表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
326/638

皮を使ってゼリーを開発

 冷蔵庫をレオーニ氏に譲渡したら煮凝りを作っていた。それを見た肉の加工職人のミルトンが皮でもそのプルプルを作れるという。


そこでその水分を固める成分で果汁が固まらないかを提案した。レオーニ氏はうちの従業員を研究に貸してくれと言ってきたが、こちらも人手不足なので断る。


代わりに1人徒弟をうちの金で雇って出すことにした。修行が終わったらまたうちで雇う契約だ。




 レオーニ氏はつまりゼラチンやゼリーを作りたいらしい。ミルトンに皮からどうやって作るか聞いてみた。


「あのプルプルは皮からも作れるんだっけ?」

「ええ、皮を煮出すと作れますよ」


たぶん皮にコラーゲンが含まれていて、それを煮出してゼラチンになるのだと思う。むしろ骨よりもたくさん含まれているのかもしれない。


「そういえば皮ってどう処理するの?」

「毛皮やなめし皮にする部分もあれば、脂肪部分は油にしますし、そのプルプルの部分はにかわにしますね」

「へえ。膠というと接着剤だよね」

「ええ。そうらしいですね。そっちの職人に売っていますよ」

「なるほど。ところでそれは食べられるの?」

「食べたりはしませんでしたね。食べられないものではないですが」

「なんで?」

「別にあまりおいしくないですし。でもこの前のレオーニさんの料理や店主の言うような果汁を固めたものは食べてみたいですね」



そんなわけでミルトンもレオーニ氏に呼ばれてゼラチンを作りに行った。


なんでも皮から脂肪を剥がして、プルプルの部分を煮出すそうだ。それから不純物を取り除かないと味に雑味が出るらしい。


そうしてまたレオーニ氏から呼ばれる。


「君のところのミルトンの助言でずいぶんと研究が進んだよ」

「お役に立てたなら幸いです」

「それで今日は味見してもらおうと思ってね」

「ええ、ぜひお願いします」


煮凝りが出されるが、以前よりしっかり固まっている。弾力もずっとある。それから果汁を固めたものも出される。


「どうだい?」

「以前よりずっとおいしいです。果汁の方もなかなかのものです」

「あの成分の方は確かに皮を煮出してできたんだが、使えるような形にするのはけっこう苦労したよ」


それはそうだろうと思う。精製したり濃縮したりいろいろあるはずだ。


「いやなかなかのものだと思いますよ」

「そうか。もう一工夫できるといいと思っているんだが、どうもうまくいかなくてね」

「こっちのスープの方はもう少し透明度を高めて、中に赤や青の野菜を入れたらどうですか?」

「えっ? それは面白そうだな」


「それから果汁の方は少し味が薄いですね。濃縮するか砂糖を入れるのがいいような気もします」

「なるほどな。いやこんな全く新しいものを目にして、君はいったいどこからそんなアイディアが出てくるんだい?」


そりゃ前世で見たからに決まっている。それで前世にもっといいものがあったからだ。


レオーニ氏は俺に言われたことをすぐに試したいらしい。ただ結果が出るのにはゼリーが固まるのを待たないといけない。


少なくとも俺は今日は見届けることはできない。


「じゃあ、またそれは次回のお楽しみということでいいですか?」

「ああ、よろしく頼むよ」




 そんなわけでまたレオーニ亭に呼ばれてお邪魔することになった。


今度は煮凝りの方は透明度が高く直方体に切られ、中には豆や人参やコーンが入り色とりどりで楽しげだ。見た目だけでなく味も十分に洗練されている。


「いやあ、これはすばらしいですね」

「そう言ってもらえると作った甲斐があるよ。果汁の方はどうだ?」

「ええ、こちらも本当においしいです」


俺にそう言われてレオーニ氏はかなり満足そうだ。



「ところでこれ、なんて呼んだらいいかな?」

「まあなんとなくですが、名前がないと不便なのでゼリーとでも呼んでおきましょうか」

「ゼリーか。なんとなくそんなイメージだな。名前の由来は何だい?」

「いや特にありません。なんとなく呼びやすくて、食感を表しているだけです」

「まあそれでいい」



「それでうちはもちろんレストランでこれらを出すけれど、君の方はどう商売するんだい?」


こちらの煮凝りの方は前菜とかスープの類で屋台には向かないように思うのだ。


それに比べて果汁のゼリーの方はたぶん売れると思う。


「果汁の方を屋台で売るつもりです? よろしいですか?」

「君のアイディアも相当入っているからもちろんいいよ」


確かに俺のアイディアはあるが、うまく固まるところまでしかも不純物がないように精製したのはレオーニ氏だ。


「それならお言葉に甘えまして」


そんなわけで果汁のゼリーが出せるようになった。




 レオーニ氏は大満足のようだが、マンロー氏からはこぼされた。

「新メニュー開発はいいんですが、通常業務が回らなくて」


やっぱりそうなのか。


「でもこれ売りだしたら大評判ですよ」

「そうなったらまた回らなくなります」


管理者は管理者で儲かったとしても悩みの種はありそうだ。


ただやはり人手不足が一番の原因の気がする。


日本と違い人が流入しているこの都市なら金さえ払えばいくらでも採れるはずだ。


「儲かってないわけじゃないんだから、少し人を雇って余裕を持たせた方がいいんじゃないですか?」

「まったくもってその通りですね。だけど料理人はどうも無理して何とかする方が好きな人が多くて」


トラブルで人が足りなくなることだってあるだろうし、儲かっているのだから早めに手を売って欲しい。ただ俺が言うことじゃない。


「それはそうと、今回もレオーニ亭監修は掲げておきますよ」

「ああ、そうだった。ありがたいのだけれど、またそうすると人がたくさん来るな」


なんとも気苦労が絶えないようだ。とはいえ、客がたくさん来てお金に困らないというのはいいことだと思う。


うちはうちで果汁ゼリー発売に向けていろいろ準備をすることになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ