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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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2回目の訴訟準備

 パラダ商会の元従業員がブラックだったことに対して起こした裁判は、パラダの欠席もあって無事に勝訴した。


この結果があれば、訴えることに躊躇していた者たちもこぞって訴えるのではないかと思う。


そういうわけで訴える者を募ることにする。簡単に勝てるからと呼び掛けるのだ。これについてクルーズンにいる者は簡単だ。


訴訟だけにそれなりに面倒はあるので多少は躊躇する者もいるだろうが、簡単に勝って賠償も取れるし、恨みも晴らせるので、大半の者が訴訟に参加するだろう。


実際に声掛けしてみると、初めに訴えて勝訴した原告たちがぜひにするようにと言いまわっていた。


「首とか給料とか上が全部決めるものだと思っていたが、そうじゃないんだとわかったよ」

「まともな領地ではまともな法律が運用されているんだ」

「パラダにあいつらのやり方はひどいのだと認めさせないとクラープ町は今後もずっとあのひどい体制でいくことになっちゃう」



 そんなことも聞いて、また容易に勝てそうだというカルター代言人の話もあり、多数の者が訴訟に参加することになった。


しかもうちのいつものやり方で、前回の原告が手順をまとめていたので、かなりの部分はそれを踏襲すればいいことになった。


カルターからはずいぶんと褒められる。


「いや、お宅の商会の皆さんは本当にやりやすい。また一から説明せずに済んで、本当に助かりますよ」

「ありがとうございます。ただ法律については素人の者が作ったので、気になったところがあれば指摘してください。思わぬ見落としもあろうかと思います」

「はい、それは拝見するようにします」



 そんなわけで2回目の訴訟の人たちは1回目に比べずいぶん楽になったようだ。


こういうと2回目の者の方が得したようにも見えるが、よくよく見ると1回目の者たちは勇気を出してしかも手探りで自分で勉強しただけにずいぶん成長している気もする。


あのおどおどしていたオードルだって2回目の原告に説明している姿は何となく頼もしさを感じる。


あまり安易に損得を考えるのもいかがなものかと思う。






 順調なクルーズン在住者に比べてクラープ町在住の者はやりにくい。


クラープ町は他領なのでクルーズンの裁判所で受け付けてくれそうにないし、もし受け付けたとしても彼らがこちらで手続するにも負担が大きすぎる。


法律は専門でないところで、一人で考えていても仕方がないのでカルターに相談する。


「今回の結果を受けて、パラダの被害を受けた者には片っ端から訴訟させたいのですが、まだクラープ町にいる者も多くいます。彼らはどうしたらいいでしょうか?」


そう言うと、やはり少し難問のようでカルターは考えている。


「本当はその方々がこちらで訴えてくれるといいのですが、ただクルーズン住民でないとやはり裁判所が訴訟を取り上げるかどうかわかりませんね」

「来るだけならともかく、移住まで求めるとなると、ちょっと難しそうです。何十人もいますから」


「そうですね。他の方法となると……。あ、そうだ。またシルヴェスタさんの負担が増えますが、方法がないわけではありません」

「どういう方法ですか?」


「彼らと契約して債権を買い取って商会として訴えればよいのです。

クラープ町はシルヴェスタ・ドナーティ合同商会で、クルーズン市はシルヴェスタ商会ですよね。クルーズンの商会なら裁判所も受け付けるでしょう」


「はい、そうです。別の商会です」

「債権を買い取ればシルヴェスタ商会が当事者になります」

「なるほど……。ただ何かいろいろ面倒がありそうですね」


「ええ、そうなんですよ。裁判で負けるということはないと思いますが、向こうの口座にお金がなくて取りはぐれることはあり得ます。そうすると商会の損になってしまいます」


「ちょっとうまくないですね。移住できないとはいえ、取りはぐれのときにクルーズンで自分で訴えた者より多くもらえてしまうというのも困ります」


「ですから、買取の契約ときに条件を付けて、裁判に勝って、差し押さえもできて、回収出来たら支払うことにすればよいのです。もちろん支払いも後です」


「わかりました。それでひな形を作ってもらえますか」

「はい、わかりました」

「いろいろ詳しいことも教えてください。私が向こうで彼らに説明するようにしますから」

「よろしくお願いします。本当に楽ができます」




 実際の買取価格については差をつけることにする。



 まずは徒弟に行く前の10歳未満の子どもたちだ。


ひどい方法で首にされた子もいるので、それについて丹念に聞いて、妥当と思われる額で満額で債権を買い取る。


訴訟費用という裁判所に払う金は前回から見るとパラダ持ちになりそうだが、代言人の費用分はかかる。だが、あんな商会に営業を渡してしまった責任もあるので、満額にした。




 ただ10歳以上となって徒弟になった者たちについてはもう少し下げて8割で債権を買い取ることにする。


やはり俺に責任はあると思う。ただ彼ら自身で訴えるべきと思うところはある。


もちろんクラープ町にいるからクルーズンで訴えるのは難しい。だが自分で訴えたものと同じだけの金額を受け取るのはどうかと思う。


しかも俺には代言人の費用が掛かるのだ。8割でもかなり出している方だと思う。




 そんなわけで、カルター代言人に作ってもらったひな型と説明をもとに、クラープ町の元従業員にパラダに対する債権をクルーズンの俺の商会に譲渡するように呼び掛ける。


なおまだパラダ商会に残っている者もわずかにいるそうで、こちらに来ないかとも呼びかけた。




 さて呼びかけた中には俺がパラダに事業を譲渡したことについて多少恨みがましいことを言っていた者もいたが、大半は俺の提案を歓迎してくれた。


「お前もあの領主の文書を見ただろ。シルヴェスタさんだって仕方なかったんだ」

「子どもたちの送り迎えと塾だって儲からないのにやってくれているんだ。シルヴェスタさんはパラダと違ってちゃんと責任を取っている」


そんな風に擁護してくれる人も何人も出てくる。状況としては大勢はうちに譲渡することになりそうだ。ただ勢いで決めさせるのはよくない。やはり納得して決めてもらいたい。


「もちろん契約の文書だから十分に検討してから結んでくれればいい。1週間くらい考えてもらって構わない。人にも相談していい」


1週間の期限を決めて考えてもらう。結局1週間後には全員が契約に同意してくれた。全員というのはやはり横で説得してくれたらしい。


あくまで勝訴して回収出来たら支払うという内容だ。さらに訴訟費用分は引くことになっている。




 クルーズンの訴訟もまとまりつつあり、クラープ町の分と合わせて2000万余りの請求だ。


まだ1年もたっていないのに徒弟やそれになる前の子どもからあの悪徳商会はよくもここまでふんだくったものだと思う。

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