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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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(パラダ)クレムを登用する

前に出ていたトラブルメーカーが再登場です。前の方も修正して名前を出しておきました。

 私はパラダ商会の番頭バンディ。シルヴェスタから引き継いだ行商の統括をしている。


 シルヴェスタから引き継いだ店員は口答えばかりで使えない者ばかりだと思っていたが、そうでない者もいることが分かった。


しかもそういう者に限って倉庫番などの閑職に回されている。まったくあの商会の人材登用はどうなっているのだ。


「ああ、あなた様があのパラダ商会の番頭様でいらっしゃいますか?」

「君は?」

「私の名はクレム。シルヴェスタには疎んぜられて、この有様です。パラダ様は人を見る目があると伺っています。どうかお取次ぎを」

「なんでシルヴェスタに疎んぜられたいたんだ?」

「私の提言がいちいち煙たかったのでございましょう」

「何を言ったのだ?」


「ご領主様に協調するように。信賞必罰を徹底して、売り上げを上げたものを昇給して、上げない者の給料を減らすように。

売上の上がらない行商先を切り捨てるように。売れる商品を選択して集中的に持って行くように。すべて数字で把握することでごまかしを許さないなどでございます。

賢明なる番頭様ならこの意義がお分かりいただけると存じます」


なるほど、この者は知恵者だ。まったくなぜこのような知恵者をシルヴェスタは活用できないのか。さっそくクレムを倉庫番から、行商に移す。


「私ですが、バンディ様の下で、行商人たちの監督をしたいと思います」


監督者など必要ないかと思っていたが、行商人どもがいろいろとうるさいので間にいる者がいると便利だ。せっかくなのでクレムを監督につける。確かにこうするといろいろ楽だ。クレムはこちらの言うことにいちいち反論してこない。


「次はこういうことをしようかと思うのだが」

「大変に素晴らしく思います。さすがは領都の大商会のパラダ家の番頭様です」

「ならばそれを実行しておいてくれ」


このように指示しておくと、後はクレムが実行しておいてくれる。行商人どもがいちいち文句を言ってくるのを聞く必要はない。


あとは経営のことについて大所高所から判断すればよい。この分担はなかなかよい。




 そうしているとパラダ様からまた行商部門の経営について聞かれた。


「どうだ? 行商部門は」

「はい。クレムという男がおりまして、シルヴェスタには冷遇されていたようですが、これが使ってみるとなかなか使い勝手がいい。いまはクレムに行商人どもをまとめさせております」

「しょせんシルヴェスタはお子様か。人を見る目がないな」

「まったくもって、その通りでございます」

「一度会っておいた方がいいかな」

「はい、それではお連れするようにいたします」

「頼んだぞ」



 そういうわけで次の面会のときにはクレムをパラダ様の部屋に連れて行った。


「こちらにお連れしたのがクレムです」

「クレムでございます」

「こちらがパラダ様だ」

「お初にお目にかかります。大商会の店主様にお会いでき光栄に存じます」

「そう固くならずともよい」

「パラダ商会と言えば領都の老舗で、この町でも最も古い商会の一つと伺っております」

「まあな。だがわしは新しい風を入れたいとも思っているのだ」

「さすがは大商会を率いる方だけあって、先進的なお考えで」

「まあな。そうでないと商会は動かせん」

「このクレム。いささかお役に立てれば幸いに存じます」

「ああ、期待しているぞ」

「ありがたき幸せ」


クレムは正式に手代となり、パラダ商会で幹部コースを進むことになった。これからも私の部下として邁進してほしい。


 クレムはよくやっているようだ。行商人どもに数値目標を示して、それに向かって競争させる。競争に勝ったものにはインセンティブをだし、負けたものはペイを減らして挽回を図らせる。


まさに信賞必罰が徹底している。おかげで前に流行った高級パンも団子入りの飲料もチーズ入りの揚げパンもリバイバルフェアが成功している。


それだというのにまたぽろぽろと行商人たちが辞めている。おおかた負け組の連中だろう。


シルヴェスタから高い条件で引き受けたが、辞めてもらって助かるというものだ。


とはいえ、あまり減りすぎると行商が回らなくなる。先日も仕事の量が多すぎると言って行商人が辞めた。この点はクレムと少し話さないといけない。


「行商人が少し減りすぎではないか?」

「はい、そこで完全委託制の行商人を募集します」

「それはなにをするのだ」

「行商の馬車と荷車と商品はこちらで用意しますが、行商の方法は行商人に任せます。利益は行商人が3割、うちが7割取ります。

これで」

「なるほどな」

「インセンティブなどと言っていましたが、それだけでは生ぬるい」

「いや、その方は本当に知恵者だ。なぜ、シルヴェスタが重用しなかったのかわからないな」

「まあしょせん、あのような子どもでは私の価値はわからなかったのでしょう」

「おかげでうちはもうけることができるな」


というわけで完全委託制の行商人を募集することになった。


実際に募集してみると、けっこう人は集まる。前の行商人募集の苦労が嘘のようだ。


ただ何となく中年のしかもなにかひねたような後ろ暗い感じのものが多いような気もしないでもない。

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