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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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アランの観光地仕様の商売

 クルーズンの行商ではクラープ町と違い観光地仕様がある。なんでもアランが始めたことらしい。その時のことを回想して話してくれた。


クルーズンの街がどのようなところか歩き回ったときのことだ。あちこち歩きまわるにしても、アランはどうもにぎやかなところの方が楽しかったようだ。


「こんなところ歩いていても行商場所なんてなさそうだけど」

「まあでもいろいろ歩いてみてみるのが趣旨だし」


そんな調子で、クラープ町とは違う雰囲気のところを見ていたそうだ。


「ここじゃ食べ物とか売れそうにないね」

「そうだな。でも他にも売れそうなものもあるんじゃないか」


確かに今まで通りのことを永久にする必要はない。新しいことをしてみるのもいいことだ。


ただ新しいことは小さく始める方がいいとは思う。何かすごい業績を挙げたくて、海のものとも山のものとも知れない新しいことを大々的に始めたがる者は少なくない。


そういう者が何らかの決定権限を持つ地位につくと多数の人間を巻き込んで突撃を始めることがある。たまたま上手く行くこともあるが、多くは失敗する。たいてい責任は取らない。


しかもだいたいそういうことをしたがる者はそれをしたいわけではなく、何か業績を上げたいとか人を動かしたいとか目立ちたいとか他の理由が多い。


そうするとちょっとうまくいかないとすぐに挫折する。だから新しいことには警戒が起こる。


だけど新しいことが悪いのではなく、それをいきなり大々的にするのが悪いのだ。


言い出した者が小さく始めるのは、それが他の問題がない限り、むしろいいことだ。たとえ失敗してもそれは名誉の失敗だ。




 アランは人を巻き込むことなしに、もう幹部だったのに、自分で店を出すことにした。しかもふだんうちはワンオペはしないが、1人で店を出した。


それはその手のにぎやかな通りでは広場と違って広い店が出しにくかったという事情もある。


初めは装飾品を扱ったようだ。クラープ町の行商で顧客が楽しめるように少し装飾品を扱っていたので取引があった。そういうわけでそれを並べて売ったらしい。




 何かむかし東京の原宿で見た露店を思い出す。道端とか歩道橋の少し広くなったところあたりにシートを広げて装飾品など売っていた。


もう長らく原宿など行っていないが、いまでもああいうものはあるのだろうか。さすがにありそうにない気もする。



「来客はぽつぽつとだけどそれなりには売れましてね」

装飾品だから大きさの割には単価も高く、食料品ほど売れなくても利益は出たそうだ。


「それで行けそうだと思ったので、店を続けてみたわけです」


装飾品だと同じものばかり扱っていても売れなくなることもあるが、さいわい外からの客が多いところで、そう言うこともなかったらしい。


つまり来客としては同じ人ばかりではないので、初めて見る人ばかりで、同じものばかり並べていても売れたようだ。


「やはり場所によって商売の仕方ははずいぶん違いますね」


「ただ売れたのはたぶんアランだったからでしょう」

マルコが補足する。

「他の者が行ったらほとんど売れないということもあったくらいだから」




 儲けがあったこともあり行商を続けていると、やはりなくてもいいものだからか、ある程度トークなども必要だとわかってきたという。


あまりその手のことをマニュアル化し過ぎるのは好きではないのだが、押し売りにならない範囲で工夫してもらえればいいと思う。


「こればかりは向き不向きがあるので、誰でもできるわけではないですね」

「たしかにそうなりそうだね」


クラープ町の商売のように食料品のような買わないといけないものを売るとなると、他に店がないこともあり、店員が少しくらい不愛想だったりたどたどしくても買ってくれる。


だが装飾品のように買わなくてもいいものだと、店員次第で売り上げが変わってしまうようだ。


そういうのは向き不向きで向いている人だけがすればいいと思う。


カミロなどはとてもそう言うトークには向いていないと思うが、アランが思いもつかないような計画を立てたりすることができる。


それぞれが得意なことを手分けしてした方がいい。もっともカミロの場合、話すことは変でも容姿は美しいので、装飾品を売るのには向いているのかもしれないけれど。


それはともかく、そんなふうに向き不向きがあるから、向いている人を見つけて特別に研修をしてトークなども仕込んでいるようだ。


さらに装飾品だけでなく、何が売れるかいろいろ試しているという。


「ここに住んでいない人が欲しがりそうな物で、やはりあまり重くないものを探しておいてますね」


観光地の駅かサービスエリアにあるお土産屋のような形になるのだろうか。


観光地の名前が入ったキーホルダーとか提灯とかファンシーグッズとか、また発想が昭和の修学旅行になってしまった。




 人をだますような商売でなければどんどんすればいいと思うけれど、何かすぐに競合が出てきそうな気もしないでもない。


クラープ町のときのように競合を引き離すような手を考えた方がいいように思う。


「競合にまねされたらつらそうじゃない?」

「それなんですよね。何かうちだけのものを作れないかと思って」


アランはちゃんと考えていたようだ。それならこちらもうちだけのものもまじめに考えてみようかと思う。

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