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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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製造工程を分けて、さらに手順を隠す細工をする

 味付け薄切り肉を売り出して大人気になってしまった。


作るのに人が足りない。いまは軽食の方の人手を動員しているが、今度は軽食の方が足りなくなる。


あちらはあちらで熱狂的なファンもいるから、ずっと休んでいるわけにはいかないのだ。




 事態を招いたリアナは他人事っぽい。とはいえゴーサインを出したのは店主である俺だ。おれがどうにかしないといけない。


飲食について管理能力があるのはクラープ町にいるエミリだ。ギフトを使って彼女を連れてくる。




 エミリの考えた解決策は作業を分けての分業だ。実は俺も考えていたのだが、どうも仕事の疎外イメージが強く躊躇していたのだ。


だがやはりそれしかアイディアは浮かばない。ただそれをするにしてもいろいろ解決すべき問題はあるのだ。


疎外を緩和するためには1人がある程度の期間で分業にした別の工程も担当して全体を見ることだ。


ただそうすると今度は秘密が漏れてしまう恐れがある。


全体を見る前に、うちの商会への忠誠心を高めないといけない。その辺は待遇がいいので、それほど問題でもない。




 もう一つの問題は工程を分けて、分けたものについて素人でもできるかだ。なおそれについてはリアナの担当だ。


肉の方も軽食の方も工程を分けることにする。リアナがとりあえず考えて、後で修正していけばいい。


効率も考えないといけないが、とりあえずは問題ない品質の調理ができるかどうかを目指すことになる。




 リアナが作業しつつ、記録をする。そしてリアナがいくつかに分割する。結構細かい。


と言うのは細かく分けていると来たばかりの素人でもできるからだ。


ただ細かくし過ぎると単純作業になって仕事の疎外感が強くなる恐れがある。


とりあえず工程が分割できた、後は実際に試してみて上手く行かないところを修正していくしかないだろう。



「いいことを考えたわ」

「なに?」


リアナは調理の方はかなり有能だと思うが、管理の方はどうしようもない。だが、今回は調理に関係しているとはいえむしろ管理の問題だ。


だからリアナが考えたいいことが不安になる。


「調味料とか入れるでしょ。1回で入れてしまうと量がばれてしまうから2回に分けるのもいいかもね」

「なるほどね。ただ入れるタイミングで味が変わらない?」

「変わるものもあるけれど、変わらないものもあるわ」

「じゃあそうしてみるか」




「それで思いついたのですが、秘密保持についてはいいアイディアがあります」

エミリが口を出した。


「どうするの?」

「例えば1か月ごとに担当個所を買えるとして、1か月目と2か月目では作り方を変えるんです」

「変えても味は大丈夫?」

「味が変わらない範囲で変えることはあり得ますよ」

「まああることはあるな」

「なるほど」

「ところで作り方を変えるとなんで秘密保持になるんだ?」

「それはですね。例えばある人が6月に第1工程をして、7月に第2工程をしたとします。すると2つの工程を覚えてしまいます。

ですが7月の第2工程と6月の第2工程は異なります。だからその人が覚えた6月の第1工程と7月の第2工程をつなげてしても正解のものができない仕組みです」

「怖いこと考えるな」


リアナが妙に感心しているが、確かに「越後屋、措置もなかなかの悪よのう」と言いたくなるようなアイディアだ。ただちょっと気になることもある


「全体を作っている感覚については大丈夫?」

「変えると言っても微妙なところだけです。だから同じ味は再現できなくなるけれど、全体を作っている感覚は持てるでしょう」

「じゃあそうしてみよう」



そんなわけで分業の仕方がある程度見えて来て、10人近くを新たに雇うことにした。麺の方は3日くらいで復活させたい。他の軽食もあまり長い間休みにしたくはない。


ただそこまですぐには集められないので、とりあえずは既存のメンバーの残業で対応する。だけどそれをいつまでも続けたくはない。




 分業についてやってみると初めはもたついていたが、だんだん慣れてくるとスムーズにいくようになった。やりにくいところは少し手順を変えたり、もっと分割したりする。


初めのころの味見ではみんなダメ出しをしていたが、2日たつとこれでよさそうと言うことになった。

そして新入の徒弟が少しずつ入ってきて、そちらに仕事を割り振って行った。


若干不安はあるが、とりあえず薄切り肉も軽食もまともに提供できるようになった。



 家に帰るとまた神がクロをあやしている。そしてこちらを見ると、

「お主、何か悪だくみでもしているのか?」

などと話しかけてくる。


悪だくみと言うのは工程を時期によって変えることだろうか? 単なる猫オタに過ぎないと思っていたが、意外に人を見る目があるのだろうか。


それとも神通力か何かで俺とエミリとリアナの会話を除いていたのかもしれない。


とりあえず、秘密がばれないように分業の工程を時期によって変えることを説明する。


「人間は金儲けのことになると、隠し事とかつまらんことをするんだな」


まったくもってその通りだ。ただそれは高額の対価を払わないと他の神には猫をくれない地球の神も似たようなものだと思う。


「人間だけでなく、神だって猫を独り占めしようとしているじゃないか?」

「まったく地球世界の神はどうしようもないな」


何か他人事のように言っている。これもそんなに上等なものとも思えないが。


「あんただって、クロの子ができたら、独占するだろ?」

「まあ、初めはな。だが1人で相手しきれないくらい増えたら、かわいがってくれることが分かれば、渡すぞ」

「金もうけに走らない?」

「猫がたくさんいて生活もできるのにそんなつまらんことする理由がないじゃろ?」


確かにその通りかもしれない。そう言われると、いまの生活は無駄にも思えてくる。得られた資産で後は仕事せずともぜいたくもできる。


だがクロは独占できるわけでもない。四六時中、神が付きまとっている。それに俺はブラックをなくすことが一つの目標なのだ。


それを当分はしていけばいいと思う。






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