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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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改良品の新発売と値上げ

 味付けの薄切り肉を売り出すと、レオーニ氏が改良版を持ってきた。うちのより味が上で、うちのメンバーは少しショックだったようだ。


売るときに監修者として彼の名前を出すということで仕込みの方法を使わせてもらうことになった。




 ところで味付け肉はけっこうな人気になっていたのでいずれ競合品が出ると思っていた。それでうちが把握していなかっただけで、とっくに出ていたらしい。


買ってみると、うちのもともとの味付けよりもさらに物足りないものだった。うちのものもリアナが工夫していたので、そう簡単には敵わないものだったようだ。


そこにレオーニ氏監修の新たなバージョンを売り出す。これで圧倒的に突き放すことができると思う。


「人気の味付け肉ですが、有名店レオーニ亭の監修を受けてさらにおいしくなりました。ぜひお試しください」


こんな感じで売り出す。ただ一つ問題がある。そもそも人が足りないのだ。それなのにまた売れるような状況と言うのもなかなかつらいものがある。


とは言え、元より明らかに良い味ができるのに元の味のまま売るというわけにもいかない。




 軽食の人員を肉の方に回してやりくりして、軽食の提供が減ってしまったところを、だんだん回復していた。それが元に戻ってしまった。


うれしい悲鳴だが、ずっと放置しておくわけにもいかない。そうは言ってもすぐに効くような有効な対策はない。地道に人を増やすしかないのだ。




 軍師様よろしく何か対策を考える者が前世の会社にいたが、たいてい役に立たない。やってすぐに効いてくるような方策ばかりではないのだ。


特に人の技能や判断力を育てるには時間がかかる。もちろん単純な仕事であれば数週間でできるようになるが、それを管理するような立場となると年単位での養成になる。


どうも軍師様たちはあることをすればすぐに効くと勘違いしている節がある。




 効いてくるまでに時間がかかるとなると、結果として使われずに無駄になることもありうる。ただそれは保険のようなもので仕方がない。


だから一見役に立っていないからと言ってすぐに切ってもいけないし、当面使わないからと言って養成を遅らせるのもまずいことがある。


その手のことをすると、実際に必要になったときに困ることになる。ある意味でいまうちは味付け肉を売り出す前に人を育てておけばよかった状況だ。


困難な状況をバサバサと仕切って解決していく者より、そもそも困難な状況を起こさせない者の方が有能なのだが、たいていそれは見えにくい。




 いろいろうだうだ考えてしまった。とにかく何をしたかと言うとまず値上げした。


「新しい味付け肉だけど、3割くらい値上げしよう」

「え? そんなに高くするのか? 実際そこまで材料も手間も増えないぞ」

レオーニ氏の方法で少し材料や手間は増えたが実際はそれほどでもない。


「いくらなんでも取り過ぎのような」

「長く使ってもらうには納得できる価格で出した方がいいのではないですか?」


いろいろ意見が出るが、やはり上げた方がいいと思う。理由はいくつかある。




 まず物の値段と言うのはいくらで売れるかで決まるもので原価積み上げで決まるのではないということ。


原価が売値を超えたら売ることができないわけだが、それは商品として店頭に出ないだけのことだ。


もちろん商売の信用があるから被災地で被災直後に突然値段を倍にするようなやり方はよくないが、売れるからと言うのは一つの原則だ。


「3割値上げで売れると思う?」

「まあこの味なら売れるような気がするな」

「ええ、それくらいなら売れるでしょうね」

「物は売れる値段が売値だろうから、その点では大丈夫だ」


そう言っても彼らは納得していない。




 さらにそれを補強するものとしてこれがしょせん嗜好品だということもある。


生活に欠かせないものであまり大きい利益取るのはいかがかと思うが、おまけの世界だ。物を良くして高くするのは自然だろう。


「それにさ、これって嗜好品だよね。なくてもいいものだよね」

「まあな。塩漬け肉はあるわけだし」

「そうですね。買わなくてもいいものかもしれません」

「だったらよいもの出したから高くするのもそんなに悪くないよ」




 別の理由としては実際に見えにくい費用が掛かるのもある。残業させているので増えた時間分はもちろんそれ以上に出している。


それに新たに人を育てるのにかなり無理な研修体制にしている。かかる金を把握するのは重要だが、見えにくい形で他に付けを回していることもある。


そちらまで全部計算に入れないと把握したことにはならないのだ。


「あとさ、実はお金はかかっているんだよ」

「増えた分の手間と材料は大したことありませんよ」

「そうじゃなくてさ、残業させているだろ。その分は時間が増えた分だけじゃなくて割増しで出しているからね」

「ああ、そうでしたね」

「売れ行きが良すぎるからその分も負担してもらわないと困る」

「なるほど」


「それにかなり多くの新人の徒弟を入れて研修しているでしょ。彼らが仕事できるようになったときに、それほど売れないこともありうる。それでも簡単に首にはできないから、その分ももらっておかないといけない」

「それはいま買っている人が負担するものでしょうか」


「負担するものじゃないかな。だって無理して増やしているんだもの。うちが被るのもおかしい。

だいたいうちが被ると言っても結局は後でうちから他の物を買う人が被ることになる。

それなら大人気だから欲しい欲しいと言って需給をゆがめている人にもらうのも悪くないと思う」

「確かにそうなりそうですね」




 それにもう一つはあまり売れて欲しくないというのもある。人が足りずに生産がつらい。だったら高くすれば売れ行きは下がる。


「それに元に近い値段で売ったら、商品の不足がひどくなると思うよ」

「それはそうかもな」

「でも高くて売れなかったらどうしますか」

「それならまた値段をさげればいい」

「そんないい加減な値段のつけ方で信用をなくしませんか?」

「生産体制が整ったとか言い訳はいくらでもつくよ」

「何かやり方は好きじゃないけど、あの品不足への対応はしたくないからな」

「とりあえず値上げでやってみましょうか」


そんな感じで値上げをすることになった。実際に値上げして売り出したところ、もちろん客からの不満はあった。


とはいえまさか商会の中で話したことを説明するわけにはいかない。


「リニューアルしてさらにおいしくしたことで、材料も手間も今までよりかかっています」

嘘ではないが一部だけの理由を説明する。後は客が味と値段に納得するかだ。




 実際ふたを開けてみると、今まで以上の売り上げだ。やはりレオーニ氏の監修のものにしてよかったようだ。


とは言えやはり物が不足気味だ。これでは元の値段だったらどれだけ面倒なことになっていたかと思う。


「売れたね」

「本当にこの値段なのに」

「元の値段だったら売れ行きが恐ろしいことになっていましたね」

「一気に大人気にならないで少しずつ増えてくれると楽なんだけどね」

「本当に」

「とにかくうちの名物が増えましたね」


 それはよかったと思う。レオーニ氏にも感謝だ。今度は彼にも先に一言言ってもいいのかもしれない。


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