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クラープ町から冷蔵品を運ぶ

 冷蔵庫を作って、作り手が足りないので徒弟を増やし、氷が必要なので氷魔法使いも養成した。あとするべきことは冷蔵庫を使った流通と新商品だ。



 実は流通は始めに考えていたことだった。クルーズン市は郊外のあちこちから食糧を輸入している。


輸入という言葉は変な感じだが、伯爵領だけでなく他領もあるのである意味正解なのだ。


前にうちと争った子爵領クラープ町のパラダも輸出していたし、もともとドナーティ商会も輸出していて、うちがこちらに来たのでそれを急拡大させた。


ところがやはり保存がネックになるのだ。




 クラープ町とクルーズン市の間には宿場町が2つあるが、その周辺は地形的に広い畑や牧場を設けるのは難しい。


やはり少し離れていてもクラープ町周辺から持ってきたい。だが馬車でも2日弱かかると持ってこれないものもある。


俺が子どもの頃にブドウで大儲けしたのは、ギフトのホールがあるからだった。傷みやすいものを迅速に持ってきて高く売ったのだ。


とは言え、ギフトはバレると危ないので派手には使いたくない。実はまだ毎日クラープ町と行き来はしていて、物は持ってきているが、下の者にばれない範囲でだ。




 クラープ町との流通となるとやはりマルコとの話になる。いや実際は他の幹部もみんなクラープ町出身で、俺とマルコとシンディだけセレル村なんだけれど。


それでも向こうに父親のマルクがいて、実際に流通に携わっているのは強い。


「冷蔵庫だけど、もともと考えていたのは冷気の保存庫で、遠くから食料を持ってくるためなんだよね」


よくよく考えるとフードマイル的にはよくない気がする。とは言え、都市の周りで作れないものは仕方ない。


「冷やせば果物とか乳製品とかもって来れるかもしれないね」

「そうだろ?」

「ただちょっと費用が掛かりそうだね」


それはその通りだ。馬車に冷蔵庫を何台も載せるか、そもそも大型の冷蔵保管庫を車付きで作るかして家畜にひかせるか、いずれにしても費用が掛かる。


しかも氷魔法使いをクラープ町と途中の宿場町に置かないといけない。


ただ今まで誰もしていないというのは何か難点があるからしていないわけで、それを解決すればしばらくは大儲けの場面になる。


「そうなんだよなあ。だからたぶん高級品中心に運ぶことになると思う」


容積当たりの値段が安いものは冷却と運搬に費用が掛かりすぎて難しそうだ。


例えば1リットルの体積で原価100円のものに冷却と運搬で100円かけたら2倍の価格になってしまうが、500円のものに100円かけても1.2倍にしかならない。


牛乳などは無理でバターやチーズは運べて、リンゴは無理でブドウは運べるような気がする。


ところでクラープ町との間だけでこれをしたいわけではない。あくまでもテストケースだ。


実際に上手く行けばもっと四方八方に広げると思う。ただその前にうち以外が進めてしまうかもしれないけれど。


「それなら上手く行くかもね。だけどあの冷蔵庫を馬車に載せるの?」

「どうしようかと思っている。大型の冷蔵庫を作ることもありうるだろうし」


小さい冷蔵庫を載せると無駄なスペースがたくさんできてしまう。だいいち冷蔵庫自体で重くなる。


「でもいつものフェリスのやり方だと、最初は小さくだよね」

「ああ、そうだった。小さい冷蔵庫をいくつも載せればいいか」

「はじめはそれでいんじゃない?」


そういうわけで、実験的に始めることにした。氷魔法使いも本当に事業として展開するなら、途中の宿場町に常駐してもらうが、とりあえずは泊まってもらえればいい。


実験には青果商のブリュール氏にも付き合ってもらう。買い手の立場から実際にものを検分してもらうためだ。


「送っていただいた冷蔵庫は面白いものですな。なるほど果物や野菜の保存期間が延びます。

ただものによってしなびたりむしろ悪くなったりもあるのでいろいろ試しているところです」


それはそうだと思う。前世では冷蔵庫に入れてはいけない野菜や果物なんて言うものもあった。それに野菜室とかチルド室とか使い分けがあったが、今はない。


ただこちらでは冷蔵庫はまだプロユースの道具だ。素人向けなら誰でも何も考えずに使えるようにしないといけないが、プロ向けなら使用者当人が工夫すればいい。


可能ならそのノウハウを集めて製品や使い方には生かしたい。顧客も簡単には教えてくれないだろうけれど。




 プラムが取れるようなので、それを送ることにする。ただいろいろ条件を変える。


プラム自体を凍らせてしまう場合と、冷蔵庫で間接的に冷やす場合などだ。


もちろん単に常温で運んでしまう場合も入れる。




 氷魔法使いはクラープ町で魔法を使って氷を作り、荷物に同乗して途中の宿場でも魔法を使う。


実際にそれくらいの間隔で使うと思われるので、それを再現する。




 実際に試してみるとやはり常温品は痛みが多い。冷凍と冷蔵だと冷蔵の方がおいしいようだ。

「冷蔵の方がおいしいようですね」

「そうですね。ただどちらの方が長く保存できるかも試してみたいところです」


そう言われて一部について保存を続けてみた。すると今度は冷凍の方が有利なようだ。


「なるほど一長一短なんですね」

「いろいろ使い方に工夫の余地がありそうです」


その点はいろいろ試さないといけないと思う。


「ところで費用の方はどうですか? 今回は実験なので運送の経費がバカ高いのは仕方ないとはいえ、通常でもざっと仕入れ値と同じくらい運送費がかかりそうですが」


「いや、これなら仕入れ値の最低でも5倍かいやもっと高くても売れますよ。今から楽しみですな」


そんなわけでかなり期待できそうだった。もちろんプラムだけに限るつもりはなく、バターとかチーズとか容積のわりに値段の高いものでどんどん試すつもりだ。


そうしないと途中の宿場町に氷魔法使いを置くこともできない。それだけでなく、他の町や村との間でも広げるつもりだ。


これなら冷蔵庫を大々的に宣伝せずにうちだけでやっていてもよかったかもしれない。とにかく一歩は進んだ。


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