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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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コピペ本が出る

 観光ガイドブックの品切れの方は、無事に版が出来上がり、1500部を市場に出すことができた。


お待ちくださいと待たせていた相手にも、無事に販売することができた。


面白いように在庫が減っていくが、また在庫切れの心配がないように、少なくなってきたら早めに版を発注することにした。



 おおむね便利な本だと歓迎されたが、一部の知識人からは書籍の精神性をないがしろにする低俗な本の扱いを受けてしまった。別に低俗な内容を書いているわけではない。


低俗だとか誰かを攻撃するとか嘘をつくとかあまりの陋習を擁護する本を大量に出すことがいいとは思わないが、そんなものではないと断言できる。


著者の精神性にこだわらなくても、この冊子を手に取った人がどこかに足を運べばそれはそれで有用だし、読んで思いを巡らすだけでもいいと思っている。


著者の思索を展開する本をあってもいいし、実用書があってもいい。前世の日本の大手出版社は儲かる本を売ることで儲からない本を作っていた。


まあ彼らが何を言ってもどうなるわけでもないので放置しておく。知識人だってあんなのばかりでもあるまい。




 ところで観光客向けの露天商に対して競合の店が出るくらいだから、これだけ売れたものに対しては当然のことながら競合の品が出る。


気になったので競合の露店で買ってみるとどう見てもうちの冊子のコピペだ。


だいたいうちだってもともとレポートがあり、さらに編集に2か月ほどは掛けたのだから、そんなにすぐにできるはずがない。


しかもご丁寧に地図部分もコピペしてある。さすがにこれは問題だ。地図商にもコピペが行われたことを伝える。


地図商の方はさすがにコピペにはなれているようだが、法律的な対応をするよりは技術力で差をつけるそうだ。


やはりコピペ品はいろいろ欠点があるという。肝心の地図を見るときに間違いがあって使えないこともあるそうだ。


ただそういうものに比べると、こちらのガイドブックはコピペがしやすいように思う。





 前世だと刑法犯だったため警察沙汰だったが、こちらの世界では刑事でそのような法はない。著作権に関する制度が未整備のようだ。


ただ民事の方はさすがに賠償の請求ができるようだ。とはいえ、相手を特定しなくてはならない。


コピー本を売っている競合の行商人にどこから仕入れているか聞いてみるが、要領を得ない。


「どこから仕入れているかなんて知りませんよ」

そう言われるとそんなもののような気もする。たくさんある商品のうちの1つだからだ。


ただそれではそのままになってしまうので、行商人を管理している販売元の方に案内してもらう。


すると販売元の方は方は少し臭い。どうやらコピペ業者を知っているようだが、のらりくらりと言い逃れする。


「いやあ、ふらりと寄ってきた商人が売りに来てですね。私どもとしてもどのような業者かわかりませんな」


おそらく知っているのだろう。それどころか露骨に関係がありそうだ。


「ただうちとしてもコピー本が売られると本が作れなくなるわけです。そちらのコピー本は取り下げてもらえませんか?」


「なるほど、確かにコピー本はあってはいけません。ですがこちらの商品がお宅のコピーだという証拠でもありますか?」


完全に居直りだが、そう言われると残念ながら証拠はない。見比べれば明らかなのだが、公的機関の認定を受けたわけではない。さらにコピー屋は散々なことを言っている。


「だいたいお宅は品切れで欲しい人に売ることができていないわけでしょ。こちらは人助けしているくらいなんだ」


そんな馬鹿な話があるか。コピー屋などいたら、重版がどんどんかけにくくなる。


「うちとしても著者をないがしろにするコピー本はけしからんと思っているわけです。ただうちの商品がコピーかどうかはわからない。ですからこれを売らないというわけにはいかない」


見え見えの嘘をついている。絶対に続けられないようにしてやる。





 これ以上は追い詰められないので、やむを得ずこの場は引き下がる。


だがコピー本が出回れば著者に正当な報酬が行かなくなる。さらに編集にも金がかかっているのだ。

編集にかける金がなくなれば本は出版されなくなる。コピペ本の版元など寄生虫でしかない。




 地図商の紹介で出版商のギルドにも顔を出すことになる。そこでコピー本について相談する。


「最近、観光ガイドを出版したシルヴェスタと申します」

「ああ、あの評判になった」

「ずいぶんな売れ行きだとのことですな」

「はい、おかげさまで。ところで、コピー本が出てしまい困っております。皆様はどう対処されているのでしょうか」


そう言われてもギルドのメンバーは戸惑っている。

「残念ながら有効な手立てはありませんね」

「私どもも困っているのです」

「裁判にはできないのですか?」

「訴訟しても訴訟費用と手間を考えるととてもとても見合わなくて」


残念なことに相談してもよい答えは得られなかった。




 コピペ本を作った者については、クルーズン冒険者ギルドに費用を払って調査を依頼する。


このギルドの建物は思い出がある。ここに始めてきたのが5年も前の8歳の時だった。そういえば冒険者業の方はほとんどしていない。


いちおう剣術稽古やらギフトを使った魔物退治はときどきすることはある。


考えたらシンディはそっちの方が楽しいだろうなと思うことはある。



 さすがにギルドは数日で編集元を特定した。やくざ者のようだ。うかつには手出しできない。


どうしようもなくなって、前にパラダとの訴訟でお世話になったカルター代言人に相談に行くことにした。

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