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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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観光ガイドの印刷

 観光ガイドブックを作っていて、原稿ができたので執筆の手伝いをしているアランと2人を連れて印刷屋に持って行く。


俺1人でもできるが、いつまでも1人でするわけにはいかないからだ。やり取りも全部記録を取ってもらう。


印刷は金属活版つまり金属製の一文字ずつの版を組み合わせて板にはめ込んで印刷する方法もあるが、ごく限られた業者しか扱っていない。


ややハードルが高く、とりあえずは木版で作ることにする。木版なら市内にはいくつも業者がある。




 価格についてはあらかじめ聞いていて、それに合わせて原稿を作ったので、特に目新しいことはない。


20ページだと10枚の木版を作り、裏表に刷る。それを真ん中で留めて、2つ折りにすれば20ページの冊子ができる仕組みだ。


印刷は部数が少ないと1部あたりの値段が高くなってしまう。




 印刷屋で親方に話しかける。


「ごめんください。こちらの原稿を印刷したいんですが、よろしいでしょうか」

「兄ちゃん、何部くらい必要なんだ?」

「数百は欲しいですね」

「それなら木版でいいな」

「それ以外だとどうなるんですか?」

「10数部くらいなら書き写した方が早いし安上がりだ」

「なるほど。でも印刷の方がきれいじゃないですか?」

「さすがに字がうまい人が書くので、そんなに変わらない……、どころか手書きの方がいいときもあるよ」

「はあ、そんなものですか?」

「まあな。印刷よりいろいろ細かいことができるからな。それはそうと、原稿はどんなものだ?」


持ってきた旅行ガイドの原稿を見せる。


「へぇー。こりゃ変わった本だな」

「ええ、うちの店で新たに売り出そうと思っていて。前に聞いた話だと500部で15万くらいだとか」

「まあそんなものだな」

「時間はどれくらいかかりますか?」

「まずは2週間くらいで試し刷りを出す。それを見てもらって、よければすぐに印刷に入る。だがふつうは修正がある」

「木版でも修正できるんですか?」

「そりゃ、間違った文字を削り取って、そこに新しい木板を貼り付けて彫りなおせばできるよ。修正機会は2回。ただあまり多いと、金もかかるし、見苦しくなるけれど」

「じゃあ、お願いできますか?」

「わかった。少し出来上がりについて話し合おう」




 木版を彫るのでわりと自由に作れるらしい。ただあまり凝ったものよりはシンプルで見やすいものにしてほしい。そんな希望を出す。


「ここに今まで作った本が並んでいるが、こんな感じでいいか?」


親方は並べてある本から1冊取ってこちらに見せてくる。わりと読みやすい感じで、下品な感じや違和感などもない。これで頼むことにする。


「ええ、こんな感じでお願いします」

「わかった。じゃあ2週間後な」




 2週間たって印刷屋から試し刷りが届く。いつの間にか編集部になった執筆メンバーで中身をチェックする。


どうしても修正箇所はある。まず原稿段階の間違い、それから版にするときの間違い、それにどちらの間違いとは言えないが印象が違うとかそのままだと使いにくいなどだ。


もう一回修正の機会があるが、修正したいものは早いうちの方がいい。


それぞれ数日掛けて赤字で指摘事項を入れる。また印刷屋に行って指摘事項を注文する。


それから親方に指摘事項の書き込みの仕方についていろいろ聞いてくる。間違いなく伝わるようにだ。もちろん全部メモしてくる。



 こんどは1週間もしないうちに次の試し刷りが届く。もうほぼ完成品だ。ただこういう間違いというのはいくらチェックしてもなくならない。1回目よりはずっと少ないが、いくつかは修正する。


「これで、もう修正できないけど、いい?」

そう言うとみんな不安そうになって見直す。何か言いたそうな子がいたので聞いてみる。


「何かあるの?」

「ここなんですけど、まあこのままでもいいし、直してもいいしで」

「なるほど、みんな、どう思う?」

「確かに。まあ読みやすくなりそうだから直そうか」

そんなやり取りをして仕上げる。




 印刷屋に頼んでまた2週間ほどして500部が刷り上がる。簡易的だが製本もしてある。馬車で届いて編集部で中を見る。


「こんな風にできたけどどう?」


もうすでに試し刷り段階で完成品に近いものは見ているのだが、なんとなくやはり意気が上がる。山と積まれていていままでとはまったく雰囲気が違うのだ。


「これ中見ていいんですか?」

「もちろん。1冊ずつ持って行っていいから」


座ってそれぞれ中を見て、編集のときの苦労話などする。一通り中を見たら、あとは500部のうちの100部くらいを分けておいて、幹部と取引先などに配る。そちらの方でも評判はいい。


「試し刷りは見たけど、やっぱり出来上がりになるといいですね」

「こういうものは初めてみました。なるほどなかなか便利そうですな」

「うちで売り出しますので、お入り用でしたらぜひお申し付けください」


そんな風にこれからの期待をしていた状況だったのだが、実際売り出してみると大変なことになってしまった。


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