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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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みんなの街歩き

 実際にクルーズン市の南部を歩き回ってみると一筋縄ではいかないことが分かった。


 元はクラープ町を大きくした程度だと思っていた。だが、クラープ町は中心街にわずかに人が住まない地域があるが、後は基本的に住宅地ばかりだ。


だがクルーズンはそうではなかった。南部でも住宅地ばかりではない。工房ばかりの地域や市場関係者ばかりの地域や商業地や住宅地が点在している。


それがほんの1つ道を超えただけで街の様子ががらりと変わるのだ。さっきまではおしゃれな街だと思っていたら、途端に下町っぽくなる。またしばらく歩くと突然殺風景になる。




 街の様子を知るのにみんなに歩き回って調べてもらおうかと思うが、ただリポートを書かせても面白くないように思う。どうせなら思い切り遊んでほしい。


「みんなさ、おこづかいを10000ハルクずつ渡すから、1日かけて適当に買い物しながら、街の様子を書き留めてみてよ。ただし残すのは禁止。残った分は回収ね。何に使ったかも書いておいて」

「わーい」

「おやつをかってもいいの?」

「何を買ってもいいよ」


童心に帰ったのかかわいい。ところが何か考えているのがいる。カミロだ。


「ほらそこ、後で換金できるものはダメだからな」


バレたかという顔で見ている。とても童心とは思えない。


本当は生活に必要なものとかもある種の換金なのでやめてほしいが、ルールをあまり細かくし過ぎると、楽しく遊べなくなる。ほとんど全部肉や魚や野菜というのでなければ見逃そうかと思う。




 お金を渡すのは、街はお金を使わないと何か経験しにくいように思うからだ。もちろん、お金を使わなくても旧跡など見ることもできる。


ただ人が住んでいて経済活動している場所はやはりお金を使わないと、その活動の感覚がつかめないように思うのだ。


だが商会の都合でそれを体験させるのに、自腹を切れというのもおかしな話だ。やはり商会が出すべきだろう。


使い切りにしたのはそうでないと気軽に使えないからだ。アランあたりは放っておいても気軽にどんどん使っていくだろうが、他はどうも気後れするタイプが多い。使わないと損くらいの感覚で使ってほしい。



 あとは書き留めておくことだ。あとで街の様子を聞くときの題材にしたいし、書き留めておかないとすぐに忘れる。


一度に全員出してしまうと行商が回らないので、半分ずつ出てもらう。




 俺が行かなかったので、シンディはマルコと出かけたらそうだ。あの一緒になってもいいとか言っていたのは何だったんだ。


まあまだ子どもなんだろう。俺はこじらせているおっさんぽい。それはともかく、2人は1万ハルクも使うところがなく、最後は皆にお土産をたくさん買ってきてくれた。


そういうわけで何に使うかわからないようなわけのわからないグッズがたくさん並んでいる。




 アランはもちろん女の子におごったりして派手に使ったそうだ。

「1万じゃ足りないね」

いやもう少し計画的に使うことを考えようよ。親御さんに借りたお金は返したの?



 カミロはちょっと変わったペンと時計のチェーンなどを新調したそうだ。

「こういう機会でもないと買おうとは思わないので」

まあそれならそれでいいと思う。




 リアナは肉や魚や野菜や変わった調味料ばかり買いこんでいる。こういう使い方で生活費の節約はちょっと困るなと思っていたら、そうではなかった。


「市場に行ったら、買いたくなっちゃってな。せっかくだから、簡単なもの作るから、みんなで食べてくれ」


簡単なものと言って、確かに長時間かけたわけではないが、かなり豪華なものができている。この辺は身に着けてきた技術のおかげなのだろう。みんな大喜びで食べて、楽しい昼食になった。


ほんとうはふだん自分が買いそうにないものを買ってほしかった気もするが、本人が思い切り自由に使えばそれでいいように思う。しかも自分のためにガメたわけでもないし。



 アーデルベルトは奥さんと少し高いランチを楽しんだそうだ。ランチなのでそこまでかからずあとはお茶を飲んで、ゆっくり散策したとのことだ。



 お金の使い方というのもみなそれぞれ個性が現れて面白い。クラープ町に残してきたジラルドとエミリにもそのうちしてもらおう。


 リポートの方はそれぞれみな書いてくれた。ただ出しっぱなしでこちらが読むだけではなく、みんなの前で話してもらう。


地図を見ながら、どこに何があるか書き留めていく。人によって街の見方も違うようだ。


アランが飲食の街として話していたところを、マルコはそこはけっこう職人がいて工房もあったよなどと話していた。


ただ南部でもみんなが歩き回っていない空白地のようなところもある。それはどうも住宅街のようだ。そちらの方はもうみんなの自由でなく仕事として見に行かざるを得ない。



 商会として文書で南部の様子をつかめたことはよかったが、それだけでなく幹部たちが実感として何かの感覚をつかめたのもよかったと思う。


それにそれぞれその感覚が違っていることもたぶん感じ取っているだろう。


それはともかくせっかく作ったまとめをもとに出店先を話し合っていく。





 家に帰るともちろん部屋にはクロがいる。クロは引っ越してきた当初は興奮して落ち着かなかったが、ずいぶん慣れたようだ。


今度の家は6部屋に広めの部屋が2つあるので、クロとしても探検のし甲斐がありそうだ。とはいっても1つはシンディの部屋なのでクロは近づきたくないらしい。


前を通るときは警戒してさっとすり抜ける。逆にマルコの方にはべたべたと甘えている。


家が変わってもクロのすることは何も変わらない。寝て、神をからかって、ご飯を召し上がって、毛づくろいをして、また寝るくらいだ。


ときどき俺を起こしたりもする。起こしてくるのが明け方過ぎるのがつらいのだけれど。


何かご飯が欲しいらしい。まだ残っているのに。だけど出してもちょっと口をつけるくらいでたいして食べない。いやかまってほしいのか。


店のみんなと楽しいときも、領主だのパラダだの相手にしてうんざりするときも、クロはいつも変わらず受け止めてくれる。


人の営みなど全く超越している。当のクロはそんなことは考えていないのだろうが、それが超越しているのだ。


やはりクロがいてくれてうれしい。ギフトとかそういうものを抜きにして、こんなに面倒なものなのに、その面倒がいとおしくて仕方ない。


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