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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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急速な需要拡大への対応


 薄切り味付け肉がブームになってしまい、困ったことになっている。あちこちから売ってくれと言われる。


だいたいこういうものはじわじわと人気が出ていくことが望ましい。急に需要が増えると生産体制が取れないのだ。


薄切りをうまくできるのはそれなりに慣れた者だけだ。うちだと肉の職人のミルトンともともと調理の素養があり数か月修業したリアナだけだ。


もっとも簡単に作れないというのは競合が出なくていいということもある。薄切りだけでなく味付けの方もそれほど簡単ではない。




 味付けの方はそれほど難しくないが、誰にさせてもいいというわけでもない。秘密をばらされると困るからだ。


競合の商会に作られたくはない。できるだけ忠誠心の高い正規の勤め人に作ってほしい。と言ってもそう言う人もそれほど多くないのだ。


やはりじわじわと人気が高くなってくれた方がありがたかった。



 いまは軽食を作っていたメンバーにしてもらっている。だけど軽食だってファンがいる。とくに麺などは熱狂的な人もいるのだ。


前世のラーメンのようなものだろうか。そちらは競合でも作れないことはないのだが、やはりうちは元祖だし、かなり工夫しているので他より評価が高い。


これを放置しておくわけにもいかない。リアナと相談する。


「肉の方、どうしよう?」

「そりゃ、これだけ人気なんだから収まるまで続けるしかないでしょう」

「だけどそうすると、軽食の方が作れないよ」

「そうね。でもまあ少し我慢してもらうしかないかしら」



 完全に行き当たりばったりだ。ああ、やはり大々的に売り出すと言われたときに反対しておけばよかった。


ただそうするとうちの商品だと人々の印象が確立する前にやはり競合が似たようなものを出してしまう危険はあったんだよな。あちらが立てばこちらは立たずだ。


「麺の方の熱狂は知っているだろ」

「そうね」

「あれで出さないなんてことができるか?」

「暴動がおこるかもしれないわね」


何か恐ろしいことを言う。さすがにそこまでは……、あるかもしれない。


前世だってわからないが、こちらは力に訴える閾値が低い。そんなことになったまずい。


「どうしよう?」

「人たくさん雇って作れないの?」


「2つ問題がある。1つはそんなに簡単に仕込みや調理ができるのかということ。それからもう1つは忠誠心が低いと秘密が漏れてしまうよ」

「そうね、どっちも問題ね」

「何か方法ある?」

「思い浮かばないわ」



 リアナに管理的な問題を聞いたのがまずかった。とりあえずエミリに来てもらおう。彼女は管理業務が得意だ。


それでクラープ町での管理を任せていた。ただ前々からそのうちに来てもらうと言ってあるからそろそろ大丈夫だと思う。


もちろんギフトを使って連れてくればいい。いまでも俺は毎日、クラープ町には顔を出しているのだ。



 クラープ町の商品工場にギフトで向かう。


「あら、フェリスさん。今日は何の御用?」

最近はシルヴェスタと姓で呼ばれることが多くなったが、セレル村以来の知り合いの彼女は相変わらずフェリスと呼ぶ。


「それがクルーズンの方の調理で問題が起こっているんだ。来てくれないか?」

「今すぐにですか? まあそろそろこちらも大丈夫ですけど」

「それならすぐに来てほしい。引っ越しまで毎日こちらに戻すようにするから」


そういうわけで朝夕にクラープ町の本部まで送り迎えすることになった。


それはともかく、エミリを連れて来て相談する。


「実はこういうわけで、薄切り肉と軽食と両方つくらないといけないんだけど、人が足りないんだ。

慣れるまで簡単には作れないだろうし、雇いたての人に秘密を教えるのも洩れそうでまずいし」


リアナの方は半分他人事みたいにしている。


エミリは少し考えて、案を出してきた。


「工程を分けることはできませんか?」



 やはりそれか。工程を細かく分ければ、1つ1つの作業はそれほどの熟練はいらない。それに作業室も分けてしまえば秘密も漏れない。


しかも分業は効率的だ。ただどうもベルトコンベア作業の人間疎外のイメージがあって乗り気じゃなかったんだよな。


「とりあえず分けられるかどうかは調べるとして、分けると仕事がつまらなくなるよ」


「ええ、そんな気はします。ただいまの問題を解決するのにはよさそうです。それに担当を入れ替えていけば、それなりに物を作っている気になれるのではないでしょうか?」


確かにその通りだ。前世の工場でもそうしていた。ただ前世の工場に比べると秘密は漏れやすい。そうは言っても他にアイディアは出てこない。


「うーん。入れ替えていくと秘密が漏れるんだよな」

「入れ替えるにしてもそれなりに時間がかかりますし、うちはみんな長く勤めて、ずっといたい人が多いから大丈夫なんじゃないですか?」


完全に全員ではないが、確かにうちは長く勤める人が多い。いちおうホワイトを標榜しているからだと思う。


そうでない人もわずかにいるが、どうしてもその人の特性で一カ所にずっといたくない人が多いように思う。


「じゃあ、それで行くか」

「そうしたら、工程を分けられるかですね」


リアナの方はこちらの話が見えていない。ともかくリアナに工程を細かく分けられるかを聞いてみる。


「リアナ、軽食の方で工程を分けられる? それぞれの作業は熟練なしでできて、しかもそれぞれしている人が当面は全体像がわからず秘密が漏れないようにしたいんだけど」


リアナは少し考えてから

「それならできそうね」

と答えた。


「じゃあそれで、新しく人をたくさん雇って、それをやってもらうようにしよう」

「わかったわ。じゃあどんなふうに分割するか考えておく」

「そうしてくれ」


何とか問題への対処ができそうだ。


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