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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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それぞれの引っ越し

 家を決めたら次は実際の引っ越しとなる。この辺はギフトでみんなクラープ町とクルーズン市の間を行き来できるから、割と気軽に向こうに見に行ける。


引っ越しの荷物もほとんどはギフトで移動することにする。もっともこの辺の貸家は家具付きだから、家具を持っていかずに済み、荷物はそれほど多くない。


家具も移動となるとクロを家具のあるところに移動するという手もありうるが、後で何か神の怒りが恐ろしい。


さいわい家具はほとんど移動する必要がなく、引っ越す者たちは適当に荷車に積んで俺のクラープ町の家にやってきた。


ホールを使って次々と向こうの南本社の幹部用スペースに運び入れた。あとは彼らがかってにクルーズンの彼らの家に持っていくだろう。


アランもカミロもリアナも先にクルーズンで仕事を始めている。



 変わったことと言えば道場の息子のアレックスがクルーズンについてくることになった。


アレックスは剣もそれなりの腕になっているが、何と言っても弓だ。道場主で父親のカスパーがもう弓ではアレクに教えられることはないとのことだった。


さらにクルーズンに行けばもっと弓のうまい者とも競えるだろうし、少し世の中を見てきてもいいと送り出すことにしたそうだ。


道場主のカスパーは俺のことを、剣術はまるでダメだがそのほかの点ではけっこう評価してくれているようだ。


別にうちの商会に入るわけでもなく、クルーズンの道場に内弟子で入るが、何かのときには面倒見てやってくれと頼まれた。




 逆に居残りはジラルドとエミリだ。ジラルドはしばらく引き継ぎのためうちのクラープ町の本社に執務室を持ち、エミリは食品工場の運営に必要だ。


軽食の方はパラダたちはさすがに自分たちではできないと思ったらしい。すでに類似の店を作って負けているのだ。それは味が違うから仕方ないだろう。


実は行商の方もパラダたちがうまくいくとは思えないのだが、本人たちはうまくいくつもりだ。



 経理のアーデルベルトとユーディットもすでについてきてくれている。アーデルベルトはすでに隠居した身なのに、わざわざ遠くまでご苦労なことだ。


ユーディットも含めて後継者を育てるのが楽しいらしい。それに勤務が短くて楽でいいと言っているそうだ。それはそれでよかった。


クルーズンはアーデルベルトがずっと勤務した土地だから友人なども多いのだろう。それはこちらにも頼もしい気もする。


広い家に住んでいたが、それは彼の息子でユーディットの父親にゆだねるという。




 ただ俺の引っ越しはどうしても陸路で行かなくてはいけない重要な点がある。クロだ。他の荷物やロバのフルールはすべてギフトのホールで送ってしまった。


だがクロだけはホールを通れないのだ。まあクロの面倒を見るためにもらったギフトだから仕方ないのだが、もしかして安全じゃないところがあるのかもしれない。そこはあのアホのすることだから。それでクロを陸路で運ばなくてはならない。


人に頼んで運べば楽だが、クロはこの世界の最重要存在だ。自ら運ぶしかないだろう。そこでかごに入れようとしたが、神が2日もクロ様をかごに入れるのはかわいそうだという。


仕方なく馬車を貸し切りで頼んで、その中で自由にさせた。クロが飛び出したら、俺がギフトで捕まえに行くしかない。まあクロが最優先だから仕方ない。


さらに護衛もつける。馬車に同乗なら少し安いが、クロが怖がるといけないので騎馬でついてきてもらう。2騎頼み、1泊2日で20万もかかる。


実を言うとクロは無敵の加護があるので護衛は必要ない。神も横に侍っているし。問題は俺だ。俺が襲われたとき、ふだんならホールでクロのところに逃げればいいが、いまは逃げ場がない。


そんなに安くない馬車を貸し切りにして護衛までつけて馭者から尋ねられる。


「お兄さん、どこぞの貴族のご子弟ですかい?」

「いえ、シルヴェスタ商会の商会長です」

「商会長さんともなるとぜいたくな馬車の使い方ができるんですね」

「いやそれが、こちらの犬が、さる大変に有力な方からのお預かり物で、絶対に危険にさらすな、不自由はさせるなと、きつく言われておりまして」

「はあ、こんなブサ犬がねえ」


あ、やっぱりぶさに見えるんだ。ぶさかわだもんね。とはいえ、そのさる大変に有力なお方も実はそこにいるからいらんことは言わないでほしい。案の定、不機嫌そうな顔をしている。


「まあ、逃げないように気を付けて下せえ」


クロは馬車が動き始めたときは緊張のあまり背中の毛を逆立てあちこち見まわして警戒していたが、危険がないことを悟ったのか、馬車の中のにおいをかぎまわったりしてから、座席の上に用意した猫用ベッドに寝てしまった。


どうせ退屈な旅だし、平和そうに寝ていた方がいい。



 実はこの道は何度も行き来しているが、途中の宿駅で泊まるのは初めてだ。


さすがにチェックインの時にはクロもかごに入ってもらい、部屋に入ったらまた自由にさせる。


翌日もまた馬車の旅で、ようやく夕方頃にクルーズンの家についた。


「クロ、今日からここが僕らの家だよ」


クロは落ち着かない様子で部屋の中をかぎまわっている。


「また何年かここで過ごすからね。じっくり見ておいてね」


今度の家はずいぶん広い。部屋が6つに食堂に少し広めの居間がある。シンディとマルコからは家賃をもらうことで合意している。


その辺はけじめをつけておいた方が後々いい。何かの理由で出ていくことになったときも、家賃無料を手放したくないから決断しないなんてことは避けた方がいい。



 とにかく新しい生活が始まる。あ、またクラープ町に行ってホールをつなげないといけない。さすがに疲れたから、数日時間をおいてまた行こう。


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