表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
264/646

パラダの破綻処理をギルドに頼む

 クルーズンの皆はどんどん商売を拡大しているのに、俺は相変わらずクラープ町の後始末ばかりだ。



 パラダの店がとうとうおしまいになったらしい。もはや営業しようにもできないようだ。


給料の遅配が続き、店員が逃げ出し、保証人付きで掛け払いを認めていた者たちも拒否したとか。


商品も借金の形にどんどん持っていかれる始末で、まったく商売になっていない。




 うちで買い取った債権は基本的にクルーズンの預金からほぼすべて回収した。


3000万余りを900万未満で買い取り2000万以上の利益となった。


もっともあぶく銭はよくないので、憂さ晴らしに楽しく飲み食いした後はブラック対策として法律家ギルドに寄付してしまった。


実は債権が1万だけ残っているが、それは別の目的でわざと残したものだ。




 パラダ商会には借金取りが押し寄せ、逆にパラダたちは扉を固く閉ざして立てこもり、騒ぎになっているとのことだ。


仕方がないので、見物がてらパラダの店に行ってみる。確かに借金取りが押し寄せている。


「金返せ!」

「払うもん払わんかい」

「必ず払うからと言ったらから待ってやったのに、結局払えんのかい」


そりゃ「必ず払う」は払えないフラグに決まっている。


借金取りたちは店から金目の物を持って行くつもりだろう。扉を叩いて開けるように要求している。


逆にパラダらは持って行かれまいと、バリケードを作って抗戦している。これではらちがあきそうにない。





 商業ギルドに向かい、パストーリ氏と話すことにする。


「パラダがとうとう倒産したようですね」

「そのようですね」

「ギルドの方は大丈夫ですか?」

「ええ、こちらはすっかり抵当を取ってあるので」


つまり金は貸しているが、店か何かの権利を質として持っているので、借金取りたちより先に取ることができる。


「フェリスさんはもうずいぶん前から危ないと言っていましたね」

「中にいた者がどんどん辞めてうちに来ていましたから情報は得ていました」

「そうでした。ずいぶん債権も買い集めていらしたが、回収できましたか?」

「ええ、ほぼ全部。ここに1万だけ債権があります」

「ほう、それは、それは」


パストーリ氏はこちらの意図が分かったのかにこやかだ。


「それであの立てこもりですが、いつまで続くのでしょうか?」

「まさか永久に続くわけでもないでしょう」


パラダとあのしょうもない番頭どもとパラダと一緒に儲けていた取引先が無駄な労力を払うのも楽しいと言えば楽しいが、他の店員や家畜が苦しむのもいかがなものかと思う。


「仲介に入って整理していただけませんか?」

「どうすればよろしいかな?」

「債権者で会議を開きましょう」

「会議とはどんな?」

「ええ、債権者で集まって、管財人を決め財産もすべて保全した上で、売却して処理します。そこで各自の債権に応じて、配当を出します」

「誰も抜け駆けできないようにするということでよろしいか?」

「ええ、そうです。それで例えば債務が5億あって、売却して5000万できたら、それぞれの債権者に1割ずつ配当します」

「それは公平でいいですね」

「ええ、ただ公平な管財人が必要なので、ギルドに動いていただけるとありがたいです」

「ええ、一肌脱ぎましょう。あんな争いを続けていても仕方ありません。ついでに役所にも入ってもらいましょう」



 そんなわけで、パストーリ氏が役所のスミス氏に声をかけて、会議の主催をしてくれることになった。


パストーリ氏とスミス氏で自警団を引き連れて、パラダ商会に向かう。借金取りに呼び掛けて、公平に分配するから、7日後の期日を決めて整理することを提案する。


7日だと債権者皆が集まるには少し時間が短いが、もうこのまま放置すると武力に訴えて危ないので仕方ないだろう。


剣が幅を利かせている時代というのはそういうもののようだ。しょせん早い者勝ちの世界で、少しは公平な分配になればそれでいい。


「すぐにもらわないと困る」

そういう者もいたが、このまま籠城への攻略を続けていてもらちが明かないことは借金取りたちが一番よくわかっていた。


しかもヤクザ者っぽい借金取りも混じっていて、それを抑えられる自警団への期待もあったようで、けっきょく借金取りの方ではパストーリ氏の提案が受け入れられた。



 パラダは家畜の扱いも悪いと聞いている。それは従業員の扱いが悪ければそんなものだろう。


うちの商会から移った家畜もいるだろう。パストーリ氏にこちらから少し金を出して飼葉をやってもらうことにした。


あんがい、立てこもりを解くまで、幹部たちは飲まず食わずか残りの売り物しか食べるものがなく、家畜の方が満腹になるかもしれない。




 ところでパラダたちの扱いが問題になった。借金取りたちが言うにはそのままだと逃亡しかねないというのだ。


それは、その通りだろう。仕方なく自警団の監視下で軟禁することになった。




 パストーリ氏は借金取りの説得を終えると籠城するパラダの説得に移った。


中で問答があったようだが、いつまでも籠城を続けるわけにもいかないようで、また借金取りたちが離れたこともあり、けっきょくはパラダ側はパストーリ氏とスミス氏を受け入れた。


これで破綻処理も進むだろう。




 今朝は行き掛けにクロが目を覚まして鎌首をもたげてこちらの方を見た。相手をしてやらなくてはならない。


とりあえずエサを用意する。まだ眠そうにしている。エサを取り出したころ、起き上がってきたが、エサの方には行かずすり寄ってきた。


これでは本当に相手をしないといけない。とはいえもう行かないといけない時間なのでいつもの抱っこ付きなでなでつき15分コースにするわけにはいかない。


エサの前に連れて行き、頭と背中としっぽの付け根をなでながら、3分ほど相手をしてやる。食いついたところで、立ち上がって家を出ることにする。


クロは少し恨めしそうだが、仕方ない。君のエサ代を稼いでいるのだよ。いや、それは神の出すもので間に合うかもしれない。


神は神で「あやつは大事なものとそうでないものの区別もつかんようだ」と言っている。いやいやごもっともな仰せだと思いますよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ