表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
239/638

(パラダ)迷惑な行商人探しとまずい処理

 私はパラダ商会の番頭バンディ。シルヴェスタから引き継いだ行商の統括をしている。

役所のスミスからの呼び出しは連日だ。


「いいか。行商先でいやらしい声掛けをしている者を処分しなかったら調査に入るからな」


調査に入られたら、お店は営業できないし、私もパラダ様から怒られる。それは何としても阻止しなければならない。


さっそく行商人を集めて、だれか広場でいやらしいまねをしている行商人はいないかと問うてみた。


「そういえば、あいつが少女をいやらしい目で見ていたな」

「そうだ。あいつだ。見るからにいやらしい目をしている」



意外なことに名指しされたのはオードルというシルヴェスタから引き継いだ行商人だった。正直な話、後から雇ったものの方がなんとなくやんちゃで危ない者が多い。


名指しされた者を尋問すると少し物言いがおどおどしている。



「いや、ボクはそんなことはしていない」

「いやらしい目で見ていただろ!」

「ああ、遠くから見ていた」


糾弾するのは後から雇われた者ばかりだ。とにかく、犯人が見つかったので一安心し、その者を首にして一件落着とする。これで役所にも言い訳できる。



 だが当該の者と一緒に商売をしていた2人の者からまた文句が出てきた。


「彼はそんなことはしていない」

「ではなぜ糾弾されるのだ」

「たぶんあのつるし上げた奴らが本当は迷惑行為をしているんだ。犯人をでっちあげるのに、気弱なオードルを選んだんだろう」

「あれだけみなが、奴がやったと言っているのだ。間違はあるまい」

「こんなものは多数決で決まることじゃない。証拠はあるのか?」

「だまれだまれ。もう済んだことだ。お前たちもかばい立てすると首にするぞ」


そう言うと、2人は目を合わせてうなづく。


「わかりました。もう辞めます。すぐに精算してください」


うやむやに適当に金を与えて追い出そうとするが、精算書を書けという。仕方なく係りの者に行って書かせて、金も払わせた。


そして2人は「ふん」とだけ言って出て行った。




 これで終わったと思ったらまだ続きがあった。また行商の広場の管理人からなじられたのだ。


「オードル(あの子)のことは知っているが、そんなことをする子ではない」

「だが、うちの行商人のみなが、あれがしていると言っていたのだ」

「本当に調べたのか? 最近はお前さんの店の行商人の質は悪い。何か示し合わせてうそをついているのではないのか?」

「うちの行商人を疑うのか?」

「とにかく、あの子がしたというなら、したという証拠を持ってきてくれ。それまではうちの広場への立ち入りは許さん」


また行商先が減ってしまった。




 どうも最近は商売も振るわず、休憩室をまた盗み聞きする。最近はシルヴェスタから引き継いだ行商人はほとんどおらず、新規の行商人ばかりだ。


どうもそれに連れて休憩室が荒れている気がする。備品が壊れたり、ゴミが放置されたり、汚れが目立つようになってきた。


都度都度、掃除するように言い渡すが、返事だけでしている気配がない。


「バンディの馬鹿。簡単に信じ込んだな」

「ああ、まったく。あいつにしてみたら誰でもいいから犯人と呼べる者が見つかればよかったんだろうな」

「あれで番頭だなんて言っているんだから、楽な商売だよな」


あのおどおどした行商人を糾弾していた連中だ。なんとなくやんちゃな感じがしていたが、あまりにもひどい言い草だ。


上下関係ということを何もわかっていない。さっそく休憩室に突入する。


「いまの話はどういうことだ?」


さすがにまずいという顔で見る。


「何のことかな?」

「私のことを馬鹿だとか、楽な商売だとかさんざん言ってくれたな」

「いや、そんなことは言っていないが……」

「だまれ! 全部聞いていたんだ。お前たちは首だ!」


そう通告すると、連中はつかみかかってくる。


「俺たちが首だって?」

「ああ、そうだ。さっさと出ていけ」


そういうと、連中は私をボコボコと殴り始めた。


「誰を首にするって?」


だがここで引き下がるわけにはいかない。大声を張り上げて、助けを呼ぶ。さすがに連中も分が悪いと思ったのか逃げて行ってしまった。


私の方は、ひどいけがだ。こぶはできるし、右目の上の方も腫れている。唇も中の方で切れている。けっこうな痛みだ。




 その翌日、私がまだ痛みに耐えているというのに、私が殴られたことを聞いた行商人の一部が、詰め寄ってきた。


「やっぱりオードルは無実だったではないか」

「無実の人間を首にしたとわかったんだ。さっさと謝罪しないのか?」


私はこれだけけがをしているのだから、いたわるのが当然なのに、この者たちはどういうつもりだろう。


だいたいあのオードルとかいう者だって、疑われるような態度を取っていたことが悪いのだ。


「だまれ! あの者だって無実かどうかわからん」

「老舗のパラダ商会の番頭というのは間違いも認められないのか」

「まったく子ども以下だな」

「えーい、お前たちも首だ! さっさと出ていけ」

「言われなくても出て行ってやるさ。サッサと精算しろ」

「首なのに給料が出ると思うな。ぐずぐずしているとつまみだしてやるからさっさと出ていけ!」


詰め寄ってきた者たちは、しばらく押し問答していたが、こちらの用心棒がやってくると、形勢の悪さを見たのか逃げて行った。


ケガはするは、因縁はつけられるはで、やっていられない。どうして私がこんな目に合わなければならないのだ?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ