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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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5. 幹部とクラープ町の営業の相談

 久々にクルーズンで仕事をしている。ようやくパラダとの争いが片付いた。いやその後の連鎖倒産もあったから後始末ばかりだった。


というよりパラダ本家やそのお仲間の領都の商人連中は、まだ俺から金をふんだくろうとたくらんでいるらしい。


またもう一波乱あるのかもしれない。さらに家宰はクラープ町の土着の商会に倒産した商会の営業の引継ぎを求めている。


うちにもう一度行商と郵便をするように求めてきている。




 そこでマルクから聞いた家宰の話を幹部たちに伝える。


「マルクさんから聞いた話では家宰のイグナシオは倒産した領都組の営業を地元組に引き受けさせたいようだ。それからうちに行商や郵便を引き取ってもらいたいらしい」

「家宰って領主の手下だろ」

「何を考えているかわからないな」


確かに家宰は領主の手下だ。ただ何となく話した限りでは家宰はそれなりに町や領の将来のためを考えて動いているように見える。


思い付きでお仲間を優遇する領主とは少し様子が違うし、庶民の間で無能だと噂話が広がるような領主ほど馬鹿でもない気がする。


もちろん領主に逆らえないわけで、いざというときは領主の意向に沿う可能性は高い。だからそれほど頼りになるわけでもない。そういう微妙なところだ。


「うーん、家宰自体はけっこう町や領のために動いている気はする。営業を引き受けるのも町や住民にとっても悪いことではないし」

「じゃあ、引き受けるのか?」


「それが問題で、パラダの本家やモナプが何をたくらんでいるかわからないし、あの領主がまた何をするかもわからない。しかも家宰ではそれを抑えることもできないだろうし」

「じゃあ、極力関わらないようにするの?」


「そうは言っても、領都組の商会に引き渡した従業員や町の人々について投げ出すことになるから、このまま何もタッチしないというのもね」

「何かいろいろ面倒だな」

「フェリスは責任感があるんだな」

「それは……まあ」


何となく気持ち悪いのだ。このまま投げ出してしまうことが。事業を手放したのは仕方なかったのだが、それでも従業員や住民に迷惑をかけた。それを取り返せるのに、取り返さないのも何か気持ち悪い。


「そうは言っても商売だし、悪いのは領主だからなあ」




 何となく幹部はクルーズンでの展開が充実している上に忙しいから町に労力を割きたくない雰囲気がある。


彼らの故郷だがやはりクルーズンの方が活気があって楽しいのだろう。儲かる上に人から求められる目先の仕事があるのに、ややこしい後始末に気が向かないのもわかる。


「商人は信用を失ったらおしまいだよね」

マルコがまた助け舟を出してくれる。


確かにうちは信用で持っているところもある。ギルドのパストーリ氏や役所のスミス氏や町の人々が支持してくれて上手く行った場面も多い。その辺はうちがそれなりに責任を果たしているからだろう。


「そうなんだよな。信用があるから支持してくれる人もお客さんもつくわけで。できれば復活させたい」

「そりゃ、まあ、そうだな」

「だけど、あの領主ではまた何をしでかすかわかりませんね」

「領主を止める方法ってないのかな?」

「もっと強い者に頼むことですか」


この辺はまだ法が国王や貴族を支配しきれていないこの社会の状況がある。法がこれらの存在の上にあれば、勢力の強い者に頼らなくても制度に頼って権利を守ることができる。


「強い者というと誰かな?」

「国王や大臣は間違いなく子爵より強いだろうが、伝手はないし」

「クルーズン伯爵は子爵よりは強いだろうけど、わざわざ対立しようとはしないだろうな」

「クルーズン司教なら助けてくれるかもね」


まああの御仁はおふせ次第で何とかしてくれそうな気はする。


ただ正直いうと、話を持って行くのが面倒で仕方ない。


前もそうだったがいつまでも本題に入れない、神や信仰にかこつけた遠まわしな言い方の応酬が続く、あの独特なコミュニケーションが必要だ。


しかも彼らは神のことなど何も知らない。実は単なる猫オタだ。




 それにクラープ町での営業を安堵してほしいというようなやや俗寄りの問題だと教会は手を出しにくい。


正直言えばあの司教は俗まみれとしか思えないのだが、それでも手を出しにくいことはわからないでもない。


特に具体的な問題が起こる前から抽象的に営業の安堵を頼むのはほとんど不可能に近いだろう。




 そうなるとやはり問題が起きる状況を作らないといけないのかもしれない。


つまりとりあえずクラープ町での行商や郵便を引き受けることだ。正直言って嫌なものだ。



 少なくとも家宰と話さないといけないし、またよくわからない会見になるのだろうが司教にも根回しをしておいた方がいい。


なお家宰相手はあいさつ程度でいいが、司教相手となるとまた金が必要になる。


商売の規模からいうと大した金額ではないのだが、なんとなく快く支出できないタイプの金だ。




 とりあえず気の進まない司教との面会は後回しにして、家宰に会ってみようかと思う。


彼の求める行商や郵便の復活にあたり、どの程度の便宜が図られ、どの程度のうちの権利の保障があるかを問う必要がある。


そこで役所のスミス氏経由で家宰にアポイントメントを取り、実際の会見に臨むことになった。





 家に帰ってクロを足の上にのせて話しかける。


「クロは無敵だからいいよね」

クロは何を言っているの? と言いたげな顔でこちらを見ている。


「だけどクロも野良のときは苦労したよね」

オス同士はよくケンカしているが、メス同士もたまにケンカしていることがある。やっぱり飼い猫は平和でいい。もっとも家に2匹以上いるとケンカになることもあるようだ。


「もう苦労はさせないからね」

首や背中あたりをかくと、ゴロゴロ音を鳴らす。これを聞くと、猫と確かに遊んだと思える。

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