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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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85. パラダ商会番頭とのうんざりなやり取り

 クラープ町の後始末ばかりしているが、またパラダ商会の番頭バンディとの会見だ。


先日は、うちがパラダに引き渡した地域で月に250万の利益を上げていたと称していたことについて、バンディが疑念を表明してきた。


さんざん帳簿類を見せたが、それでは納得しない。そこでうちの南部の行商を抜き打ちでチェックするようにと提案したのだ。


「それで抜き打ちチェックの結果はいかがでしたか?」


だが、バンディは都合が悪いのか押し黙っている。


「どの行商でも5万や7万、あまりよくないところでも3万くらいの粗利は出しているはずです。ご覧いただけましたか?」

「知らん。そんなものは知らん」

「ええ、役所の方とご一緒にチェックされましたよね。役所の方から伺っております」


 実は役所のスミス氏と連絡を取っている。彼は彼でうちに北部の郵便をやれとしつこくて困るのだが、パラダと違いもっともな言い分なので仕方ないところはある。


北部のパラダの郵便は全く信用が置けず、役所も困っているからだ。


それはともかく彼の部下が抜き打ちで調べたうちの売り上げについて、いちいち値段を聞いてきた。いちおう他の人には知らせない約束で教える。これでおおよその利益がわかるはずだ。




 バンディとのやり取りに戻る。


「ああ、そうだったな。だがそんなに儲けていたかな?」

「はい。役所の方が控えたおおよその売り上げ数もこちらに控えております。そちらの仕入れと売価の表を使っても、こちらの表を使っても大差はないと思います。

こちらの表もお見せしましょうか? いま計算していただけると幸いです」

「ああ、そうだな」

「おおよそ、粗利で5万~7万。経費を引いて3万~5万は利益があります」

「そのようだな」

「パラダ商会に譲渡した地域では毎週の行商場所は15カ所。月に4回だとして、一回4万の利益として、それだけで240万の利益になります。

それ以外の月2回や月1回の行商も合わせれば250万を超えます」

「だが、それでうちに譲渡された地域の利益が250万だったことにはならない」


次から次にゴールポストを移動させる人だ。もう少し初めに言質を取っておけばよかった。


「それはうちの帳簿を見ていただいて判断すべきことです。それに疑いを示したので、それがもっともだという材料を提供したまでです。それにうちには証明責任はありません」

「なんで、その方に証明責任がないんだ?」


「うちが詐欺的に騙してそちらに譲渡を持ち掛けたというならともかく、勝手にそちらから譲渡を迫ってきたのです。

そこでうちの利益を提示して、それを参考に譲渡価格が決まりました。それをそちらが受け入れて、購入されたのです。これでなんでうちに証明責任がありましょう?」


「その利益が高すぎたから、譲渡価格が高すぎになったのだ。だからこちらの商売がうまくいかないのだ」


「いえ、その理屈はおかしいでしょう。3億借りたとして利子5%で年に1500万。お宅に払えない利子ではないでしょう。あとは行商をそのままの規模で続けていればそれなりに利益が出ます」


そのままの規模というのが全然そうでなくずっと縮小していることは知っているのだが、少し嫌味を言いたい気分だった。


「わかった」

「お判りいただけましたか。ありがとうございます。それでは250万の利益が出ていたことは確認されたということでよいですね」

「いや、それは納得していないが、堂々巡りなので、別の話をしよう」


また都合が悪くなるとこれだ。とはいえ、堂々巡りが続くとこちらもつらいので話を変えるのには賛成だ。とはいえくぎは刺しておく。


「いまのやり取りは全部記録しておりますから、もし次回があるなら、ここからスタートすることにしましょう。記録については今すぐにご確認して、サインをいただきたい」

「なんでそんなものしなきゃいけないんだ?」

「次回のお話をスムーズにするためです」


同席していた役人のウドフィが退屈してきたのか介入する。

「次回がスムーズになるなら、そうすればいいんじゃないか?」


思い付きらしいが、こちらにとってはありがたい。バンディはウドフィには逆らえないらしく、しぶしぶ確認してサインする。




 そこでバンディの次の攻撃はうちが十分な引継ぎをしなかったからうまくいかないというものだった。


「そちらからの引継ぎが十分でなかったから、商売がうまくいっていないのだ」


これについては実はマニュアル類は見せていない。それは商売上の秘密だ。だが、商売が動くだけの引継ぎはしている。


しかもパラダは「小僧さんができたことを、あたしらができないとでも、はっはっは」と言ってくれたのだ。それは前も言ってやってウドフィに止められたので、別の手で攻める。


「商売の方法については何度も説明をいたしました」

「そんなものは知らん」

「こちらの日時にこちらの場所で説明いたしました」

「知らんものは知らん」

「ご存じないというのは間違いございませんか?」

「ああ、間違いない」

「説明したことについてはこちらの記録にありますし、だいいち第3者の立ち合いをいただいております」


そういうとさすがにまずいと思ったらしい。そういえば番頭連中は引継ぎに熱心でなかった。


「わたしは知らんかった」

「ご存じない方が、この場所に出てきているというわけですか。私もそうですが、ウドフィ様の貴重な時間をわざわざ使って、何も把握できていない人の相手ですか?」


ウドフィはバカだから、この手のおだてに簡単に乗る。そうでないとしても、こちらに逆らいにくくはなる。


「うむ。シルヴェスタの言うとおりだな。わしも忙しい。あやふやな話はやめてもらえまいか?」


案の定バカだった。おかげで助かるが。動きがインベーダーのように予測がつきやすい。その言い方もオッサンぽいな。バンディは泡を食っている。


「さらに文書や冊子にしてお渡ししました」

「そんなものは受け取っていない!」

「いえ、こちらはパラダ商会の番頭さんから受け取りのサインをいただいております。目録はこの通りです。彼らが捨てていなければ商会のどこかにあるはずですから探させてください」


バンディは完全に顔をつぶされて、不愉快そうにしている。


「それでは、こちらは商売の引継ぎに関して十分な説明をしたということでようございますね?」

「まあ、内容は知らんがな」

「とにかく、量としては十分なものを提供しました。どの程度の内容が伝わったかについては受け取る側にも責任があります」


もうみんなうんざりして、それくらいで会談は終わった。




 本当にくだらないやり取りだった。家に帰るとクロが餌を食べている。いやご飯をお召し上がりになられている。


はやく触りたいのだが、触ると食べるのをやめてしまうことがある。


そうしてご飯が古くなるとまた食べなくなる。俺は食べるまで放っておくことが多いのだが、あの神が甘やかしてまた新しいのを出したりする。


あまりぜいたくは覚えさせないでほしいが、神が出すなら放っておいてもいい気もする。




 だが逆に食べている間なでて欲しがることもあるのだ。餌を欲しいと言って出させても食べない。ところが背中をなでると食べ始めるのだ。


長い付き合いだがお猫様の考えることは全くわからない。猫に何か一貫性があると思う方が間違いなのだろう。

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