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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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65. (パラダ)人が辞めて新しいものを雇う

 私はパラダ商会の番頭バンディ。シルヴェスタから引き継いだ行商の統括をしている。最近はぽろぽろと退職が出始めるのが悩みの種だ。


だがシルヴェスタから引き継いだ従業員は文句も多いし、だいいち以前と同じ条件ということで給料も高い。いなくなってくれてせいせいするというものだ。


ただ人を採らないと行商に行くものがいなくなってしまう。


「おいちょっと。お前たち、明日の午後は開いているか?」

「ちょっと人に会う約束があります」「片付けておきたい家の仕事があって」

「商人は自分のことよりお店のことを優先するんだ。いいか行商人が足りないから、お前たち行け」

「そんな! こちらだって都合がありますよ」

「そんなことを言っていると成績下げるからな」

「わかりましたよ。その分のペイは出るんでしょうね」

「これも給料のうちだ」

「仕事が余計に増えてペイが増えないなんてことあるか」

「人がやめて、いないんだからお互い様だろ」

「お互いさまといって、こちらに何かいいことはあったか」


まったく若いものは文句ばかりで困る。しかも最近口答えが多くなってきている。とにかく人の手当てはついた。


だが辞めた分はやはり補充しなければならない。パラダ様と相談することにする。



「パラダ様、人の補充をお願いしたいのですが」

「どうしたんだ?」

「ええ、何人か辞めまして」

「ふん、領都の老舗に勤められたのに何が不満なんだろうな」

「さあ。まあシルヴェスタからの以前と同じ待遇というのもずいぶん高いですから、いなくなってもうちにはさほど応えませんが」

「それはそうだな」

「はい、ただ辞めた分は補充したいと。もっと安い給料でですが」

「そうか、足りないのか?」

「はい」

「シルヴェスタから引き継いだ行商人は、9時5時だとかホワイトだとか少し浮かれすぎているのではないか?」

「まったくもってその通りで、先ほども説教したところです」

「必要なら採ってもよいが、その前に十分に従業員どもを使わないと店が持たないぞ」

「はい。もちろんそのようにいたします」

「まあ、それでも足りないというなら、採ってもいい」

「はっ、ありがとうございます」


いちおうパラダ様のご了解も得られた。さっそく教会やギルドに行って募集をかけることにする。


だが待てど暮らせど、誰も応募してこない。教会やギルドで聞いてみる。


「司祭様、あちらの応募はどうでしょうか?」

「ええ、話してはみましたが、どなたも応募はありませんねえ」

「はあ、そうですか」


何か頼りないのでそちらはそのままにする。だがギルドの方はもう少し詳しい状況がわかる。


「ええ、きていませんよ」

「なんでだ。クラープ町の老舗のパラダ商会だぞ」

「まあそれはいいんですが、シルヴェスタさんより条件が悪すぎですよね」

「店員などこんなものだろ」

「まあそうなんですがね。だけどそれじゃ暮らしていけないと、この町からみんな外に移っている状況で人が足りないんです」

「どうにかならんのか?」

「どうにもなりませんねえ。しかもお宅はノルマがきついとか。辞めた人が言って回って評判になってしまっていますよ」

「どうにも最近の若い者は仕事はしないくせに口だけ達者で困る」

「シルヴェスタさんは若いですが、ずいぶん稼いで、しかも町に良い雇用を作ってくれて、うちの長のパストーリも絶賛していましたね」

「そんなものはどうでもいいから、どうすれば人が採れるんだ?」

「ええ、待遇をよくしていただくか、条件を緩めていただくか、どちらかしていただくのがいいかと」


待遇の方は改善はできない。ということは条件を緩めるしかない。勤務時間は決まっているから、あとは年齢条件だろう。


いちおう50歳までとしていたが、何歳でも可ということにした


そうするとちらほら応募がある。だが何か耳が遠いとか頑固だとかそういう者が多い。しかし背に腹は代えられず採用することになる。


見習いということで既存の店員の下につけるが、どうにも評判がよくない。


「仕事を教えてもその通りにしてくれないんです」

「勝手に広場を歩き回って客引きをしたりしています。ああいうことをすると管理者から怒られるのに」

「声が大きくて怖いんです」


年齢の上の者が同じ仕事をして年下の者に指示されるのはけっこう面倒なことがありそうだ。しかも自分の信じたやり方があるからそれを変えにくい。


声が大きいのは耳が遠いからということもある。



あまりにも店員の直接の文句が多いので、さすがに新規雇用した者については彼らだけで固めて、行商に出すことにする。


そうすると今度は客からの苦情が来るのだが、そちらは店員からの苦情に比べて回数も少ない。まあいちおう事情だけは聴いておくか。


「ちゃんと指定された時間に行商場所に行って、売っておる」

「それじゃ何で苦情が来るんですか?」

「わしゃ、知らん。客に聞いてくれ」


既存の店員に聞いてみる。


「私たちはシルヴェスタ商会で研修も受けてマニュアルも読んである程度頭に入っていますが、新しく来た人は難しいんじゃないですか?」

「この仕事簡単に見えて、けっこう短い時間に多くの処理をするので、いろいろ大変なんですよ」

「フェリスさんはお客様の満足度を上げるためにいろいろ工夫していましたからね。店員にも細かい注意をしていました。その分、ペイもよかったですが」


ただその程度で客の苦情につながるのかとも思うのだ。


うわさ話に過ぎないが、広場で客引きをしたり、接客中に猥談じみたことを話したり、そんなこともあるらしい。


だが客もそれくらい耐えないでどうするかと思う。こちらは買い物不便地まで行商に行ってやっているのだ。


とりあえず人の手当てもついた。これで給料を下げられた分、少しは利益が上がるだろう。



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