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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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住宅ローン

 クルーズンに移るとなると幹部たちやそのほかの従業員たちの家を考えないといけない。クラープ町のときは実家から通っていたものも多い。


初めは幹部たちは東の本部の幹部用のスペースで寝泊まりしていたが、人が増えて何か雑魚寝っぽくなってきた。さいわい複数の部屋があったので男女は分けていた。


そうは言っても本格的に向こうに移転するとなると、きちんとした家を用意しないといけない。




 従業員たちの分はまずは独身寮を用意した。それもまた数千万かかるが、いまのところは懐が温かい。


しかも領主のせいとは言え、半ば無理やり移したのだからそれくらいはしてもいい。


ただし家賃は格安だが設備も格安だ。待遇は悪くないから、自分で家を見つけて出ていけばいい。




 幹部と家族用にはローンを考える。幹部もまだ10代が多いから独身が多いが、あまり職位が違うのに近くに住むのも下の者は煩わしいと思う。


幹部は独身寮からは遠ざけた方がよさそうだ。



「みんな、家はどうするの?」

「月7万くらいはかかるよなあ」


確かに独り者が住むとなるとそれくらいの家賃が妥当だ。


「家なら買うという手もありますよ。家賃を払うくらいなら、十数年分で買えますね。その後は自分の資産です」


カミロがやたらと饒舌だ。


「買うとなると2000万くらいはかかるだろう」


王都や商都ではないので6千万とか1億とかそういう無茶な金額にはならないが、それなりの値段はする。


「いや、それは賑やかなところに住みたいとか、新築がいいとか、広い家がいいとか、いい設備が欲しいとそうなりますが、それらをあきらめればそこまで行きませんよ」


確かにそうだ。家を買うとなると、甲斐性だとか見栄だとか、将来の資産になるなどと言い訳をして高いものを買いたがる。


ただこちらの世界ではそうでもないが、日本では建物など消耗品だ。調度などはこちらの世界でも消耗品だ。要するに高いものは本人のぜいたくに過ぎない。


別にぜいたくしたいならぜいたくしてもいいと思う。いまのこの世界ではあまりそういう考え方をしないが、財産を自由に処分するのは個人の自由だ。


ただぜいたくしているという認識なく、変な見栄や打算に捉われて金を使い、実はぜいたくに過ぎないのはろくでもない。


他から金を持って来れないたいていの人はどこかで選択するしかない。家をぜいたくにするか、食べ物をぜいたくにするか、服をぜいたくにするか、人に気前よくおごるか。


あるいは預金通帳の残高を多くして喜ぶか。甲斐性とか見栄とか煽るのは住宅産業ではないかと思う。


ところでカミロは詳しいのはいいのだが、詳しすぎる気がする。社内預金もしていなかったし、もしかして不動産投資でもしていたんじゃないかと思う。



 実際に古い家とか少し不便なところとか少し狭いところとか妥協すれば600万や800万で家が買える。そんなところでも借りると家賃は5万ほどする。


1年で60万で10年余りで買えてしまう。もちろん買うとなると、金を借りれば金利もかかるし、壊れたときの修繕も自分持ちだ。それでもペイするのに15年もかからない。



 もちろん借りる方が有利な場合もある。数年で引っ越しが確実な人は借りた方がいい。あるいは何かバブルで価格が上がりすぎているときも買わない方がいい。


ただそれは本当にバブルかどうか判断できるとは限らない。それから日本だと借家料を経費にして税金を減らせる場合はまた話が変わってくる。


あとはその新しいとかきれいとか便利とかを譲れないが手元の金がない人は、贅沢だと割り切って家賃を払うのもいい。




 そんなわけで幹部たちに家を買わないのか聞いてみる。


「さっきの話だけど、家を買ったりはしないの?」

「家買うような金はないっ!」


アランは断言する。それはふだんから派手に使って株を買うときも家族に借りていたからそうだろう。


カミロはニヤニヤしている。金があるのか、投資に回して手元の金がないのかよくわからない。


「家を買うのにお金を融資しようかと思うけれど、どうかな?」


住宅ローンは物件を担保に取るから貸し倒れのリスクが低い。しかもうちで働いている相手だから、収入の把握もばっちりだ。


もちろん辞めさせない圧力になりうるからブラックの要素になりかねないが、やめてもすぐに返済しなくてもいいことにすればよさそうだ。


ただ辞めてそれなりに長期なら借り換えては欲しい。借り換えに1年もあれば十分だろうか。


「金利はどれくらい?」

「2%か3%程度にしようかと思う」

「そうか、2%か3%ならあちらに回して……」

「ほら、カミロは住宅ローンを投資に回す計算はしない!」


そういえば前世で、不動産屋のトークに乗せられて住宅ローンを使って不動産投資をして、金融機関にばれて、一括返済を求められていた話があったな。


カミロは明らかにまずいという顔をしている。


「だけど600万や800万の家じゃ古臭いだろ」

「まあそれはそうだけど、お金はたまるよ」

「だけどなあ、女の子連れてきたときに古臭い家じゃかっこつかないんだよなあ」


「その辺はどうなのかなあ。いやアランがどうというわけじゃなくて、一般論として」


シンディたちに聞いてみる。


「確かに古い家よりは新しい家の方がいいわね」

「そうだろ」

「だけど、家に金をかけると他に回らなくなるよ」

「そうねえ。おいしいものも食べたいし」

「まあ俺ならきれいな家でおいしいものもどちらも出せるな」

「まあ遊び相手なら気前のいい人の方がいいけど、本当に将来を共にするのはしっかりした人の方がいいわね」


そこでアランはずっこける。まあ考え方はそれぞれだ。家を買って何かの拍子で暴落するかもしれない。


あまり強く勧めて本人の損になったら気の毒だ。とはいえ、順調にいけば商会にも従業員にも利益になりそうな住宅ローン制度を本格的に検討することにした。


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