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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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特許申請と献上の通知

 冷蔵庫を「発明」したので、いろいろとしなくてはならないことがある。特許を取り、有力者たちに献上したりお披露目する必要がある。



 まずは特許を取ることにする。アーデルベルトに聞くと代言人と相談するのがいいという。


日本だと弁護士でもできないわけではないが、弁理士の方が得意とするところだ。まだそこまで分化していないのかもしれない。


お世話になっているカルター氏を訪ねる。


「お久しぶりです」

「ご無沙汰しております。本日はどのような御用でしょうか」

「実はある発明をしまして。特許を取りたいと思っております」

「なるほど、特許は代言人の仕事ですが、私はそれほど得意ではありませんで。得意な知り合いを紹介しますからそちらにおいで願えませんか」


やはり分化しつつあるようだ。苦手ならはっきりそういてくれた方がこちらとしても安心できる。



 カルターの知り合いの代言人のところに相談に行った。


「特許についてはクルーズン領府で扱っています」

「なるほど。そうするとクルーズン伯爵領のみと言うことでしょうか」

「はい。そうなります」


それは前世でも海外の国は別に特許を申請する必要があった。ただこちらだと領によってまだ特許制度がないこともあるそうだ。


「それから特許ですが申請するのに審査料がかかります。また審査があり特筆性がなければ却下され、それでも審査料は戻ってきません」


それはまあそうだろう。思い付きレベルでやたらに申請されても困るはずだ。


「それから審査にパスしてもまた登録料がかかります。もちろん登録したものを他者が使用すれば特許使用料が手に入りますが、使用されないと登録料の払い損になります」


それもわからないではない。制度の維持や運用にも金がかかる。だが冷蔵庫には自信がある。広く使われるだろう。


「保護期間は10年です。10年間は登録された発明を使用する者に発明者が求める使用料を支払う義務が生まれます。それによって発明者を保護するのです。以上が制度の概要ですが、申請されますか?」


もちろんするに決まっている。そこで実際の発明品を見せる。反応はいい。


「おお、これでしたら期待できます」


そう言ってもらえれば安心だ。そこで代言人の費用と審査料を払い、審査を待つことにする。




 その間に有力者たちに献上やお披露目をする必要がある。別に特許審査を有利にするわけではなく、今後の商売のためだ。


それにまたあの阿呆の子爵がつまらないことを考えているので、こちらでも保護してもらう必要がある。




 さて有力者と言うとなんといっても教会のクルーズン司教と領主であるクルーズン伯爵だ。


両者は表面上は仲良くしてはいるが、それなりにさや当てもあるようだ。


それはそれぞれ背負うものがあって利益を代表しているから仕方がないのだろう。ただ表立って争うようなことはしていない。


それでも2人の会見の場に同席した人の話を聞くと、一方が何か入手すると他方に見せびらかすようなこともしているらしいのだ。




 そこでどちらを先にするかだが、司教には直接接触できる。それにはいくらか布施が必要だが、今回は冷蔵庫を持って行けばいいだけの話だ。


だが領主となると誰か別の有力者に口をきいてもらわないといけない。商業ギルドのマスターあたりから取り次いでもらうのがいいのだろう。


そうは言ってもあまり遅くなるのもうまくなさそうだ。司教が領主に見せびらかして、領主が知らないなどと言うことになると、こちらに火の粉が飛んできかねない。


ただタイミング次第で逆になったりしても困る。もう面倒だからもったいぶらずに食品を冷やす箱の発明をしたから献上したいと両者に知らせてしまおう。


結果的にどちらかが先に入手したとしても、存在自体を知っていて入手できる状態にあったなら、こちらを恨むこともあるまい。




 幹部たちに話す。


「それでこの前見せた冷蔵庫だけど、司教と領主に献上して、主だった人たちにもお披露目しようと思う」

「まあそれがいいんじゃないか?」

「そうですね。それが妥当だと」


「それで、司教と領主には同時に通知する。しかももったいぶらずに、食品を冷やして保存したりおいしくする箱としてあらかじめ知らせておく」

「詳しいことを知らせずにいきなり見せた方が、驚いて印象が深いんじゃない?」

「それはそうなんだけど、どちらかが先に入手したときに面倒なことになりそうだ」

「ああ、なるほど」

「どういうことだ?」


「司教と領主は見せびらかし合いをしているといううわさを聞いた。そこで例えば司教が先に入手したとする。

たぶん司教は領主に見せびらかす。『最近街で発明された冷蔵庫と言うのもでしてな』などと自慢する。そのとき領主が全く知らなかったらどうなる?」


「ああ、面倒だな」

「こちらにとばっちりが来るかもしれないね」

「そうだろ。逆でも面倒だろ」

「領主が知っていて、司教が知らなかった場合か」



「俺なんか司教と面識があるから、なんで知らせないかと、あの例の遠回しの言い方でねちねち締めあげられそうだ」

「『ときに、知識は神の御心にかなうもの。同じ教えを信ずる同胞と共にしなくてはなりません』なんてな」

「あっ、ははは」

「笑い事じゃない」

「まあ、そうしたら同時に知らせたらいいんじゃない?」

「でも知らせても本人たちに届くかな?」


「それは少し時間がかかると思う。特に領主の方は商業ギルド経由でしか接触できない」

「じゃあどうするんだ?」


「知らせてから、実際にものを届けるまでに少し時間を置く。1週間か2週間か。それでその間に伝わらなかったら、さすがに向こうの伝達のせいだ。

その時は何か言われても、『○○様にはいち早くお知らせしないといけないと思い、ずいぶん前にお知らせしました』と言い訳するよ」


「いろいろ大変ですね」


まったく。ただ面倒そうではあるが、両者とも子爵のような馬鹿ではない。こちらがお互いの顔をつぶさないように気を付ければいいだけのことだ。


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