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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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ひどい装飾品を見に行く

 クラープ町の方でパラダが装飾品でやらかしているらしいと噂話を聞いた。


なんでもこちらのマネをして装飾品を売ろうとしたが、領都のあまりにもダサい職人に発注してしまい、ちっとも売れていないというのだ。


あまりに売れないので番頭が売れ売れと圧力をかけ、さらにノルマまで課した結果、自爆営業が出たというのだ。こういうところだけ先進的だから困る。いや日本の営業が中世並みなのか。


まあとにかくいいことを聞いた。クラープ町の北方は装飾品が買いにくくなっている。だったら中心部のドナーティの店で売ればいい。


装飾品は食料品などと違っていつ買っても、買わなくてもいいものだ。だから少し遠隔地からでも、街中に来るタイミングで買って行ってくれることもありうるだろう。


そんなわけでマルクに話してみた。


「以前に行商で装飾品を売っていまして、パラダらもまねてしたらしいんですが、これがどうにも時代遅れの物だったそうで。ちっとも売れなかったそうです。だから中心街の店で装飾品の需要はありそうですよ」

「ああ、それは聞いている。うちに逃げてきた行商人がこぼしていたよ。あまりにも古臭い装飾品を高い値段で買わされたって」

「そっちはそっちでまた救済しないといけませんが、とりあえず装飾品のことを話しましょう」

「中心街の本店の方では扱ってないけれど、南の行商の方では扱っているな」

「ええ、行商だけだとお客さんも退屈だろうとアランの提案で入れたんです」

「じゃあ、本店の方でも扱えるな」

「北の方の人は南の行商にまで買いに来ることはできませんが、中心街の本店なら来れるでしょう」

「食料品や生活必需品ばかりで慣れないが、まあいいか」

「なにをいいますか。マルクさんはよく村に外のはやりものを持ってきていたじゃないですか?」

「ああ、そうだった。そんなこともしていたな」

「じゃあ少し買い付けを増やしますか?」

「ああとりあえず2割増しくらいにしてくれ」

「わかりました」



 マルクとはそれで合意する。ところでその古臭い装飾品というのが気になって、ちょっと見てみたくなった。北方の行商に行けば買えるのだろうか。


あまりいいうわさも聞かないが、様子も見てみたいので、以前にこの時間に行商を出していた広場に行ってみた。


行商は出ているが、明らかに客が少なく活気がない。


「こんにちは」

「あ、フェリスさん。こんちにちは!」

「何かさびれちゃったみたいだけどどうしたの?」

「パラダ商会の商売の仕方が雑で。フェリスさんのときは安心できていたんですけど」

「ふーん。そんなにひどいの?」

「ええ、バックの応援が何もなくて、全部行商人に丸投げですよ。仕事も増えるし、お客さんからも苦情は出るし、もう泣きたいくらい」

「なんか生鮮品もあまりよくないみたい」

「面白いもの売っていないし、軽食もなくなっちゃったし、そうしたらお客さんが離れちゃったんです。それで売れ残るように。まあ値下げして売り切りますけど」


なんか気が滅入る話だ。


「ごめん。俺が譲渡なんかしちゃったから」

「ああ、あの頃は楽しかったですね。だけど仕方ありませんよ。店主は領主に迫られていたんですから」

「そう言ってもらえると助かるけど、何か困ったことがあったらジラルドのところに行くといい、前の本部に今年中はいるから」

「わかりました」


「それで髪飾りというのを見せてくれる?」

「よくご存じですね。まあこれです」


見ると確かにダサい。博物館にありそうなものだ。と言ってもそういう優品でない。博物館にある品のデザインで細工を手抜きにしたようなものがあるのだ。


「これで5000ハルクですよ。買う人いると思います?」

「まあ売れそうにないね、なんでこんなもの仕入れることになったの?」

「フェリスさんが装飾品売っていたのをまねしようとしたらしいんですが、頼んだ相手がパラダの親戚筋の職人だったらしいんです」

「ああ、そう言うことか。縁故なんかやっているとそうなるよね。売れないでしょ、これ」

「ゼロですよゼロ。ここ2か月で売れたのはゼロ。買ったのはノルマで迫られた店員だけ」

「じゃあ俺が買うよ」

「え? これを買うんですか? 店主、何か目か心かどちらか病まれていませんか?」


「大丈夫だよ。いやね、クルーズンのみんなにもパラダらがどんなにしっちゃかめっちゃかなことをしているか説明するための証拠として持っておこうと思うんだ。

やっぱり物があると説得力が違うからね。あ、俺が買ったとは言わないでね」


「あ、そういうことですか。それでしたら、5000ハルクです」

「じゃあ、これで」


髪飾りを受け取っ別れの挨拶をする。


「じゃあ困ったことがあったらジラルドに言うんだよ」

「はい、わかりました」


ずっと後になってわかったことだが、これが唯一自爆営業以外で売れたケースになったとのことだった。





 髪飾りを持ち帰り、旧本部のジラルドのところに向かう。とはいってもほとんど毎日顔を合わせているのだ。


しばらくは不安なのでクルーズンとクラープ町の間のホールはつなげておきたい。そうすると1日1回は行き来しないといけない。


他人に見られると危険なので、クラープ町では旧本部のジラルドの執務室の奥の幹部用スペースのみと決めているのだ。


「パラダの店でこんなのを買ってきたよ」


買ってきた髪飾りをジラルドに見せる。


「えらいオールドファッションですが、レトロブームでも来ているんですか?」

「まさか。来ていたとしてもこんな野暮ったいものは売れないよ」

「じゃあなんでこんなものが売られているんです?」

「パラダの親戚筋の職人が作ったそうで」

「ひどい話ですねえ」

「まったくひどい話なんだけど、さらにひどい話が加わる」

「え? 何です」

「あまりに売れないのでノルマを決めて売らせているとかで、仕方なく自腹で買っている行商人が何人もいるというんだ」

「そりゃあまりにひどい。抗議しないと」


「それで面倒な仕事を頼むけれど、彼らが逃げてきたり相談に来たりするかもしれない。できるだけ寄り添って、極力受け入れるんだ。

労働条件も従来どおりの契約があるから、本当は訴訟ができるはずなんだけど、彼らだけではちょっと苦しいだろう。

ただみんなでまとめれば、訴訟などもできると思っている。それからクルーズンでもまだ受け入れ余地はいくらでもあるから、来たい人はどんどん来させてくれ」


「わかりました。それは伝えておきます」

「それからたぶんパラダたちは無茶な働かせ方をさせているだろうから、行商人たちにぜんぶ時間をメモしておくように言っておくんだ」

「はあ、それで何をするのですか?」

「後で訴えたときに証拠になる。話で伝えるだけだと不安だな。少し金がかかるけどメモの仕方など木版を作って印刷して配ろう」

「わかりました。もう少し詳細を詰めておきましょう」


そういって、物を売りつけられた場合や、余計に働かされた場合、罰金や首などを言い渡された場合など、いろいろな場合を想定してすべて記録するようにうながすパンフレットを作って、うちの元行商人たちに配ることにした。


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