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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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冷蔵庫を作る

 味付け肉の売り出しの関するもろもろの騒動はだんだん収束していった。相変わらず売れ行きはよく、しかも競合を突き放している。


競合品は明らかにうちより味が落ちる。安さでそちらを選ぶ人もいるが、おいしいものを求めてうちのものを選ぶ人が多い。


肉加工に人を回して休みがちだった軽食の方も、だんだん新入りの徒弟が育ちつつあり、元の体制を回復しつつある。




 それはともかく、肉を扱うときに氷魔法を使うことがあった。薄切りにすると保存がしにくくなる。漬け込みで少しは保存性が高まるがたかが知れている。


一定時間以上保存しようとすればやはり魔法で冷やすに限る。そこでそのものずばりの氷魔法を使う。




 ただこちらの世界でもエネルギー保存則があるらしく氷魔法と言うのはえらくエネルギーを使う。


だいたい前世でも温めたり冷やしたりするときの消費電力量は大きかった。それに比べるとPCだのLED照明などは小さい。


そこで外部から魔力を供給するのに魔石や魔法油を使う必要がある。前世では石炭や石油のようなものだろうか。


そう考えると、そのうち電気のように電線を使って供給されるようになるかもしれないし、魔力を生み出すのに水力や太陽光を利用するようになるのかもしれない。




 ともかくそんなわけで氷魔法があるからといって、何も気にせず冷やしたいたびに魔法をかければいいというわけではなくなる。


魔法使いの労力はもちろん、そのたびに魔石か魔法油が消費されていちいち経費が掛かる。使いたい放題でも何でもないのだ。


それはエネルギー保存則が成り立っていなければ無から有を作ったり、いろいろなSF的な世界の改変ができてしまうので仕方がない。


ともかく魔法を使うにもケチケチが求められるのだ。




 ちょうどよく家に神がいるので聞いてみた。家に神が来るというのもすごいが、もちろんクロをなでに来ているだけで何の役にも立ちやしない。


「いや感心した。ちゃんとこちらの世界でもエネルギー保存則みたいなものが成り立っているんだな」

「何のことじゃ?」

「魔法を使うにしても大きな熱を発生させたりするとなると体内の魔力では足りなくて魔石や魔法油を使うだろ」

「ああ、そうみたいじゃな」

「何か他人事みたいな言い方だな。つまり無から有が発生しないということだ」

「そうすると何がいいんじゃ?」

「それができたら何度も繰り返して膨大なエネルギーを発生させて世界を変えてしまったりできるだろ?」

「まあそうじゃな」

「って、お前が設計したんじゃないのか?」

「いやなあ、この世界も地球のある世界も小世界であって、大世界のフォーマットがあるからそれを使っただけじゃな」


何だ、神と言うからよほど知恵があるのかと思っていたら、出来合いのキットで世界を作っているのか。これなら俺でもできそうだ。


「いま失礼なこと考えたじゃろ?」

「まあな。俺でもできそうだと」

「まあ、そんなことはこのクロ様の偉大な造形から見たらどちらでもいいことじゃな」



 相変わらずクロのおしりを触りながら、相好を崩して言ってのける。この神と話していても仕方ないことが分かった。


ともかく冷気を無駄にできない。と言うことは冷蔵庫を作ればいいのだ。


冷蔵庫と言っても別に冷やす機能が必要なわけではない。氷は魔法で作れるので、単に氷を中に入れてその冷気を外に漏らさない断熱の箱があればいい。


19世紀頃の冷蔵庫と同じだ。そういうものがこの社会に見当たらないのは、氷魔法を食べ物の保存に使おうとしないからだろう。


いやもしかしたら貴族あたりではしているかもしれないが、広く出回ってはいない。




 職人に頼んで木工加工してもらう。基本的には密閉性の高い木箱に過ぎない。箱の上に氷を置いてそれが解けるときに周りに空気を冷やす。


前世の冷蔵庫のようなエネルギーを供給して冷蔵する仕組みは、何か冷媒を圧縮したり膨張させたりして周りから気化熱を奪う仕組みが必要だ。


それはいまの工作精度ではできそうにない。冷媒が何かもよく知らず、俺自身の知識がない。


だから氷を使う冷蔵庫がせいぜいだ。そこで解けた水は受け皿にたまり、排水する必要がある。




 作ってもらった冷蔵庫を家に持って帰って使ってみることにする。氷魔法はいちおう習得しているのだ。


ただ技量があまりないので氷を作るのが大変だ。商会で頼んだ魔法使いはミカン箱ほどの氷でも1分もかからないうちに作れるが、俺は30分くらいかかる。


無駄があるのか魔石の消費も多い。


「またフェリスが何か変なことしている」

「味付け肉の面倒がまだ片付いていないのに大変だね」

「これなんなの?」

「ここに氷を入れると下の部分の空気が冷えるんだ」

「冷えると何かいいことあるの?」

「肉などの食べ物が保存できるし、冷やした方がおいしいものもあるよ」

「フェリスのその食に対する情熱はどこから来るんだろうな?」


シンディとマルコが他人事のように言う。これが上手く行けば、2人もおいしいものを食べられるというのに。


と言うより俺自身が冷蔵庫のあった時代を覚えているので、いまの食事には不満なのだ。それで家に持ち込んだが氷を作るのが大変で商会で実験した方がよかったかもしれない。




 試してみるといちおう上手く行く。


「ほらこんな感じだ」

「確かに食べ物が冷えているけど」

「この肉は3日目だ」

「え? それじゃ悪くなっているんじゃない?」

「よく見て。悪くなってないでしょ」

「本当だ」

「実際焼いて食べてみよう」


食べてみると、やはり新鮮な物より味は落ちるが、悪くはなっていなかった。


「すごいね」

「これいいわね」


初めは他人事みたいだったが、わりと好評だ。ただいろいろ面倒だ。氷を作るのも、冷蔵庫に氷を入れるのも一苦労だし、排水もしないといけない。


ご家庭で使える代物ではない。だいたい俺は趣味で曲がりなりにも氷魔法を使えるが、実際に使える人は少ない。もし冷蔵庫が売れたら氷を売り歩く必要がありそうだ。


「この後はどうするの?」

「とりあえず商会に持って行って相談しよう」


そんなわけで商会の幹部と相談することにした。


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― 新着の感想 ―
[一言] 毎日更新楽しみにしてます。 冷蔵庫の開発が成功したらレオーニ氏がまたにやけるのかなと想像してしまいました。
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