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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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80. (パラダ)押し売りと下品な商人と仕入れ

 私はパラダ商会の番頭バンディ。シルヴェスタから引き継いだ行商の統括をしている。


また役所のスミスから呼び出しだ。パラダ様もクレムも行かないし、なんで私ばかり行かなくてはならないんだ?


「今度は何ですか?」

「何だとは何だ?」

「ではどう言ったご用件でしょうか?」

「また押し売りだ。いったいお前の店はどうなっているんだ!」


なんでも例の3人組が前に押し売りに行った家に、意趣返しに行ったらしい。1軒は自警団に通報して、連中は逃げたらしいが、別の家はまた高額の物を買わされたそうだ。


それ以外にも何軒か押し売りの被害を受けたとの報告を受けている。


そちらもずいぶん高い金で売り付けていたり、うちで用意したものでないものを売りつけていたりで、その分も商会持ちで補償せざるを得ない。


「パラダ商会って、あんたたちは犯罪者よ!」

「もう2度と来るな!」

「私はもちろん、親類縁者友人みんなにパラダの店では買わないように言うからね!」


押し売りに会った家の家人の声がきつい。それは仕方ないのだが。さらに地域の自警団からもきつい注文が入る。


「さすがにお宅の行商人がここらをうろつくのはしばらく控えてくれ」


うちが領主様の覚えがめでたいと言っても、こんな話はみっともなくて領主様のところには上げられないし、自警団に陰に日向に嫌がらせされたら商売になるはずもない。


しばらくはこの地域には入れそうにない。




 結局押し売りの3人は帰ってくることはなかった。


さすがに荷車と家畜は足がつくと思ったのか、飲食店に放置されていたが、こちらで貸し出したかばんや商品はすべて持ち去られてしまった。


彼らの売り上げも本来なら7割はうちのものだが、それももちろん返ってきそうにはない。


直接の損害はもちろん、落ちてしまった評判の方がひどい。


関係各所に散々頭を下げて、返金にも応じて、消耗して果てた。目の下にはクマができているし、最近は食欲もわかない。




 さすがに完全委託制の商人については見直さなければならない。質の悪そうな商人をあぶりだすことにする。


ここで頼りになったのはわずかに残っていたシルヴェスタから引き継いだ商人だった。


押し売りをしている商人の名を根拠とともに挙げたので、その連中は契約打ち切りにすることができた。


そうしてようやく落ち着いたかと思ったら、また役所のスミスからの呼び出しが来る。今度は一体何なんだ?



「お前の店は一体どうなっているんだ!」

「はあ、何かありましたでしょうか?」

「ろくに行商人の管理もできないのか?」

「質の悪いものは首にしましたが……」

「まだ首が足りないんじゃないか? 広場の行商でしつこく声をかけられた、体を触られた、猥談をされたなどの苦情が絶えん」


商売なのだから多少の声掛けはあっても仕方があるまい。体を触るのもスキンシップだし、猥談というのも冗談の範囲だろう


「まあ少し行き過ぎはあったかもしれませんが、コミュニケーションの範囲ではございませんか?」


「だまれ! 連日のように苦情が来ているのだ。だいたいな、シルヴェスタが商売していたときはこんな苦情は一軒もなかったのだ! 

それが最近では毎日苦情が寄せられている。なんで役所がこんな対応をしなくてはならんのだ?」


すごい剣幕だ。また手入れを入れられかねない。ここは引き取って、穏便に済ますよりほかあるまい。


「わかりました。調査を行い、悪質なものについては処分をします」


商会に戻ると、さっそく行商人を集めて、客引きや応対について訓示するとともに、悪質なものの通報を促した。


シルヴェスタから引き継いだ商人はもうさほど残っていないが、心底嫌そうにしている。


また休憩室を盗み聞きする


「後から入った行商人たち、質が悪いよな」

「ああ、まったくだ。商人なんて呼ぶのもおこがましい」

「なんかスケベっぽいのがいるよな。しかも露骨にそれが出ている」

「声かけているのに中年オヤジもいるだろ。あんなのに声かけられて、若い女が喜ぶかっつーの」

「なんでこの商会はまっとうな商売ができないんだろうな……」

「もう潮時だな」

「ああ、シルヴェスタさんはいつ来てもいいと言っていたが、俺は家の都合でここから離れられないから、他の仕事につくよ」


その日のうちにまた辞めていった。もうシルヴェスタから引き継いだ行商人はほとんどいないのではないかと思う。



 訓示したのちは特に通報などはなかった。おそらくこれで片付いたのだろう。そう思っていた。


ところがしばらくして一部の広場の管理者からもう行商に使うなとのお達しが来る。なぜかと聞いてみると、幼い少女に色目を使った中年がいたらしい。


彼らが言うには、うちの行商人だ。そこで管理する組で話し合い、いくらかはうちの行商を使いたいものもいたらしいが、圧倒的多数はもう来てほしくないとなったそうだ。


無理に行けば自警団に追い払われかねない。仕方なくその広場は行商場所から外すことになった。




 だんだんと売れ行きが悪くなったり、行商場所が少なくなったりすれば、とうぜん仕入れも減らさなければならない。


もちろん仕入れを減らせば嫌な顔をされる。とはいえ嫌な顔をされても、余らせて腐らせるよりはいいと、仕入れの削減を断行していった。


ところがそうすると、今度は仕入れ先から嫌がらせをされる。


以前からずっとずっとかけ払い、つまり月末まとめの後払いで買ってきたのに、都度都度の清算が求められるようになる。現金を持ち歩かなければならないし、何かと不便だ。


こちらから現金精算にするから安くしろと申し出るならともかく、むこうから現金以外受け付けないと言われるのは潰れかけと認識されているようなものだ。


「何とかかけ払いに戻してもらえないか?」

「仕入れを絞っているような店では怖くてね」

「そんな。うちはクラープ町の老舗、ご領主様の御用達だぞ」

「とんでもない行商人を送り出して広場から追放されているらしいね。それは処分したのか?」


誰がしたかもわからず、処分などできようはずもない。これ以上は言い返せず、泣く泣く都度払いを受け入れた。

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