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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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クルーズン市での仕入れ

 クルーズンで本格的に商売を始めるにあたって青果商のブリュール氏との取引を拡大した。


ブリュール氏はまだセレル村にいたころにブドウを売りに入った相手だ。その後も毎年ブドウを売りに行っている。


試験的にクルーズンに進出したときに、まだうちの行商の規模が小さかったため、ごく限られたものだけを入荷していた。


だが今後は本格的にクルーズンでの商売を拡大するため、彼からの仕入れも拡大する。



 いままでは食料品の小売りをしている店からばかり仕入れをしてきた。だから1つの店でいろいろなものが仕入れられるが、値段はさほど安くない。


今回からは品目別の卸しが中心の商店から仕入れをする。青果はブリュール氏に頼むとして、肉や魚や乳製品や卵や穀物はそれぞれ別の業者から購入する必要がある。


これについては、クルーズン進出時点から、ブリュール氏や商業ギルドや市場関係などをあたり、業者を捜し歩いていた。


それぞれよさそうな業者を見つけ、それぞれに交渉を持ち掛ける。初めのうちは名前も知れない業者としてあまりよい対応を受けられなかった。


そこでブリュール氏に実際に業者を紹介してもらい、取引につながった。


「ところで青果以外の業者も探しているところですが、まだうちが無名なのか反応がよくありません。どこかご存じないでしょうか」

「ああ、それでしたら、畜肉や穀類の業者などはいいところを存じております。話をしておきますから、先方にお会いください」


またそれ以外に業者に向けて紹介状も書いてもらえた。内容は以下の通りだ。


「セレル村出身のフェリス・シルヴェスタ氏との取引は彼が8歳の時に教会再建の寄付集めのためにブドウを納入したときから始まった。

彼の納入するブドウは良質なものでほぼ全量を買い上げ、今年に至るまで続けている。クラープ町で食料品・日用雑貨等の行商をしていたが、昨年よりクルーズンに進出した。

少量ながら私が卸しを手伝っており、一度も彼の支払いが遅れたことはない」


まったく朴訥で商売に関することしか書いていないが、商人が取引しようというときには安心できる情報しか書いていない。


そういうわけで実際にこれを読んで取引に応じてくれるものも出てくる。



 お礼がてらレオーニ氏の店に招待する。もともとこの店もブリュール氏から教えてもらったのだけれど。


「実はこの麺はそこにいるフェリス君の考案でして」

「はあ、そうですか。いや私はこれのファンで。本当にいいものを作ってくれました」

「それでは今度は軽食として出せるように工夫します」


こんな感じに和やかに食事は進んだ。




 また業者にこちらを信用してもらうのに、クルーズン司教からの書付も使ってみる。ただこちらの反応は人それぞれだ。教会についての反応の差だと思う。


素直に信仰している人は商人には多くないようだ。ただ付き合いの場所としていちおう関係があった方がいいと思う者もいる。


逆に、司教ご本人のお金大好きキャラもあるのかもしれないが、あんなものにムダ金使ってに近い反応もないわけではない。


「ときにいまの司教についてはどう思う」

「ええ、なかなかに精力的な方だと」

「本当に金集めはすごいな。来る前は教会の外部もボロボロだったのに今じゃすっかりきれいだし、別館も増えているしな」


まあこんな調子だ。ただ悪口に同調するとどこで尾ひれがついて伝わるかわからないので、ほどほどで気を付けておく。全く子どもらしくない対応だ。


そうやって取引先を増やしていったがもっと決定的だったのはこの前の為替の件で商業ギルドの上の方から評価されたりして、多くの人が話を聞いてくれるようになった。




 そうして仕入れの体制も整った。なおうちの新本部は市場に近いだけあって、これらの業者との距離もそれほど遠くない。


今まで仕入れていた小売りの店も、足りないものを買ったりいろいろありうるので、取引量自体は減らすが、取引自体は打ち切らない方向とする。



「やっぱり専門業者からだと安いね」


マルコがしみじみと話す。マルコはたぶんドナーティで働いていたときに専門業者からの仕入れなどもしていたと思う。


安いという利点はあるが、複数業者と付き合わないといけないし、量もかなり多いのでそのコントロールもしないといけない。


そこでマルコに仕入れの担当を頼んでみることにした。彼なら特に商人相手のやり取りも慣れていると思う。


「マルコにお願いなんだけどいい?」

「最古参だったはずなのに、新参者になってしまった僕に務まることなら」

「今までは必要なかったけれど、仕入れ担当が必要になると思うんだ。この仕事を片手間でするのはたぶん無理で、担当者を置かないといけない。マルコはすでに仕入れの仕事もしているだろ?」

「ああ、ドナーティで一通りはしたな」

「マルキが指導したの?」

「まさか!? 彼が従来の商売を投げ出していたから、伯母さんのカテリーナと一緒に何とか切り盛りしたというところだよ」


俺が9時5時勤務で、いや実際はもっと短い時間の勤務で、猫なでや猫吸いをしている間にマルコは意図ならずも修行していたらしい。


そんなわけで幹部会での承認を取ってからだが、マルコには仕入れ担当をしてもらうことになった。


彼はブラックながら、そのような仕事をしていた経験もあったし、商業学校で帳簿のつけ方なども習っていたので、この人事はうってつけだった。


アーデルベルトもシンディやアランのことについては渋いことを言うこともあるのだが、マルコのことはほとんどべた褒めだ。


そうやって仕入れの体制も整っていった。

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