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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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25. クラープ町でまた面倒

 またクラープ町の方がきな臭くなってきた。俺に対して領都ゼーランへの出頭命令がシルヴェスタ・ドナーティ合同商会あてに届いていた。


それとは別に匿名の暗号文で手紙が来て、さらに別ルートで暗号の鍵が届く。どうやら領主が俺の拘束を考えているらしい。


どのような筋から来た手紙かわからないが、妙に具体的で、しかも領主の近辺ではないかとも思う。





 出頭命令についてはどのような件か問い合わせの手紙を手紙を役所に送る。領都までは勝手に役所が送ればいい。郵便は高く、こちらが持つ必要もない。


俺自身はもはや子爵領の住民ではなく、クルーズンの伯爵領の住民である。ある意味では外国にいると言っても差支えない。


子爵領から強く求めてきたところで、明らかに犯罪でもしていない限りクルーズン領府は取り合わないだろう。




 いちおうギフトのホールを維持するためにクラープ町には毎日行っている。ただ人に見られたくないのでうちの旧本社からは出ない。


マルクは最近はうちの旧本社で仕事しているので、話すのは容易だ。いちおう合同商会となっているが、こちらの仕事は旧ドナーティ商会に任せるようにしていくつもりだ


そろそろジラルドもクルーズンに連れて行きたい。だからうちがしていた仕事をマルクに引き継いでもらう必要がある。


旧ドナーティは前主人マルキの無茶で混乱していたが、それも収まりつつあり、タイミングとしてはちょうどいい。


なおマルキはクルーズンのどこかの商会で下働きをしているらしい。目撃情報もあるが、正直言うと会いたくない。向こうだって居心地が悪いだろう。




「あのウドフィがシルヴェスタはいないのかと聞いてきたよ」


そうか、家宰やスミス氏ではないのか。彼らなら割と話は通じるのだが、ウドフィだと全く話が通じない。


あの暗号の手紙の件もあるし、領主あたりが何かしているのかもしれない。


「ウドフィですか。あれはやりにくいですね」

「なにか一方的だったし、こちらの言うことも聞いていなかったよ」

「聞いてもわからないんでしょうね」

「こちらではわからないからとクルーズンの本社の住所を知らせておいたよ」

「ええ、それで結構です。どうせ手出しはできないでしょうから」

「だけどこちらにいるだろうと聞いてきてね」



 マルクに迷惑をかけてしまっているのか。確かに商会の名前にはシルヴェスタの名前が入っている。だがそれは出資しているに過ぎない。


クラープ町の商業ギルドでは株式の制度が整いつつあるが、法律的には俺は出資しているつまり商会に金を貸しているだけだ。


いちおう取締役だが、公式には年に数回の会議にしか来ない。実際は毎日こうして来ているわけだが、騒動が起こる前はほんの5分か10分挨拶するだけで帰っていた。


逆にクルーズンの方では毎日執務室にいるし、裁判所やギルドにも行っている。どう見てもクルーズンの住民なのだが。


「ご面倒おかけしますが、クルーズンにいると言っておいてください。向こうにいる証拠はいくらでもありますから」

「ああ、そうしておくよ」




 ついでにジラルドにクラープ町北部の行商の状況を聞く。パラダ商会以外の領都系の4つの商会がつぶれ、さらに家宰らの要望で行商と郵便を引き受けて数か月が経過した。


当初は人が全然足りずに行商や集配の回数をかなり減らしていたが、だんだん増えてきたらしい。


「まだ前にうちがしていたほどまでは回復していませんが、7割か8割近くなりましたよ」

「それは助かる。人は採れているの?」

「ええ、例のパラダに対する裁判とか、領都系商会の不払いに対する補償がよかったみたいで、うちは評判がいいですよ。次々応募者が来ています」


あまりうちだけ採り過ぎるまたやっかみが来そうで怖いが、ただ他の商会は領都系の商会の営業を引き受けてむしろ人余りだから大丈夫だろう。


それからジラルドに伝えておかないといけないことがある。

「それで、こちらの復旧のめどが立ったら、またクルーズンに来てもらいたいんだ。こちらの仕事はマルクに引き継いでほしい」


そう言われてジラルドの方は少し当惑しているようだ。クルーズンの方はいくら人がいても足りない。ジラルドにいてもらえると頼もしい。カミロなんかもジラルドがいた方が張り合いがある気がする。


ジラルドについてはクルーズン進出のときは1人で向こうに行ってもらい、逆に撤退のときは1人でこちらに残ってもらい、散々振り回してしまった。


「わかりました。たぶんあと数か月だと思いますが、少しずつ引き渡すようにしていきます」




 面倒ごとが終わってギフトのホールで家に戻る。もちろん目の前にいるのはクロだ。ところがあのアホの神もいる。


「お前さん仕事中じゃないのか?」

「クラープ町で面倒ごとを片付けてきたところだよ」

「クロ様のお世話はワシがしておくからよいぞ」

「俺の猫だからな。少しは触らせろ」


そう言って強引に割り込む。クロの脇の下あたりに手を入れてかいてやる。


「あっ。ワシが抱いているというのに」


まるで恋人でも取られたような言い方だ。


「あんたは一日中触っていられるのだから、少しくらいこちらが触ってもいいだろう」

「お主はワシがいないときにクロ様が退屈しないようにお相手をしていればいい」


これがいないときなんてあるのだろうかと思う。とにかく、クロを取り上げて、面倒で疲れた心をいやしてもらうことにした。


その時のクロの顔があきれ顔のようにも見えた。


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