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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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観光ガイドの編集

 クルーズンの観光客向けにガイドの小冊子を作ろうとしている。


アランの企画で観光客向けにものを売っているが競合が出てきたので新しい商品を考えているのだ。


小冊子は小冊子でまねされそうだが、それはそれで考えがある。




 商会の中で街を知るために従業員たちに年に1度勤務時間中にお小遣いをあげて街を歩かせてレポートを書いてもらっている。


その中で生活に密着したものもあるが、それだけでなく観光情報も結構ある。それをピックアップして、もう少し調べたりして情報を集めている。




 レポートが気を引いた従業員から担当者を2人ほど入れて、幹部とともに編集方針を話し合う。


「観光ガイドって何を載せたらいいかな?」

「そう言われても、そういうのって見たことも聞いたこともないしな」

「うーん。じゃあ、知らないところに旅行に行ったとして、どんな情報が欲しいかだな」

「まず見どころかな」

「それは開場時間も書いてないとまずいな。あと料金か」

開場時間の情報などは手に入れようと思ってもふつうはほとんど手に入らない。宿屋の店員などなんとなく事情を知っている人にきくのだ。


「危険なところの情報もあった方がよさそうだ」

「泊まるところと食べるところも知りたい」

「お土産品なんかもあるといいな」

「あ、市場の場所もわかるといい」


そんな感じでどんどん書きたいことが増えていく。ただ版で刷るとなると前世のように細かい文字が使えない。それなりに文字が大きいから情報が減る。


かといって紙も印刷も高いから安易にページは増やせない。それもあるしそもそも作るのが難しいので図や絵もほとんど入れられない。あまり分厚いと持ち歩きたくない。


そんなこんなをしていると、載せたいものが多すぎて、泣く泣く記事をあきらめたり、かなり簡略化したりしたところもある。




 書いてみてよくわからないところは、あらためて取材に行ったりして、情報が詳しくなっていく。そして手書きだが、何とか試作品ができる。


「こういうのは初めてだな」

「絶対売れるわ。私が旅行者なら絶対買うもの」

「確かに便利だよな」


そんな感じで評判がいい。みんなは喜んでいるが、ただ少し物足りない。だいたい単色刷りなのだ。色刷りの技術はまだこちらの世界にはない。


日本でも二色くらいは昔からあったかもしれないが、多色刷りが本格的になったのは鈴木春信からでたぶん江戸時代も中頃くらいのはずだ。


版をいくつも作って色を重ねていく。恐ろしく金がかかりそうだし、職人の技量も必要だ。


さすがに今回のものに使えそうにはない。そのうちに別のぜいたく品として作らせるかもしれない。




 右往左往しながらいちおう作ってみたが、いろいろ注意点もある。


開場時間を書いたが、その時間と言うのも結構いい加減だ。施設の管理人の気分で変わったりすることも多々ある。


だからガイドブックの方もあくまでも目安ですと注意書きを書いておく必要がある。


完全に信じ込んで行動すると気の毒なことになりかねないし、それで文句を言われても困るからだ。




 それから発行日をかいて、最新版を入手してくださいとの文言も入れておく。観光ガイドで扱われる内容は刻々変わるからだ。


あまり古い冊子をいつまでもとっておかれて使えないと言われてもこちらとしても困ってしまう。


こちらの社会だと印刷物と言うのは長く情報が変わらないものに使うのだが、これはそうではないことを強調しておく必要がある。





 それから観光ガイドとなると地図が必要だ。手書きのイラストのような地図もあるが、やはり本物の地図が欲しい。


「あとは地図が必要だな」


そこで地図商に話を持って行って、地図を2ページ分使いたいので、使用料を払って使わせてもらえないかと話に向かった。


地図は高級品でそのような店に子どもが来たので店主は少し当惑している。今でいえば住宅地図専門の店のようなものだろうか。


でもお使いで来ることもないわけではないとは思う。


「はじめまして。シルヴェスタ商会のシルヴェスタと申します」

実は商会としてはずいぶん地図も買っているが、直接来るのは初めてだ


「シルヴェスタ様はご店主様でいらっしゃいますでしょうか?」

「はい店主です」

「それは毎度お世話になっております。きょうはどのようなご用件でしょうか?」

「実はうちで観光客が街の情報をすぐにわかるような小冊子を作りたいと思っています。そこで地図が必要なのでお宅の地図を使わせてもらえないでしょうか?」


商会店主だと言って納得したと思ったら、こちらの話を聞いて向こうはさらに驚いている。


「はて、そのようなお話は初めてで、詳しくお聞きしたいと存じます」

「20ページほどの冊子でクルーズン市の観光案内をします。巻末に地図をつけたいので、1部1ページあたり10ハルクで、2ページ分お借りしたいのです」

「大変申し訳ないのですが、そのようなお値段だと私どもとしてもなかなか難しいですね」


地図はかなりの値段がする。1枚売って数千数万ハルクの世界だ。誰もが見るものではなく、プロユースの仕事道具と言った位置づけなのだ。


だが俺はこの冊子を20ページで600ハルクくらいにするつもりだ。そうすると原稿料としてはむしろ高いように思う。


もちろんその値付けが安すぎという考え方はあるが、ただ全く売り方が違うのだ。


「ちょっといくつか説明させてください。まずこのような小さい冊子につける地図なので、これを買ったからと言ってお宅の地図が売れなくなるわけではありません」

「ほう、なるほど」


「はい。それに地図については信頼できる地図であることを示すためそちらの名前を入れるつもりなのです。ですからこの小さい地図では足りない、もっと大きい地図を見たい人が買いに来て、むしろ宣伝になって売り上げがのびるくらいです」

「そうなるとありがたいですな」


「それから売れる部数が違います。とりあえずは数百部売るつもりですが、数千数万になると思っています。ですからそちらにお渡しする金額もそれに比例します」

「部数が出れば、こちらに入る金額もそれなりのものになりますな」


「いかがでしょうか。そう言った前提で改めてご検討願えないでしょうか」

「なるほど。シルヴェスタさんが新しい商売をいろいろ工夫されているというお話は聞いていましたが、突拍子もないことを考えられますな。そう言うことでしたら、お使いください」


何とか地図を使う話もついて、編集についてはある程度めどが立った。


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