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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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(パラダ)郵便事業譲渡を決める

 私はパラダ商会の番頭バンディ。シルヴェスタから引き継いだ行商の統括をしている。


 最近役所から呼び出されることが増えた。役所はおおむねうちの商会に好意的だ。なぜかと言えばうちのパラダ様は領主様の取り巻きの取り巻きの分家筋だからだ。


ただ役所の方にも派閥がある。もちろん主流派はご領主様につながる領都組である。だがこれに反対する反主流派の地元クラープ町組もいる。


最後は領主様が解決するので主流派の方が強いが、問題なのは反主流派の方が人数は多いのだ。そこで細かい点でチクチクとついてくる。



 いま目の前にいるのも反主流派だ。スミスと言って、50代で顔は四角、体つきも何か四角っぽく、性格も四角四面で柔軟性がない。


この者が何かとうちの商会のすることに文句をつけてくるのだ。何かあると役所に呼び出してくる。パラダ様は面倒がって行こうとはしない。


クレムも何か忙しいと称していくことはない。そこで番頭である私に回ってくる。なんとも嫌な仕事だ。



「さて、その方の郵便はどうなっているのだ?」

「はて、どうと申しますと?」

「郵便が届かないという苦情が多すぎるのだ」

「私どもは精神誠意、配達に勤めております」

「そんな中身のない言葉はどうでもよい。どれだけの事故を把握しているのだ?」

「届いていないというのは確かなのでございましょうか。いえ、届いていないと言って賠償を取るようなケースもあるようですから」

「役所からの手紙も相当な数になる。それもずいぶんと届いていない。役所を疑うのか?」


これはまずい。さすがに役所が詐欺の主体とは言えない。ここは話を変えなくてはなるまい。


「ご存じの通り郵便については、一定のミスは許容していただかないと……」

「役所が南部のシルヴェスタ・ドナーティ商会に依頼した配達で事故は一件も起こっていない。だが、北部の方は数十件だ。いったいこれはどうなっているのだ?」


そこまで違いがあるのかと、頭が痛くなる。ただ本当に何も知らないのだ。いろいろ聞かれるがまともに答えられない。


スミスは呆れた様子で、もういいとばかりにこちらに言い渡す。


「事業を改善して、改善結果の報告書を1か月以内に提出するように」


とりあえず1か月以内に善後策を申し述べなくてはならなくなった。





 しかたなくパラダ様に郵便事業の立て直しについて申し上げる。


「実はうちの管轄の郵便について事故が多く起こっております」

「なんでそんなに事故が起こっているのだ?」

「そ、それが……、もう担当者がおらず、まともに管理できていないようでございます」

「『ようでございます』とは何だ! そもそもお前が管理者ではないのか?」

「そ、それが……、最近は人の出入りがあまりにも多すぎて、もはや収拾がついておりません」

「まったく何をしているのだ!」

「シルヴェスタから引き継いだ事業の管理はバンディ様のご担当でしたな」


筆頭番頭になったクレムが口をさしはさむ。いや元々はお前が手代としてやることになっていたのではないか?


しかもクレムの導入した制度でシルヴェスタから引き継いだ店員どもがいなくなったというのに。


そんなことを言える雰囲気ではなく、とりあえず目先の問題に集中する。


「それで、実は役所のスミスから郵便事業の改善について指導を受けております。1か月以内に事業を改善して報告書を出すようにとのことです。

もちろん最終的にはご領主様か町長が止めるかもしれませんが、それ以前に営業所に検査などが入ることもあり得ます」


「まったく面倒な。どうにかならんのか?」


「郵便だけシルヴェスタに譲渡することはできませんか?」

コンサルのモナプが提案する。


「おう、それはいいですな」

クレムも同意する。それに動かされたのか、パラダ様も乗り気になる。

「向こうに譲渡すればその代金も受け取れるだろうからな」


そんな議論の末に、クレムとモナプが譲渡金額を話し合って決めてきた。1億だそうだ。いったいどのように算定したのだろう?


行商も含めた事業全体を3億で譲り受けて、郵便だけで1億が適当とは思えないが、私は全く話し合いには呼ばれない。


だが、向こうに話を持って行くのは私だそうだ。譲渡の詳細が決まり、向こうのジラルドに面会を申し入れる。


「今回は郵便事業の譲渡についての話し合いで参った」

「はあ。そういう重大なことはあらかじめお知らせいただけるとこちらも準備ができるのですが」

「まあ、それはよい。ともかく北部のパラダ商会の担当分の郵便事業をその方に譲ることにした。譲渡代金は1億だ。早々に契約を進めるように」

「いえ、これは重大な契約ですから、当方の取締役会で審議し、その当否を決定する必要があります。今しばらくお待ちいただくようお願いいたします」

「うむ、わかった。良い返事を期待しておるぞ」


そういって帰ってきたが、その後はジラルドからはなしのつぶてだ。何度も問い合わせるが、まだ決まっていないとの返事ばかりだ。


その間も役所への報告の時期も来る。シルヴェスタへの譲渡を模索中であることも含めて、通り一遍の報告書を送っておいたが、何度も問い合わせが来る。


そしてとうとう2か月ほどして、ジラルドから取締役会で否決されたため、譲渡は受けられないとの返事が来た。

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