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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
4章 13歳~ 領主との争いとクルーズン事業の伸長
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連鎖倒産の処理方法

 マルクからちょっと変わった話を聞いた。



 家宰のイグナシオが商業ギルドの会議に現れパストーリ氏とともにある提案をしたという。


領都系の商会の事業を引き受けをクラープ町土着系の商会に引き受けるようにとのことだ。




 領都系の商会は5つあったが、うちの行商事業を買い取るので借金をしていた上に、パラダ商会の保証をしたり掛け払いを認めていたりしたため、連鎖倒産してしまった。


そのごたごたには相変わらず巻き込まれているのだが、それとは別の話だ。


家宰としては商業が空白になることも、従業員やその家族が流出することも避けたいらしい。


そこで事業自体は黒字なので、土着系の商会に引き受けてほしいとのことだった。




 土着系の商会は面倒ではあるものの基本的には受け入れるようだ。ただいくつか問題がある。


黒字事業でありタダで買い取るわけにもいかない。だが土着系の商会も金がうなるほどにあるわけでもない。


もちろん債権を持っている領都の本家組は少しでも高く売りたい。そうは言っても彼らはもはや直接事業を営むほどの余裕はない。


土着組にしてみれば、状況を放置することもできる。領都組の店を使っていた客が新規客としてきたときに既存の店員だけでは対応しきれなくなるかもしれないが、待たせておけばいい。


それに比べると領都組は後になればなるほど事業は悪くなる。さっさと片付けてしまいたい。


そういうわけで少しは綱引きがあったようだが、うちの行商に比べると価格はすんなり決まった。


うちの行商と違い売却されるのは従来通りの商店で、資産などもあり評価がしやすいこともあった。



 ただ買い取るにしてもそれなりに資金が必要になる。


「家宰様は買い取れと簡単におっしゃいますが、私どもなかなか先立つものがありませんので……」

「それはギルドから融資など受けてもらえるといいのだが」


ここでパストーリ氏が株式会社方式の利点を説く。


「そこでシルヴェスタ氏が考えた株式という方法があります」

「それはどういうものだ」

「私はシルヴェスタ・ドナーティ合同商会の株を持っていますよ」


「はい、新たな出資方法です。商会が株式を発行して出資者が買い取ります。出資者は他人にそれを売ることもできます」

「つまり経営者の知らないうちに出資者が変わるということか」

「大丈夫なのか? それは」


「いちおう借金の証文も譲渡できますから、同じようなものです。それに出資者の経営への口出しもコントロールされるので良い点もあります」

「どんなふうにだ?」


「株主は株数に応じて取締役を出し、経営を任せます。また年に1度か2度または臨時の株主総会で商会の大きな方針を決めます。口出しはこれに限ります」

「株主総会ではどう決めるのだ?」


「いちおう議論はありますが、最終的には持ち株数の多数決です」

「なるほど」「合理的だ」


「そういうわけで、皆さんの商会も株式を発行してもらえれば、ギルドとして株を買うこともできるでしょうし、出資者も探しやすいですね」




 それをすんなりそれを受け入れる者も少なくないと思っていた。経営するときに余計な口出しをされたくないものだっているからだ。


ところが実は商会主などと言っても全部自分で決められるわけでもなく、結局は出資者やら取引先などがいろいろ口を出してきて、その言うことを聞かないといけないそうだ。


むしろいうことを出資者の言うことを聞かないといけない場合が整理されていいなどという者もいたとのことだ。




 マルクからそんな話を聞き、今後の方針を考える。正直なことを言えば資金はクラープ町よりクルーズン市に投資した方が将来性は高いように思う。


そうは言っても家宰のしようとしていることはあの無能領主とは違いわりと領のためになることだ。

シルヴェスタ・ドナーティ合同商会としても引き受けるべきことだろう。


「それでどういう対応にしますか?」

「まあ引き受けざるを得ないかと思う」

「どれくらいでしょうか」

「どこもそれほど突出せずに他と大体同じくらい引き受ける形じゃないかな」


たぶんそんなところに落ち着くと思う。俺が町の商売を全部せしめたいと思えば、全部引き受けることもできるが、特にそうしたいわけでもない。


資金があるがそれは大半をクルーズンに持って行けばいいと思う。ただこのままでも他の商会から出資を求められる可能性が高い気もする。


そうすると結局形は違っても俺がかなりの部分を持つことになりそうだ。





 もう一つ気になることがある。行商と郵便だ。街中の店舗の方は土着組の商会も今までの商売の延長上だから引き受けも容易だろう。


だが行商についてはかつて参入したところもあるが、さほど儲からないのでやめてしまっている。どうするのだろうか。


まして郵便となるとうち以外は無理やり取り上げた領都系の商会しか経験していない。


「ところで行商と郵便はどうなりますか?」

「それなんだよな。家宰は君に引き受けてほしいみたいだが、それが無理ならやはり我々が分担するようにとのことだ」



正直なことを言えば、こちらでしたいとは思う。それは元の従業員たちについても町の北部の客たちについても責任を取りたい。


ただあの領主がまた何をしてくるのかわからないのだ。あちらの出方をうかがってからでもいいような気がする。


それまでは負担でも町の各商会に分担してもらった方がいいかと思う。もっともドナーティはうちと合同商会なので、一部しか担わないとはいえ分担には入ることにはなる。


「ちょっとすぐには返答はできませんね」

「そう言うと思ったよ」


領主の出方もうかがった方がいいし、それを抑える方法も考えないといけない。


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