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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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幹部たちとパラダ騒動を振り返る

 ひさびさにクルーズンの本社でゆっくりしている。とはいえまだ幹部以外にはほとんど姿を見せていない。従業員はこづかいさんくらいに思っているかもしれない。


またクラープ町に戻らないといけないのだ。家宰のイグナシオだの商業ギルドのパストーリ氏だの役所のスミス氏がいろいろ話があるという。


そちらはいちおう俺に商売をしろということだから悪いことではないが、パラダらの本家筋もまだつまらないことを考えている節がある。




 パラダとの論争については全部記録を取っておいた。商業ギルドマスターのパストーリ氏などは大絶賛で、商人たちの教科書にしますなどと言っている。


そこまで言われると恥ずかしいが、それでもこちらでも話し合うための題材にしようと思う。


そういうわけで幹部に記録を渡して書き写してもらう。頭の中に入れるには書き写すのが一番だ。


自分のセリフが入っているので少し気恥しいところもあるのだけれど。





 そこでいろいろな問題について話し合う。


「いや、パラダもクレムも多大な借金があるのだから奴隷として叩き売ってしまえばいいじゃないか」


アランが当たり前のことのように言う。カミロやリアナも表情を見ると納得している。


だが俺は前世の近代的な人身の自由や奴隷廃止を知っているから、奴隷制度などないのが当たり前だと思っている。



 ところで日本の社畜がローマの比較的良い方の奴隷に比べて扱いがいいかどうか疑問だが、それでも制度上は一応自由がある。


心理的に追い詰められて逃げるのが難しいケースがもあるかもしれないが、弁護士に頼めば逃れることはできる。


日本でもブラックが当たり前だと思い込ませて奴隷に近い状態を作ろうとする経営者たちがいた。


少子化が進んでだんだん労働者のあたりまえの権利が主張しやすくなったが、そうでない頃は世間知を振りかざした愚か者たちが平気で横暴な経営者たちの肩を持っていた。


だがそういう横暴な企業は少子化になると立ち行かなくなっていった。奴隷に近い就業がまかり通るととにかく非効率な業務が増えるのだ。


そしてそれは少子化のように外部の状況が変わっても急には変えられない。結局は対応できなくなる。初めからそんなものはないものとして体制を整えた方がいいのだ。



 うちの幹部たちにも奴隷制があることを前提に動いてほしくはない。


例えば取引先と取引するとき、あるいは今回のように敵対的な相手がいるとき、何かトラブルがあったときは最終的に相手を奴隷に売り飛ばして解決することを前提に営業してほしくないのだ。


初めから相手を奴隷になどできないと思って、動いてほしい。


「うちはブラックをなくしていい運営体制ができたと思っている。奴隷など究極のブラックで、そんなものはあってはいけない。

パラダは確かにろくでもない人間だが、商売の失敗で人身の自由まで取り上げてもいけないと思う」


「そうかあ。まあ、そう言われるとそんな気もするな」

「まあ店主がそう言うならそうしましょう」


「だけど奴隷に売らないと債権の回収が少なくなりますよね」


今回は早めに債権を処理してしまったので奴隷分の配当を拒否しても損は200ハルクあまりだった。もし数千万の債権があれば損は数百万になりうる。


だがそれはそもそも主人を奴隷として売らないと借金が片付かないような商会に金を貸してはいけないのだ。


金を貸すのは相手の商売に見込みがあるからで、ブラックをしないと返せない金など貸してはいけない。


「だからそんな商会には貸してはいけないし、貸したらさっさと回収しないといけないんだ。

その見込みを誤ったら、それは見込み違いの自分の責任として損を引き受けるしかない。

おかしな手段で回収すればいいなんてせこいことを考えていると、どんどん見通しが甘くなる」


「だけど、長い付き合いの商会で、元はよかったのに後からまずくなったら、やはり貸さないといけないとか回収しきれない場面もあるんじゃないか?」


「そういう場面もあるとは思う。だがそれでも貸してはいけない商会にはやはり貸さない方がいいんだ。

貸すべきでないときに貸さないのは貸す側だけでなく、借りる側にとってもいいことなんだ。ダメな事業を続けることで傷が深くなることの方が多い」


マルコも助勢してくれる。

「たしかにそうだね。借りる方も借りてまでするべきことか、今のやり方を続けるべきなのか考え直した方がいい。

もしまだ見込みがあるなら、誰かほかの人が貸してくれる。誰も貸してくれないというのは見込みがないことがほとんどだ」


「なるほどな」


「とにかくうちは奴隷制は手段としては考えないことでやっていく。奴隷をつかえるなどと思っていると、商会がどんどん悪くなってしまうし、いずれは損をする」


どうも商人なので功利主義的に考えてしまう。功利でなく正義を考えるべきなのかどうかはわからない。どちらか一方に偏り過ぎるのもうまくないとは思う。


功利主義的な考え方が割と好きだが、あまりそれに寄りすぎても牽強付会になって現状を見誤ることになる気はする。


いや本当に損をするかはわからない。目先は損をするだろうが、遠い未来に奴隷を使っていた商会は動きが取れなくなる気がする。それは俺の勝手な思い込みかもしれない。


ただ日本でブラックで儲けて勝ち逃げしたのもいるが、あちこちで立ち行かなくなっているのを見ると、あながち間違っていないとは思う。


たぶんうちはみんなが幸せになる方向で仕事をしている。

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