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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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35. 肉を冷やしたい

 ミルトンとリアナに味見してもらいつつ、塩味以外に甘みと酒を加えて漬け込んだ肉を作って、2人からの評判はよかった。ただ保存性の問題がある。



 濃度の問題で塩の濃度が高いほど微生物などは増えにくく傷みにくいのだ。ところがあまり濃度が高いと肉がまずい。


だから塩漬けで保存された肉でも塩を落としてから仕込んでいる。



 この辺は砂糖でも事情は同じだ。ジャムなど砂糖が少ない方が果物の風味が出てよいのだが、少ないとすぐに微生物で変質して長持ちしない。


お菓子なども長持ちさせようと砂糖を多くしているケースはたくさんある。


おそらく前世ではいろいろな食品について砂糖の濃度と日持ちについてかなりの知識の蓄積があったと思う。




 ともかく味を良くするために塩を少なくしているので、そのために足が速くなってしまっている。


そうすると売ったときに肉が駄目になっていたり、食中毒になったりする恐れがある。


テストで2~3時間は大丈夫そうだったが、それも回数を重ねたときや、気温がひどく高くなったときはどうなるかわからない。


食中毒は少なくないため、そう言うたぐいの事件が起こっても前世ほどには責められないのだが、それでもうちが原因で食中毒を出すのは気分がよくない。



「もう少し長持ちさせる方法はないかな?」

「塩を増やせば持つことは持ちますが……」

「だけでまずくなるよね」

「そうなんですよね」

「そうだよな。せっかくうまくしたのに、またまずくなってしまう」

「他に方法はない?」

「もう少し涼しい季節なら日持ちしますね」



 季節ばかりはコントロールしようがない。神ならコントロールできるかもしれないが、あれはクロの福祉につながらない限り絶対に動かない。


もちろん季節限定で売り出すという方法はあるが、それだといつでも売れなくなってしまう。


年を通して買いたい客だっているだろうし、こちらも売る期間が短いと儲けが少ないし、他の店との差別化もできない。



 そこで考えたが、冷蔵庫はないが、氷魔法はある。と言うことは氷は作れるのだ。


「氷魔法は使えないかな?」

「魔法使いをしょっちゅう呼ぶのはけっこう大変だし、呼ぶとずいぶん高くつきませんか?」

「うちは従業員に研修して魔法を使わせるようにしていて、わりと光魔法なんかは使える人が多いから、氷もいけるかもしれない」

「それならできるかもしれません」

「よさそうか?」

「ただ凍らせてしまったら漬からないんですよね」


そうだった。ただそれは何とかできるかもしれない。


「うーんと、2つ方法がある」

「どんな方法です?」

「1つは仕込んだ後に凍らせる。それで店に持って行き、売って客が持ち帰って食べるまでに解ける間があるから、そこで漬かるのを待つ方法だ」

「なるほど、それで漬かるかもしれませんね。あともう1つは」

「もう1つは冷蔵庫だ」

「なんです? その冷蔵庫って」

「少し厚めの木の板で断熱性の高い箱を作って、そこに氷を入れ、そこに仕込んだ肉を入れた容器を入れて、上からまた少し厚めの木でふたをする。

木の箱の中は冷たい空気が充満する」

「え? それはすごい。上手く行ったらものすごいですよ」


そういえばなんでないのかと思う。前世でも昔の冷蔵庫は木箱に氷を入れて使うものだった。氷魔法があれば考えつきそうなものだ。


ただ氷魔法自体がそんなに誰もが使えるものでないからかもしれない。


前世も江戸時代あたりは氷を手に入れることもめったにできなかったから、そんなものを考え付く人もめったにいなかっただろう。


「どちらにします?」

「両方試してみよう」

「なんかすごいですね」


確かにかなり意欲的だと思う。ただ魔法使いを呼ぶのも、しっかりした木箱を作るのもいちいち金がかかるし、時間もかかる。


けっきょくその辺で余裕があるからできるのだろう。金に余裕がないと初めからできないし、することだらけで時間に余裕がないと新しいことをしてみようという気にもなれない。




 まずは木工職人に頼んで、密閉性と断熱性が高くて、氷を入れておけば中の空気が冷たくなり、氷が溶けにくいような箱を作ってもらう。


それができたらそうして氷魔法を使える魔法使いを呼んでくる。


実験は簡単だと思っていたが、実際にしてみるとかなり面倒だった。新しいことをしようとしたらそれは仕方ないと思う。


すぐには結果が見極められない。魔法使いは1日5万かかるところ何日も来てもらい、冷蔵庫もあわせて数十万の出費になってしまう。




 まず肉を直接凍らせる方は、肉を積み重ねていると表面だけ凍ってしまい、中の方は凍っていないようだった。


「あれ? これ中は凍っていないね」

「凍らせるときに表面だけ凍ったんじゃないかな?」

「たぶんそうだね」

「初めから広げないとダメっぽいね」

そんなわけで広げてから凍らせるとわりと均一に凍らせることができた。




 それから解けるまでや解けてから漬かるまでの時間も結構微妙で、凍らせるときに調整しないといけないようだった。


魔法使いの方も何度も氷魔法を使い、かなり閉口していた。





 冷蔵庫の方もいろいろ面倒だった。まずそれほど断熱が上手く行かない。

「なんか氷がすぐに解けてしまいますね」


内側を加工すればたぶんよくて、樹脂のようなもの塗ることになった。




 それから氷が解けたときの水をためておく場所も必要と分かる。解けて木箱の中が水浸しになってしまったためだ




 それに当たり前だが開け閉めを何度もすると中があまり冷たくならないらしい。


それは俺が前世の冷蔵庫を知っているからそうだとわかる。知らなければそれがわかるまでかなりの試行錯誤が必要だったと思う。


だいたい冷たくないというのも温度計がないので、単に手を入れたときの感覚に過ぎないのだ。温度計も「発明」した方がいいんだろうな。



 それからさらに、こちらも肉を積み重ねていると表面だけ冷えて、中は冷えていないようだった。


冷蔵庫の中に棚を作ったり、肉を入れる容器を金属などにして熱を伝えやすいものにした方がいいのかもしれない。



 いろいろ仮説を立てて問題を解決していくので、リアナとミルトンは俺がものすごい発明家に見えるらしい。それはあくまで前世で知っていたものを作っているからだ。


たぶん物理の知識があるからできるのだろう。小学校で習った理科と言うのも実は生活で役に立っていたりする。


確か寺田寅彦だった気がするが、明治時代の学者が庶民が生活の中で無茶苦茶なことをするのをこぼしていたのがあったが、それも教育が普及していなかった結果だろう。


ともかく金と時間をかけて実験を重ねていった。


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