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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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煮凝りとゼリー

 冷蔵庫を「発明」したお披露目会でレオーニ氏が2回目にも来ていた。


そこで話してみるとさっそく冷蔵庫を使った料理を考えたという。10日しかたっていないというのに大したものだ。それを教えてもらうことになった。



 指定された時間にレストランに来るように言われる。営業時間外だ。要するに新メニュー開発の時間なのだろう。


一緒に来ていいと言われたのでリアナとセストとミルトンとエミリとともに向かう。


レストランに行くと、調理スペースの方に案内され、見慣れた冷蔵庫がある。レオーニ氏はそこから皿を取り出す。


「さあ、試してみてくれ」


出されたものは煮凝りだった。たしかに冷たい料理というとデザート以外では煮凝りが思い浮かぶ。


季節によっては自然にできるのだろうと思う。煮凝りという言葉がこちらにないので何と呼べばいいのかわからない。


「よくここで食べたな」

「私も食べました」

「肉の風味がありますね」

「変わった触感ですね」


連れてきた4人は喜んで食べている。リアナとセストはここで修行したから、その調理中に食べたのだろう。


「これは骨付き肉を煮た後に冷たくしておくとできるものなんだ。ただ涼しい季節しかできなくてね。しかもあまり量ができない」




 美味しいのだが、あまりきれいに盛り付けられてはいない。


たぶんこちらの世界にはまだゼラチンはなくて、自然に材料から取っているからだろう。


前世だと小さなカップに入れていたり、四角く固めてさらに中に色とりどりの具を入れていた。


ところで俺の考えていたメニューはゼラチンを使って果汁などを固めたゼリーだ。


「君はあまり驚いていないね」


そう言われるとそうだ。


「いえ、おいしいです」



 確かに前世でもっと洗練されたものを見ているからそれほど驚いてはいないと思う。


ただこれはこれで久しぶりの味だし、骨回りを煮出したらおいしいに決まっている。


前世などということは話すとややこしいことになりそうだ。


ただもしかするとレオーニ氏が一番それを信じてくれそうな気もする。




 肉の加工の職人のミルトンが口を出す。

「このプルプルは骨や皮を煮出すとできますね」


「皮でもできるのか?」

レオーニ氏は少し驚いている。皮はあまりレストランには卸ろさないのだろうか。



「この水分を固める成分だけ取り出して、果汁を固めることはできませんか?」

「さあ、それはやったことがないな」

「何らかの形でその成分とスープの味を分けないと、スープ味の果汁になってしまいそうですけれど」

「君は本当に信じられないことを考えるね。僕より先を行っているじゃないか。それやってみたいよ」

「ええ、何か美味しいものができそうです」


俺の方は答えを知っている。ゼラチンを使ったゼリーだ。



するとレオーニ氏は少し考えてとんでもないことを言ってきた。

「リアナとセストをしばらく貸してくれないかい?」


またこの人は無茶ぶりを言う。例の薄切り肉で人が足りなくなって、ようやく落ち着いてきたところなのだ。まだ完全に元には戻っていない。


エミリの方を見るとやはり勘弁してくれという顔をしている。


「さすがにうちはいま人が足りないので勘弁してください」

「そうは言うけど、君だって、その果汁の固めたのを食べてみたいだろ」

「確かに食べてみたいですが、薄切り肉も軽食もお客さんは食べたいわけです」

「うん、わかった。2人ともが駄目なら、リアナかセストかどちらかでもいい。よこしてくれ」


エミリの方を見るがやはり渋い顔をしている。断るしかないだろう。

「こちらも料理人が足りず、いっぱいいっぱいで回しているので無理です」

「あ、それならいいことを考えた」


絶対にいいことじゃないに決まっている。それでも聞いてみるしかない。

「何ですか?」

「ちょっととはいえ君も修行したじゃないか。君でもいい」


もっとダメだ。経営だってあるし、クラープ町の方だってきな臭い。そんなことしていられるはずはない。ただ俺くらいの素人でもいいというなら都合はつく。


「私くらいの素人でいいなら、セストのときと同じようにうちの費用で人をつけます。また修行が終わったらうちがもらいますが」


金で解決がつくならその方がいい。しかも人が足りないのは今後も続きそうだ。人を育ててくれるなら、その方がいい。


「また徒弟か。まあそれもいいか。リアナやセストの方がいいんだけど」

「面倒見る余裕があるなら2人つけてもいいですよ」


とにかく金には余裕があって、気にしなくていいのは楽だ。


「いや、きちんと育てたいし、1回に1人の方がいい」


思い付きで無茶苦茶するように見えて、料理のことだけは真面目なんだよな。


ともかく条件としては前回と同じにする。


話しをまとめて、マンロー氏に持って行ったら、また無茶ぶりに呆れていた。


レオーニ氏のいないところでこっそり話す。


「そちらが経費を持つので本当にいいんですか?」

「まあ、うちは人が足りないから、育ててくれるならありがたいですよ」

「それなら結構ですが……」

「ただまたブラックにならないように気を付けてくださいね」

「ええ、また八百長ですね」


レオーニ氏は放っておくとブラックになりがちだ。


そこでうちの商会で仕事があることにして、夜遅くまでレストランにいさせないのだ。


実際は仕事などほとんどさせないのだが、そう言うとレオーニ氏も手出しができない。


そんな調子で新たに徒弟を雇い、レオーニ亭に送り込んだ。レオーニ氏はゼリーづくりにかなり複雑な試行錯誤をしているようだ。




 家に帰るとクロがすり寄ってくる。そしてしっぽを振って、俺の脚に当てる。これが何を表しているかわからない。


ともかく座ってクロの首をかいてやる。クロは気持ちよさそうな顔でくつろいでいる。


ところが同じことを続けているのにとつぜん噛みついてくる。しかもこちらを明らかに怒っているという顔で睨む。


そこまでわかりやすい怒り顔があるのかと思うほどだ。


何が悪かったのかわからないが、神の方もお前さんはそんなこともわからんのかという顔で見てくる。


クロのすることの理由はわからないがあきらめる。あきめるというのは、それこそが世のことわりだと明らかにしたことだ。


だが何であれからそんな顔で見られないといけないのだろう。


「なんでそんな目で見るんだ?」

「そんなこともわからんのか?」


「クロににらまれるのは受け入れるべきことだが、あんたのはそうじゃない」

そう言うと、神は納得したのかしないのか、葛藤していた。


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