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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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クラープ町での従業員の採用

 クラープ町にあった領都系の5つの商会が連鎖倒産した。


家宰の奔走により、それぞれの商店とその営業は土着の地元系商会に譲渡され、また行商と郵便はうちが引き受けることになった。


領主もウドフィも無能でしかないが、家宰はそれなりに能力があるようだ。




 さてそこで行商も郵便も人が全然足りない。


パラダたちはちっともそれらの商売がうまくいかず倒産してしまった。


倒産までにどんどん人を切って商売を縮小していた。だからそのままの人数では北部で元のようには商売できないのだ。


首になった人たちはうちで吸収していたが、けっこうな人数がクルーズンに行っている。


もちろん帰りたいものは返すつもりだが、向こうの生活に慣れてしまった者も少なくない。


しかもいきなり引きはがしたらうちのクルーズンでの営業が困ってしまう。向こうは商売がどんどん拡大していくらでも人が欲しいくらいなのだ。


帰りたい者でもしばらくは待ってもらうことになりそうだ。





 人が足りないので、うちの南部の行商人に少し超過勤務をしてもらっているが、それでも足りず、行商の回数を減らしている。


だいたい俺は前世はブラックで超過勤務が嫌いなのだ。だから手当を出したとしても、あまり多くはしたくないし、圧力もかけたくない。いまのところは手当を出して自由応募で、稼ぎたい人に来てもらっている。


ただそれにしても上限を設けている。疲労が回復しないのは困るし、仕事しかしていないとどんどん視野が狭くなるからだ。


なお少し期待できるのは、地域の人もうちを支持して、新たな徒弟の子をうちに紹介してくれていることだ。それでもなかなか必要人数に追いつかない。





 ところで地元の他の商会は領都系の倒産した事業を引き受けたが、そうは言っても全部の従業員を引き受けるわけにもいかないようだ。


もちろん引き受けた時点ではほぼ全員受け入れているが、慣れてくると既存事業との統合などが起こり、人余りが見えてくる。


そうなれば合理化と言うかリストラというかリエンジニアリングと言うか、要するに整理解雇が必要になる。


よくもまあ日本企業はつまらない婉曲表現を次々につくるものだと思う。





 そういうわけでそちらあたりを首になった者たちを再雇用することを考える。


ただ首になったというのは何か理由がある可能性もある。ただの人余りならいいが、前にいたクレムのようなトラブルメーカーだと困る。


別にいくらか人づきあいが苦手でも構わない。そういう人に向く仕事もあるからだ。


前の初めての対パラダ訴訟のときのオードルなどは自信をつけたのかクルーズンの方で活躍している。




 ジラルドと人の採用について話す。


「人手の方はどう? 採用は進んでいる?」

「ええ、地域の方が子どもたちにうちに徒弟に行くように勧めてくれるのでそれなりには増えていますが、まだまだ足りないですね」


うちは待遇も悪くないし、いちいち信用を獲得するようにしている。そのおかげもあるのだろう。塾からそのままバイト経由で来ることもある。


「倒産事業を引き受けた地場の商会が少し首切りを始めているようだけど」

「ええ、そちらを辞めてきた者からの採用が何人かいました」


さすがにジラルドはすでに情報をつかんでいるらしい。俺の方が町にいないこともあるから頼もしい。


とはいえ、本人の希望にもよるがこちらの事業が安定したらマルクに任せて、ジラルドもクルーズンに連れて行きたい。






 ところで俺ももとは中年なので中年を採りたいところはある。


ただパラダの友人の商会となるとろくでもない主人のろくでもない商会が多く、その風に染まった者がいても困る。


領都系全部ではないが主人や番頭がそういうことをしていたからか、平気で下を怒鳴りつけたり、ありもしない責任を押し付けたりしていたところも多い。


そもそもパラダ商会などは俺が行商を始める前から、領主と組んでろくでもない商売をしていたのだ。それに協力していたような幹部は取りたくない。




 概して上に行くほどろくでもない。主人が一番ひどいが、番頭もほとんどダメ、それから手代は半ば以上はダメ、ただ徒弟たちはそれほど染まっていないようだ。


そこで全員、徒弟として雇用することにした。それなら元徒弟はさほど抵抗はないだろうが、手代や番頭を務めていた者は多分来たがらないとの算段だ。


別に能力があれば半年ほどで手代にしているし、そうするつもりなのだ。





 さいわいうちの従業員たちが領都系の店に入っていた。だから内情はよく知っている。


その中で評判のいい者は優先的に採ることにする。ただし徒弟からは譲らない。


ただ働きがよければ、半年で手代に取り立てると言っている。別に嘘ではない。本当にそうしている。もちろんそうでないケースもないわけではないのだが。


前世の日本だと幹部候補・店長候補などと称してやりがい搾取だけして10年も下働きでほったらかしなどと言うこともあったが、そう言う嘘はよくない。


お約束だとかそれが世間だなどと言って軽薄な嘘を使うべきではないのだ。そんなものはすぐに見抜かれるし、結局は不信の種になる。


しかもやりがい搾取ができるのもごく限られた期間に過ぎない。




 元番頭にはとても採りたい者がいないが、手代の中には元従業員から評判のいい者もいる。徒弟があの人なら来てほしいなどというのだ。だからそういう人には声をかけてみる。そういう人に声をかけたときの話だ。


「そちらにいた徒弟たちから、あなたと一緒に働きたいとの声がありました」

「そりゃまあ、うれしいな」

「うちで働きませんか?」

「まあそれもいいが、そちらだと徒弟からと聞いているが……」

「さすがにパラダ商会さんたちだと、とくに上役に来てほしくない人がたくさんいるのでそのルールは譲れません。ただ早ければ半年で手代になることもありえますよ」

「まあ考えておく」


そんな感じで全員ではないが、わりと採ることができた。特に徒弟からの評判のいい者は、何度か声をかけて採用することもあった。




 そんな風にして少しずつ人手不足を解消して、行商の回数も郵便の集配回数も少しずつ回復させていった。


なお俺はだんだんクルーズンに軸足を移しつつあり、実行は相変わらずジラルドに任せている。


本当に有能な部下と言うのはありがたい。ぜひとも報いたいと思う。

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