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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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出店攻勢

 クルーズンでは行商だけでなく、実際の店舗も出すことになった。


幹部たちはどんどん店を出したいとほとんど競っていた。



 ただそうは言ってもふつうは何かひっかかりが出てきて止まってしまう。例えば店舗を出すとなれば金が必要である。


もちろん儲かる商売ならしばらくすれば初めの投資部分は取り返せるが、それでも何年かかかるのがふつうだ。


そうすると初めの投資部分が出せない。例えば出店に1千万かかり、毎年200万利益があるとしても、取り返すには5年かかる。


ふつうは資金を借りて利子もあるのでもっと時間がかかる。それに毎年200万のもくろみが予定通りいかないこともあるのだ。


ところが今回は、例のクラープ町で領都組に売った行商の代金の数億があった。


幹部たちは横領したわけでもないし、俺がいいと言ったわけだが、店を開くのに平気で使っていった。


アランが一番派手に出店を進めている気がする。たださすがにショートすると困るので、その点だけは気を付けないといけない。


「商会の資金が一応あるけれど、運転資金も必要だからいっぱいいっぱいまで使っちゃだめだよ」

「え? それはどういうこと?」

「お店をしていくには賃料もかかるし、人を雇っている間は賃金もかかるからね」

「それはちゃんと計算に入れてますよ」


「だけどね。例えば疫病が流行ってほとんど店に客が来なくなっちゃうかもしれない。その時でも耐えられるようにしてね」

「なるほど。そう言うこともありうるのか」

「そう。そうなると支出の方はいつも通りだけど、収入の方はほとんどゼロになるかもしれない」

「まあそれでも今の残高なら大丈夫ですけどね」


確かにその通りだ。ただそういう場合ばかりではないことも知っていてほしい。日本でも黒字倒産ということはあった。本業は儲かっているのに、手元資金がなくなって倒産する例はないわけではない。


ただこちらでは制度上は一時解雇もできるようなのでその点は少し楽な気もする。一時でも解雇される方はたまったものじゃないのでできるだけ避けたい。


あとでどこかにへそくりをしておいた方がいいように思う。





 それからそれほど出店ができない理由としてはふつうは人が足りなくなる。


日本の飲食チェーンなどもスタッフの教育が追いつかずに手を広げ過ぎて自滅したところはある。


ところがうちはマニュアルを作って座学と実地の両方で教育しているのでよそより育成が早い。


そううまくいくのか不安になるが、この辺は前世の日本に比べれば店員の顧客対応の質が相当低くても、よその店の方がたいていはもっと低いので、目立たずに済むところがある。


日本でも少しくらい店員の態度がいまいちでもそんなにヒステリックにならなくてもいいように思う。


とはいいつつ、何か面白くない口を叩かれた店をその後避けていたりはしていたな。



「どんどん増やしているけれど、店員の教育は大丈夫なの?」

「うちは評判がいいですよ」


確かによその店だと昼になると食事しながら接客していたりとかかなり自由だった。


商品知識も徒弟なんかだと怪しいし。その点はうちの方がずっといい。


ただ現場だけでなく管理の方も現場の数に応じて人数が必要になるはずだ。


「管理者の方も必要になるよ」

「それなんですよね。みんな残業して回していますけれど」


それは危ない。管理者の方は少ないから誰かほかの人にしてもらおうとしても上手く行かない可能性が高い。


何かの事情でやめたり、急な病気でも起こせば回らなくなる可能性は高い。


残業の方も続くとそれが当たり前になるし、健康にも明らかに良くない。


「そりゃ危ないよ。管理者少ないから、何か事故があったら回らなくなるよ。だいたい残業は急な事態に対応するならいいけど、恒常的にしちゃだめだよ」

「それはそうなんですが、よそとの競争があって、早く出さないと勝てません」




 クルーズンは人が流入している。子爵領の方は領政がまずいから流出することはわかる。


ただそれだけでないようだ。やはりしがらみが大きくまた新しい技術や社会がなかなか普及しない田舎から都会への人の動きがあるようなのだ。


だからクルーズンでは次々に家ができている。


その中で古い庭付きの家が壊されて、長屋のような建物が作られる。人口密度はどんどん高くなって、既存の店では足りなくなる。それに対する商店も全然足りない。


人口増加中なので、どんどん店を増やせる余地がある。ただその手の頭を使わない競争というのはどんどん疲弊していくように思うのだ。


けっきょく価格を安くするとか少しでも手間をかけるとかそういう方向に流れがちだ。もちろん消費者にとってはいいことだろうが、店をしている方はつらい。


それから競争はそれ自体に捉われて他の価値に目がいかなくなる。捉われていないようで一日中そのことを考えていたりする。


別に競争自体が悪いわけではないのだが、近視眼的になるし、それにあまり価値を置きすぎるのもどうかと思う。


「あまり競争ばかり考えていると目が曇るからやめた方がいいよ」

「だけど先に出店しないと負けちゃいますよ」


「店を出した時期しか優位性のない商売じゃ、後から別のタイプの店に負けるよ。もっと頭を使って他に価値を付け加えないと」


「何すればいいかな?」

「それはこれから考えないと」

「考え方だけでも」


「例えばさ、この前の観光ガイドはあれだけではそれほど儲からないけれど、あれがあるからお客さんはうちに来てくれるよね。そんな風にうちだけで出せる魅力ある商品を作るなんて言うのはあると思うよ」

「なるほど」


そんな風に出店についてもいろいろ考えていた。

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