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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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15. 観光ガイド本を作ってみたい

 アランの観光地仕様の商売についていろいろ聞いている。さすがに旅行者が買いたがる物についてはかなり押さえているようだった。


クルーズン市はクラープ町よりはるかに広いので、とてもとてもうちの商会のネットワークがカバーしきれていないが、それでも名物があれば商圏の外にまで仕入れに行ったりしていた。



 ただ競合にまねされる心配があった。いや実際にすでに競合が出始めていたのだ。


クラープ町の行商は流通やら軽食やら工夫して競合を追い落としたが、こちらの観光客向けはまだそう言うことができていない。そんなわけで競合に負けないよう次々新しいものを考える必要がある。


こういう時は前世にあってこちらにないものを考えるのが有利だ。そうして考えてみると、まずお土産に食べ物が見当たらない。


アランはお土産をいろいろと売っていたが、持ち帰るような食べ物はあまりなく、その場で食べるものばかりだった。


「お土産品に食べ物ってある?」

「食べ物はないなあ」

「何でないんだろう?」

「そりゃ何日も持たないし、重いし、あまり持って帰ろうと思わないな」



 前世の日本の観光地のお菓子と言うのは何となくいまいちなものが多かった。


たぶん工場で作って脱酸素のパッケージにして長持ちするようにしかも大量に作らないといけないことの制約があるのだろう。


美味しくしようとすると例えば砂糖を減らすことになって、そうすると翌日までしか持たないなどと言うことになる。それだとお土産に持って行きにくい。


地元の人向けのお店に行けば面白いものもあるのだが、そういう店は観光客は行きにくいし、長持ちしないものが売られている。




 こちらの世界だと保存技術もないので、長持ちと言うことはあまり考えにくい。だいたい日本だってあんなにいい保存技術が普及したのは平成になってからの気がする。ましてこちらでは何日もかかるところに持って帰れるのは一部の保存食だけだ。


そういうものはクルーズンで買う必要もない。それから砂糖を多く使えばわりと長持ちするのだが、値段が高いのでふんだんに使うわけにもいかない。


それで思い出したが、日本の昔ながらの観光土産はかなり甘いものが多かった気がする。




 幹部だけでなく従業員にも長持ちしそうであまり重くなくてよそでは買いにくい食べ物を聞いて回ったが、残念ながらそういうものはなかった。


そんなわけで食べ物路線はとりあえずあきらめる。もしかしたらそのうちレストランのレオーニ氏に開発してもらうかもしれない。もっとも彼はいまは麺に夢中である。麺は麺で乾麺ならお土産にできるかもしれない。




 次に考えたのが観光案内書だ。


こちらの世界は観光パンフレットのようなものがない。それは印刷が高いから仕方ないところもある。だがないと不便だとは思う。


「旅行に行ったときって、名所なんかはどうやって調べるの?」

「宿屋で店員に聞いたり、茶店で人に聞いたりかな?」

「酒場なんかでも聞くことはあるみたいだな」

「冒険者ギルドで観光案内のバイトしているのもいるぞ」


茶店や酒場で人に聞くのは時間がかかるし、情報があやふやな気もする。もっとも前世の日本ほど忙しくないから、ゆっくり時間をかければいいのかもしれない。


それはともかく、やはりガイドは欲しくなった。日本は江戸時代あたりになると観光ガイド本などもあったようだが、それでもきちんと製本した冊子だった気がする。


あまり立派な冊子だと高い。せっかくだからあまり気張らず格安で重くないものがいいと思う。そんな方向でいろいろ考えてみる。



「旅行者用に観光ガイドの小冊子を作りたいと思う」

「旅行記はあるけれど、あまりそう言うガイドというのは見たことないなあ」

「だけど宿や茶店や酒場で聞くのも結構大変じゃない。知りたい情報が得られるかどうかはわからないし、時間もかかるし」

「確かに宿屋の店員はともかく、茶店で人に聞いてもあまり詳しくないことはあるなあ。結局行ってみるしかなくなってしまう」

「そういう時に小冊子があると便利じゃない?」

「確かに買う人はいるかもな」


そんな感じでとりあえず試作品を作ってみることにする。


いちおう他の仕事もあるので従業員も使うが、わずかな人数だけだ。新しいことを始めるときは小さくだ。




 まず街の情報を調べたいが、実はまだ街の様子を知るための街歩きを続けている。


幹部だけだと疲れてしまうので、年に一回その下の従業員たちにもお小遣いをあげてしかも就業時間中に街歩きをしてもらっている。


ただし仕事なのできちんとレポートは書いてもらう。そんなわけでずいぶんと街の情報はたまっているのだ。


かってに遊んでもらうのがいいと思っているので、あまり内容をコントロールはしていない。


ただあまりたまっていくと後から見返せなくなるので、適当なタイミングで見出しをつけたり、抜粋をまとめたりしている。




 レポートはふだんの食料品や日用品を売る参考になるものもあれば、今回のような外来客に向けにちょうどいいものもある。


そこで外来客に向いた記事をピックアップして並べてみる。ただあくまでも商会に向けて作られたレポートなので、そのままでは外来客に見てもらう質ではない。


そこで足りない部分についてはレポートを書いた人に聞き直してみたり、取材に行き直したりする。




 あるレポートが気になってそれを書いた徒弟の子を呼び出したときの話だ。彼が来て俺に話しかける。


「あれ? 君も呼び出し? 何の件だろう。何かした覚えはないんだけど」

クルーズンではあまり店に出ていないし、俺が子どもの姿なので勘違いしたらしい。


「いやよく来てくれた。私が店主のシルヴェスタだ」

彼はびっくりして、頭を下げる。

「これは失礼しました。私が何かしでかしたことでもありましたでしょうか?」


「いやいや、君の書いてくれたこのレポートに興味を持ってね。詳しく話を聞きたいと思ったんだ」


そんな調子でレポートを書いてくれた人に話を聞いたりする。他の人もほとんどはおれの顔を知らなった。クラープ町の処理が忙しかったから仕方ないよな。




 家に帰るとクロが寄ってくる。旅に出てもギフトで必ず家に帰るのでクロと会わない日はない。


すっと抱き上げてなでる。ただ15分も続けているとこちらも疲れてくる。


適当なところでおろすと、まだかまいなさいとばかりにこちらの足にすり寄ってくる。


かわいそうなので、もうしばらく抱きかかえてなでる。だが用事があったりするとやはり途中で止めるほかはない。


そういう時は何か美味しいものをあげる。えさばちには何か入っていても新しいものをもらうのは意気が上がるようだ。おやつをもらうようなものなのかもしれない。


そうするとこちらに構えと言ってこなくなる。ただ本当にそっちの方がいいのか、それとも仕方ないからこれで我慢してやると言うところなのかはわからない。


神がいると「またそんなものでごまかしおって、何が大事で何が大事でないか人間はわかっておらん」などと叱りつけてくる。


ごもっともだとは思うが、あんたにはもっと大事なことがあるような気はする。

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