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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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クラープ町のいろいろ後始末

 装飾品の問屋街に行く。実は装飾品問屋街はうちのクルーズンの本部からさほど遠くない。


初めて装飾品を買ったのは、ブドウを売りに行ったブリュール氏の店の手代さんの妹のブリジットからだった。ブリジットの店を訪ねる。


「こんにちは、ブリジットさんはいますか?」


すぐに呼び出してもらえた。


「こんにちは、元気してたかい?」

「はい。前に仕入れを減らしましたが、また少し増やしてもらおうかと」

「こちらはありがたいけど、何かあったのかい?」


「ええ、前にもお話した通り、クラープ町で広く行商をしていたのですが、領主に北側の営業を取り上げられてしまったのです。

それで減らしたんですが、数か月してみると取り上げられた先でも装飾品を売っていたんです。それがこれです」


「げっ! なんだ、こりゃ? 本当に売りものなの?」

「え、ええ。実際に売り場でケースに入れて売っていました」


ブリジットは他の職人を呼んで、持ってきた髪飾りについてみんなで一緒にやっつけていた。

デザインだけでなく、作り自体についての批評がさんざんだ。


「ひでえなあ。徒弟の子の初めて作りましたってレベルだぞ」

「エッジの処理がしてないじゃないか。こりゃケガするぞ」

「ここの接点弱いなあ。何かの拍子で外れそう」

「こんなに厚ぼったくくっつけてあるのに、なんかぐらぐらしていて、全体的なデザインがないんだよな」


せっかくなのでメモする。あとで何かのときに役に立つかもしれない。一通りの批評が終わったようなので、話を元に戻すことにする。


「それで町の北部がこの調子ですから、うちは北部には行商に行けませんが、中心部に店があるので増やした分はそこで売ろうかと思っています」

「ああ、そうするといい。こんな髪飾り付けたら呪いがかかりかねない」


呪いって……、まあでもケガしかねない品じゃ仕方ないか。


こちらの職人たちは見ていて、気持ちがいい。若い職人たちがお互いに作品を批評し合っている。けっこうずけずけと物を言っているが、素直に受け入れている。


「そこちょっとどうにかならないかな?」

「そうなんだよな。前からちょっと悩んでいるんだ」

「こっちの方で支えたらどうだ」

「それも考えたんが、ちょっとバランスが悪くなるんだよ」

「あれ? なんか新しい素材がなかったっけ?」

「どんな素材だ?」

「前より軽くて結構強く接着できるらしい」

「それ使えばうまくいくかもしれないな」


いつまでも議論が続く。考えたら、うちの幹部たちもそういう感じかもしれない。

とりあえず、マルクの店で売る分の装飾品を仕入れて持って行くことにする。




 そしてクラープ町に戻り、ジラルドと話し合う。


「どう? 北部の行商人の方は?」

「かなりひどいみたいですね。何人か私のところに来たので、全員受け入れました」

「ああ、そうしてくれ。お金は余裕があるから数か月くらいなら赤字になっても構わない。

ただ全く仕事がないと本人たちも気が滅入るから、それは何かさせておいてほしい」

「わかりました」

「何か仕事はありそうか?」

「北部の行商がうまくないようで中心部の店に客が戻ってきています。ドナーティさんの店も前よりずいぶん繁盛して、人が必要ですよ」

「そんなに忙しいなら一時的に新店を出してもいいかもな」

「あ、なるほど。マルクさんと話してみます」

「北部の行商は手出しできないけれど、中心部に店を出すのは別に構わないからな」

「そうですね」

「あとクルーズンの方は人が足りないから、来れそうなものはどんどん送ってくれ」

「引っ越しとなると大変なんですよね」


ジラルドには苦労を掛けてしまっているから申し訳ない。


「寮があれば少しは楽になるか?」

「そうですね。家探しも負担なんで、あった方がいいですね」

そんな風にしてジラルドと北方対策を話し合う。



 さっそくギフトで帰る。さっきの話題を幹部間で話し合いたいがまずは猫もふだ。一通り撫でまわしてから、本部に赴く。


ジラルドとの話し合いの結果を話して、寮を用意することにする。


だが一から作るとなると、金もかかるし時間もかかる。幸か不幸か少し古めの長屋がある。


長屋はやや古びていて、あまり人気がなく、2割くらいしか埋まっていない。最近ではやはりきれいなところの方がいいようだ。


そんな感じの古びた長屋を5軒まとめて買ってしまう。かなりの格安で10室あるのに400万などだ。もちろんボロボロではあるが。ただこのままだと人が入らず赤字垂れ流しになる。


日本だと立ち退き料が高いのでやりにくいが、こちらだとそこまででもない。とはいえ、立ち退かせるのはやはり気の毒なので、30万ほどの迷惑料を払って、引っ越し代もこちらで持って、そのうちの1軒に集約してしまう。


集約したところも家賃は大した額ではないが、ほぼ満室なのでペイしている。まあそちらはさほど興味がない。


重要なのは残りの4軒をきれいに改装しなおして、うちの独身寮にすることだ。




 そうして受け入れ態勢が整ったので、クラープ町から来れる人を呼び寄せる。いろいろな事情でクラープ町北部に残った人たちだ。その人の言葉が痛い。


「育った町だったから残ったけれど、こんなことになるなら初めからフェリスさんについて行けばよかった」


故郷に愛着を持つ者に残ったことを後悔させるなどどんなひどい商会だと思う。


俺が抵抗しきれなかったから悪いのだが、早急に潰して取り戻して、彼らも帰してやりたい。そんな決意をする。



 ジラルドの方は、マルクと話し合って、中心部に出店したそうだ。パラダ自体が評判を落としていて、パラダの行商だけでなく、店舗の方も客足が引いているとのことだ。


何か後始末ばかりしているが、ゴミはさっさと片付けてしまいたい。



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