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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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(パラダ)家財が売り払われる

 私はパラダ商会の番頭バンディ。とうとうお店がおしまいになった。


借金取りが押し寄せて、パラダ様はバリケードを築くように言う。それはもはや商人の仕事ではないと思う。


「開けろ」「バカヤロー」「金返せ」

店の前には借金取りの集団が居座っている。




 後からやくざ者のような大柄で頭をそり上げた目つきの悪い者がやって来て、他の債権者を脅している。

「おのれら、はした金でこんなところにくんな。うちの取り分が減るだろ」


ずいぶんと勝手な理屈だ。


「あれは本家のよく使うやくざ者だ」


その言を聞いて、パラダ本家のやり方に呆れかえる。そんな商会に勤めていたのかと情けなく思う。




 ヤクザ者は周りを威嚇して、うちの扉の前に陣取ると、ガンガンと叩きながら叫び始める。


「ほら、はよ、開けんかい! おのれら、金目のもん、全部出しおれ!」


パラダ様は震えあがり、絶対に開けるなと指示をする。確かにあんなものとは相対したくない。


だがここでずっと籠城を続けることもできるとは思えない。


「開けろ」「バカヤロー」「金返せ」




 ののしり言葉が続く中で少し変わった声が聞こえ始める。


よく見るとパストーリとスミスが自警団を引き連れてやってきている。そこで借金取りたちに何か話している。


ヤクザ者は相変わらず騒ぎ立てているが、妨害がひどいからか自警団に取り押さえられたようだ。


しばらくするとなぜか借金取りたちが三々五々帰っていく。そこでパストーリがこちらに呼び掛ける。


「今日は借金取りはもう来ないので、ここを開けて話をさせてくれ」


パラダ様は首を横に振るが、いつまでも籠城しているわけにはいかない。鍵を開けてパストーリとスミスと自警団を招き入れる。


「まあご苦労だったな」

「借金取りはどうなったのです?」

「今日は帰ってもらった。ただ7日後にもう一度集まる。それまでに資産を全部整理して、皆に公平に分配することでまとまった」


まあ妥当な落としどころだろう。ところが素っ頓狂な馬鹿が現れた。


「そんな勝手なことを……」

パラダ様が余計な口をさしはさむ。


「勝手とはどういうことだ?」

「本家に1ハルクでも多く返さねばならん」

「身内に多く返すなど、そんなえこひいきが許されると思っているのか!」

「とにかく本家に」

「くどい!」


パストーリに一喝されてパラダ様は委縮する。


「お前さんには逃亡されると困るので、自警団の監視下で軟禁されることになった」


そう言って適当な部屋に閉じ込めてしまった。




 翌日から近くの広場で店の残り物が競りにかけられることになった。町民も集まってきていい見世物だ。


ここのところうちの店には客が寄り付かなかったが、今日は大盛況だ。


売り物の残りばかりでなく、パラダ様の部屋の悪趣味な調度も競りにかけられる。案の定、二束三文で売られていく。




 家畜についてはシルヴェスタが全部買って行った。かわいそうなことをしてしまったねえなどと家畜に話しかけている。私より家畜の方が幸せなのではないかと思う。




 例の髪飾りも出品された。10数個まとめて1000ハルクからスタートするが誰も手を上げない。もはや使っているとけがをする呪いの髪飾りとして噂されている。


最後はやはりシルヴェスタが1000ハルクで持って行く。こんな売ることもできないものをどうするのだろうか。




 道具などもすべて売却される。従業員用の調度があまりにも古臭いので、町の皆から呆れた目で見られる。


しかも前にいた質の悪い行商人たちが汚してしまったのでさらにみすぼらしい。


案の定、大した値段はつかない。どこかの村に運ばれて納屋か何かで使われるのだろうか。




 パストーリからはパラダ商会としての債権がないかを聞かれる。大したものではないが、いくらか売掛金があり、それを申し出る。全部集めても数十万ほどだった。




 それから経営者の個人資産はすべて店の資産と一体ということで、パラダ様の家の方の財産もすべて差し押さえられ、競りにかけられた。


あちらもあちらで悪趣味だ。さらに妻も無駄な服や靴を大量に抱え込んでいた。服はひどく大きいサイズで、靴はタコでもあるまいしいつ履くのだろうと言うほどある。どれもこれも二束三文だ。



 なおクレムがパラダと共同経営者パートナーになっていたことも判明する。そこで彼にも無限の責任が降りかかってくる。


私はそんなことも知らされず、もはや幹部扱いから外されていたが、共同経営者にされなくて結果的にはよかった。


商会がさもしくなるとあんな程度のものが重用される。




 そういえばどこぞの組織では主人があまりに無能で、しかも威張り散らしているため、誰も部下が寄り付かなかったそうだ。


そこで馭者だけが主人に付き添い、ゴマをすっていたとかで、馭者が手代に取り上げられ、下手をすれば番頭になりそうだったという。



 クレムはまったく愚かなことをしたと思う。ただ私も商会が左前とはいえ、あと数年はびくともしないと思っていた。だからあれもそう思っていたのかもしれない。


もしかすると私と同じで途中で気が付いたのかもしれないが、そのときにはもうすでにパートナーから降りることができなかったのかもしれない。


いまとなってはどうでもいいことだが、偽りの出世で、偽りのパートナーとなり、そして破滅したとしか言えない。




 これに対しコンサルのモナプは見事に逃げ延びている。あれこそ破滅するべきものだと思う。


クレムと並んでお追従と弥縫策ばかり得意な無能だった。自分は安全なところにいる外様など、経営に入れるべきではなかった。


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