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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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セストの引継ぎ

 うちの店でも肉の加工をしたいとリアナを肉屋に修行に送り出した。ところがリアナの方は引継ぎをしておらず、残されたセストたち残された部下が困ってしまった。


仕方ないのでリアナを呼び戻し、何をすればよいかマニュアルとレシピを作り、それだけでなくわからないことがあったときのために週に1度は顔を出してもらうことで何とか収めることになった。


そんなわけで週に一度はリアナはうちにも来ている。




 そうは言ってもセストたち残された部下にもわからないことはもちろんあるのだが、何とかうまくやっているようだ。


リアナもそんなに細かく縛りたがる性質ではない。いやもう少し細かく指示してほしいのだが、担当の者が好きにすればいいと思っている節がある。


ただ味があまり変わってしまうのは継続的にあちこちに店や行商を出しているある意味チェーンのような店としては困りものだ。




 セストたちがどうしているかときどき覗いている。


「セスト、うまくいっている?」

「ええ、とりあえず問題はないですよ」

「それならいいけど」

「こちらのレシピでだいたい対応できています」

「でも前に季節が変わるとでき方が変わるって言ってなかったっけ?」

「ええ、そうなんですよ。それがいろいろ難しいところで」

「それはどう対応しているの?」

「リアナさんが週1で来てくれているので、その時に聞きます」


まあそれならいいと思う。ただリアナもそれをセストにやってほしいと思っていたのだろう。1年目の子に求めることではないと思うが。


「リアナがしていたみたいに粉の配合を変えてみたりとかそう言うことはできない?」

「リアナさんはどんな風にしていたんですか?」


セストはリアナが麺を改良したときにレオーニ亭にいたはずだが、彼女の試行錯誤を見ていなかったらしい。


それはほとんど初心者の子の修行中にそんなものを見ている余裕がなかったのだろう。


しかもリアナの麺の改良は彼が来る前から始まっていた。




 人に指示されたことをその通りにできることと、自分で主体的に動くことは全く違うことだ。


その意味ではリアナはセストたちに主体的に動いてほしかったんだろう。そこまで言葉にできるほどは考えてはいないかもしれないが、そういう感覚はあったはずだ。


ただ周りが見えていない1年目の子に求めることではないし、しかもこの仕事の責任は重大だからあまり軽々しくそうされても困る。




 主体的に動くようにするには上の者が試行錯誤を見せた方がいい。リアナは外に出ていて無理だから、俺がやってみることにする。


だいたい麺だってはじめは俺しか知らずに最初の試作品を作り上げたのだ。粉の配合をいろいろ変えて味見を繰り返す。


セストと部下たちは神妙にみているが、ときどき不安そうになって手を出してくる。どうも俺が下手で見てられないところもあるようなのだ。


「大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ」

「私たちでしましょうか?」

「そうしてもらえると助かる」


そうは言っても調理で新しいことをするのに試行錯誤が必要なことを伝えないといけない。


何か商会主のすることではないような気もする。


ただ他の運営の方は幹部たちが優秀で他は上手く動いているので、何とかなっている。




 ところでリアナはセストとここで一緒に働くようになってからもいろいろ麺の開発をしているはずだ。それでなんでセストは見ていないのだろう? リアナに聞いてみる。


「セストの前では麺の改良なんかはしなかったの?」

「していたぞ」

「それで何でセストの方は見ていないんだろう?」

「さあ?」


さすがにリアナのいるところでは聞きづらかったので、セストには別の機会に聞いてみる。


「リアナはここで粉の配合なんかいろいろ試していたみたいだけど、どんな感じだった」

「いや、もう調理中は忙しくて、わけがわからなくなっていて」


どうやら聞いてみると、リアナは何か思いついて次から次にいろいろする上に、やたらに忙しくてついて行くだけでやっとのようだった。


それでじっくり見たり考えたりする時間がなかったようなのだ。今回はすこし見直す機会になって気もする。






 家に帰ると俺の部屋が面倒なことになっている。前にクロにちょっとしたおもちゃを作ってやったのだ。


ネズミの形の模型で、人がひもを引っ張るとネズミが動いたように見えるものだ。クロは狩猟心が騒ぎ立てられるのか、追いかけて手を思いきり伸ばして捕まえようとする。


なお日本で売っているネズミのおもちゃは口に入れると猫には危ないものもあるらしく、その点は工夫している。


もっともクロには加護がたくさんついているのでけがや病気は全く大丈夫だが、それはそれ、これはこれだ。



 クロだけだったらまったく困ることはなかったのだが、もう1人神じゃりがいたのだ。


俺がクロ相手におもちゃを使って遊んでいるのがうらやましくて仕方なかったらしい。だいたい地球には猫用のグッズが多数あるが、もともと猫のいないこの世界にはないのだ。


「それをワシにもよこせ」

「いま俺が遊んでいるからそれが終わったら貸してやる」

「いますぐ使う!」


5歳の子でももう少し聞き分けるような気がする。もっとも60や70の老人でも似たような行動をとるような気もするが。


それはそれで、こちらの方が大人なので貸してやったのだが、今度は他に猫用のおもちゃがないのかと聞いてきた。


俺が説明すれば作ってくれるという。人間社会の諸問題を愚痴ってもまったく興味なさそうで実際に何もしないのだが、猫のおもちゃには興味津々ですぐに行動する。


釣竿で動かすものとか、ボール状のものを溝の中で動かすものとか、モグラたたき状のものとか、買ったこともなかったがいろいろ思い出して提案する。


そこで神が作ってくれるのだ。ところがそれが問題だ。さすがに神だけにおもちゃの造形がよすぎるのだ。


いちおう部屋は別だが、同居しているシンディやマルコに見られたら、どう思われるかわからない。彼らには神のことなど話していない。


と言うよりこの世界のだれにも話していないのだ。


「おもちゃを作るのはいいけど、ちゃんと片付けておけ」


まったく子どもに対する注意だ。さらにおもちゃもどんどん増えていくので、俺の部屋に置ききれなくなる。2人に見られたらなんて説明していいのかわからない。


さすがに文句を言うと、小さな箱にいくらでも入るという魔法の箱を作って、そこにしまっていた。こういうところだけは神なのだ。




 もう少し神と言うのは重厚感のあるものだと思っていた。


もっともギリシャ神話の神などあまり成熟してない人間のようでもあるし、日本神話だってそんなものだ。


ただそれに引き比べてもこの神はお子様すぎる気もする。

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