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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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パラダの失敗の答え合わせ

 パラダの破綻で、経営者のパラダとクレムが自分の責任ではないと俺の譲渡に問題があったと糾弾したことへの反論が続く。


「パラダ商会の行商が売れなかった理由はそれだけではありません。

パラダ氏の行商では売れない物をどんどん切り捨てて売れる物ばかり大量に置いていました」


「売れないものを下げて、売れる物を置くなど当たり前ではないか」

クレムが主張する。

「そういえばモナプもそんなことを言っていたな」

今度はパラダだ。


「いえ、それではダメなのです。そのあまり売れないものを見にくるお客さんがいます。そしてそのお客さんはそれだけでなくついでに他の物も買っていきます。

だから一見売れてなさそうな物でもまったく意味がないとは限らないのです」


「そういえばフェリスさんのころのお店は何となく楽しいものがあってつい見に行きたくなったのよね」

「そうそう。パラダになってから、また同じものかという感じで足が遠のいてしまったわ」


もちろん限られたスペースの荷車だから売れない物をあまりたくさん置いておくわけにはいかない。


だがそれほど売れない物でも、客を呼び寄せる力のあるものなら置いておくべきなのだ。


そういう物を置いていたから、うちの行商は支持されてお客さんが集まってきたのだ。


「結局あまりにも目先のことにこだわりすぎて、短期的な利益はあるかもしれませんが、長い目で見た利益は見込めなくなります。

商売は目先だけ儲けられればいいわけではなく、長くお客さんと付き合っていけるかを考えないといけません」


パラダとクレムは押し黙っている。この話は決着がついたようなので次に進める。






「さらにひどいのがあの完全委託制の行商人です。商会が全部おぜん立てする代わりに、利益の7割を商会が取り、3割を行商人が取るものでした」


ふつうは中の利益の配分のことは客には漏らさないが、パラダらがこちらを攻撃してきているので仕方がない。


「何が問題なんだ?」


「売れなければ、行商人は何も得られずタダ働きです。商会の方は商品が戻ってくるので損はしません。売れない危険をぜんぶ行商人がかぶっているのです。

それなのに利益は7割も持って行きます。店に有利過ぎます」


「だがそれでもしたいというものいるんだからそれでいいだろう?」


「だいたい考えてみてください。10万くらいの金があれば、家畜と荷車を借りて、仕入れをして、自分で10割の利益を得られます。

実際私も10歳から自前で商売をしていました。これでは目先の利く商人は誰も応募してこないでしょう。初めからいまいち以下の行商人しか来ないようになっているのです」


「本当にパラダって欲が深いんだな」

「だけどそれで結局大損しているんだから自業自得ね」

「押し売りにおびえていたけど、そう言うことだったのね」

パラダがこちらにいちゃもんをつけた結果だが、どんどん内情がさらされてしまう。




 また別の話に移る。


「それからパラダ商会では遠隔地の行商を切り捨ててしまいました」

「儲からなければやめるのは仕方のないことだ」

「まあパラダ商会では確かに赤字だったようですが、うちでは黒字でした。利幅は少なかったですが」

「だがもっと儲かるところに経営資源をもっていくのが合理的だろう?」


「そうやって儲けしか目が入らないのはいかがなものでしょうか。もちろん赤字垂れ流しでいつまでも続けろとは言いません。

ただすぐに投げ出さずにしばらく続けてみることだって必要です。そんなに簡単に切り捨てていては人も育ちませんし、そもそも工夫をしようという気が起こらなくなります」


「そんな甘いことを言っていては商売に勝てん」

「実際に負けたのはそちらです」


きついと思うが、どうもあの手の安っぽい合理性を大声で主張する人間は嫌いだ。少しきつく言ってもいい。


「そういう『合理的な』やり方をする店が老舗という名に値するのでしょうか?」







「それから塾も切り捨ててしまいました」

「仕方ないだろ。儲からないのだから」


「あれがあったのでうちの店員はよそよりも読み書きソロバンがずっとできました。それでかなり商売がうまく行っていたはずです。

それに親御さんもうちを支持してくれました。目先以外のいろいろな利益があるのです」


「子どもが世話になっているし、まじめな商売していることがわかっているから、応援したくなるのよね」

外野からの応援が入る。






「うちでは軽食も出していました」

「それだ! それがなくて客が少なくなったんだ」

「もともと別事業で譲渡の範囲ではありませんでした」

完全にパラダの調査不足だ。


「あのお好み焼きをどうしても買いたくて。よそではあの味は出せないし」

また外野の応援が入る。しかしパラダの方は外野の応援が何もなくて、気が滅入るだろうと思う。


「あれはクルーズンの名店と時間をかけて開発したものですから自信があります。ですが、この町だって評判の店はあります。

そこに頼み込んで新しいものを作ってもよかったでしょう。パラダさん、あなたがたはそういう工夫を何もしていません」


パラダを非難するとともに、ちゃっかりうちの軽食の良さを宣伝する。




「まだ続けますか? いくらやってもあなた方が恥をかくだけだと思いますが」


しかしパラダらには実は選択肢がない。俺の責任にして無理筋の金をせしめるのをあきらめれば奴隷落ちが確定する。

ただあきらめなくても結局は敗色濃厚で、さんざん恥をかいた上で同じ結果になるだけだった。


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