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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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司教と領主のよくわからない問い合わせ

 冷蔵庫を発明して、有力者に見せることになった。司教にはすでに提供し、いまは領主に見せに行っている。


3日保存した肉を焼いて毒見役が問題ないことを確認した。毒見の言を受けて給仕が領主に提供する。領主は肉を口に含む。



 領主とおつきの人を交えて話す。


「これは本当に3日たったものか?」

「はい、間違いなく3日たっております」

「3日たったものとは信じられませんな」

「そうおっしゃる方が多いです。冷蔵庫はもちろん献上しますから、ぜひお試しください」

「なるほどそうさせてもらおう。ところでこれはいつまでも保存できるのか?」

「いえ、さすがにいつまでもは無理です。ある程度伸ばすだけです。長く保存したければ凍らせてしまう方が長持ちします」

「そうか。それでその方は商売にするつもりだろうが、どのようにするのだ?」

「特許を申請しているので、特許使用料を受け取り、製品自体は製造しません。私のいまの商売だと木工はあまり得意ではありません」

「なるほどな。木工に新たに参入するのは大変だろうな。ただそれではあまり儲からないだろう?」


儲からないことがわかる上に、こちらの儲けをなぜか気にしてくれている。ただ別の考えもあるのだ。そのうちの1つを話す。他のものはまだあいまいで話しにくい。


「おそらくこれは流通に大きな変化をもたらします。遠い産地のものですぐに悪くなるものが運べるようになります。

いまも産地で氷魔法を使って持ってくることもありますが、経費が掛かりすぎて細々としかしておりません。

これを使い途中の街に氷魔法使いがいれば遠く離れた場所の間で、多くの産物がやり取りされるでしょう。そこに商機があります」


「なるほど、傑出した商人と言うのは思いもよらぬことを考えているのだな。新たな産物を楽しみにしているぞ」

「ご期待に沿えるよう邁進いたします」

「うむ。期待しておるぞ」

「はい。それはそうと、もう一つ趣向がございます」

「なんだ?」

「先ほど申しましたように、この箱は保存するだけでなく、これに入れると飲食した感じがよくなるものもあります」

「そうか。それを用意しているのか?」

「はい、ご用意がございます。こちらです」



 そういってまたオレンジジュースやレモン水などを差し出す。こちらも毒見役がチェックする。


毒見役は未知の感覚に驚いている。もちろん冬になれば冷たい水などもあるが、まだ暑いときに冷たいものはない。


しかもオレンジの季節は春から夏で、冷たくして飲むことはない。そして確認が終わり領主に差し出される。



 領主がガラスのカップを手に取り口にして、目を見開く。


「なんでいままで冷やして飲もうと思わなかったのだろうな?」

「さて、それは盲点だったのかもしれません。氷魔法を食品に使おうという発想自体がありませんでした」


そう、むしろ冷蔵庫よりは氷魔法を食品に使おうという発想自体の方が画期的なのだ。冷蔵庫自体は密閉性が高く保温が可能な木箱に過ぎない。


だがそれは氷魔法と合わさって新たな機能を提供する。


「このほかにもあるのか?」

「果物をお持ちしております」


また料理人が切り分けて提供する。


「まだまだ未知の可能性があるのだろうな」

「はい、デザート類など冷やした方がおいしいと思われるものは考えられます」


領主の屋敷となると多くの料理人がいるから、そこから冷蔵庫を使った新たな料理が作られる可能性は高い。


領主はおそらく有力者たちに見せびらかすだろうし、そうすれば有力者たちも同じものを求めるだろう。冷蔵庫が普及しそうだ。


「うむ。今日は面白いものを見せてもらった。また新しいものがあったらいつでも持ってこい。直接領府の方に伝えてくれればよい」

「光栄に存じます」






 何とか面倒な献上を終えられた。しばらくして近くの教会の司祭と話す機会があった。


「あの、冷蔵庫は領主様にも献上されたのですか?」

「はい。そうするようお勧めくださった方もいましたので、献上いたしました」

「はあ、そうですか」


何か要領を得ない会話だ。なんでそんなことをいちいち聞かれるのだろうか。


ただ後から考えるとこういうことではないかと思う。司教と領主はよく見せびらかし合いをしている。司教が冷蔵庫を入手して、さっそく領主に見せびらかしに行った。


ところが領主はとっくに知っていてさして驚かない。さてはフェリスめ、領主にも渡してしまったのかと、少し面白くない。


難詰したいがまさか呼びつけて問い詰めるのもみっともない。それで俺と話す機会のありそうな司祭に確かめさせたのではないか?


実は誰かに勧められたわけでもなく、バランスを考えて領主にも提供したのだが、使いの司祭ではそこまで踏み込んでは聞いて来れないだろう。




 後になってギルドマスターから司教にも提供したのかと聞かれる。またよくわからない問い合わせだ。


「もともと教会育ちのため、ずっと親しくさせていただいており、献上いたしました」


あたり差しさわりないように答えておく。別に親しいわけではないが、会う回数は少なくないだろう。



 こちらの問い合わせは領主筋からか。領主が司教に自慢しようと手ぐすね引いていろいろ考えていたのに、先になぜか司教から自慢されてしまった。


それは知っていたので特に驚かずにすんだが、せっかくの計画が水の泡になった。それでこちらに問い合わせてきている気がする。



 たぶんどちらも自慢できなった。こちらに火の粉が来なければいいが、どちらかだけ知ってどちらかが知らなければさらに面倒だっただろう。


やはり偉い人たちとは付き合いたくない。


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