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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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多額の金銭の移動

 本部と自分の家の購入を決めた。そこで支払いだが、1億4千万もの金貨を運ぶのはかなり危うい。途中で盗賊に襲われるかもしれない。


護衛をつけるにしても相当な費用が掛かる。この社会に為替制度はないが、その一歩手前のような方法を使いたいと考えた。



 クルーズンとクラープ町でそれなりに商売の行き来がある。


そこでクラープ町の商業ギルドでクルーズンの商業ギルドでも交流があるので、そこで現金を運ばずに書類上で決裁してもらうのだ。


いちおう両ギルドは長年にわたって運営されており信用がある。突然資金が底を突いたりはしないとお互い考えている。


そこでクラープ町ギルドの銀行機能の俺の預金から1億4千万を、クルーズンの商業ギルドの口座に移す。


クルーズンのギルドはそれを現金として輸送はせず、クルーズンの商人がクラープ町から仕入れをしたときの支払いに使い相殺する。




 クラープ町のギルドのパストーリ氏と、クルーズンのギルドの金融担当者と枠組みについて話す。


「2つの町の間で現金を動かすのは危険です。ここは相殺の仕組みを考えたらどうでしょう?」

「どういうことですか?」

「つまり俺がクラープ町のギルドに1億4千万を払います。そこでクラープ町ギルドはクルーズンギルドの口座に1億4千万入れ、その旨の手紙を書きます」

「ふうん、それでうちのギルドが取りに行くのか?」


「いえ、それは危険です。クルーズン市はクラープ町から食料品や生糸を買い付けています。

そこで、例えばクルーズンの商人Aがクラープ町の商人Bから100万ハルク分買い付けたときに、Aはクルーズンのギルドに100万と手数料を支払います。

そしてクルーズンギルドがクラープ町ギルドに相殺するとの手紙を送り、クラープ町ギルドはクルーズンギルドの口座から商人Bに支払います。そうやって私の残高を相殺していきます」


「なるほど。それなら現金を動かさなくて済む」

「いやこれは素晴らしい。これなら現金輸送の警備が要らなくなります」


そう、現金を輸送すると途中に盗賊が出ることもあり、とうぜん警備が必要になる。これが馬鹿にならないのだ。


億単位となるとそれなりの手練れを5人10人と使うこともある。それを3日拘束となると、それだけで100万単位の金がかかる。


そうしたとしてもケガや死亡や現金を奪われるリスクはあるのだ。




 日本では江戸かその前から為替があった。為替の場合は、商人が銀行に金を預けて、その商人の当座預金口座に入れておく。


そして銀行に手形を発行してもらい、その手形だけを商人が取引先に送る。取引先は手形を地元の銀行に持っていくと現金に換えられる。


途中で手形が盗まれるかもしれない心配については、ふつう手形は持ってきた者に直接現金を渡すのではなく、持ってきた者の口座にしか入金されない。


つまり身元の保証にある相手にしか支払われない。だから泥棒は支払いを受けるのがかなり難しくなる。


盗んだ者が信用ある者に何かの形で手形を譲渡することもありうるが、それなりにハードルがある。


前世の日本では手形と小切手とあったが、いまは全部電子的になっているはずだ。この辺の仕組みも商売がもっと盛んになったらしてみたいと思う。




 為替の制度にしなかったのはその方がいろいろ安全だと思ったからだ。


実際に為替手形は不渡りつまり約束の金が払われないことも一定割合あるが、今回の制度ならギルドがつぶれない限りはない。


ただ為替の方が、何人もの商人が絡んで、手形を次々渡していくには便利ではある。


そのうち今回の制度にみんなが慣れて、しかも商売がそこまで盛んになったらまた提案すればいい。



「この相殺制度は私が今回使いたいのもありますが、2つの町の間でますます取引が盛んになったときの利便のためもあります」

「確かに取引の増大にこの相殺制度はありがたいものになりますね」

「ところでこの相殺制度はギルドにとってはいろいろ手間もかかるし、相手先ギルドが使いこんだり破産する危険もありませんか?」

「はい、その通りです。ですから手数料を取ればいいでしょう。例えば1億4千万に1%で140万ならどうでしょう。警備費用を考えるとむしろ安そうです」

「なるほど。それはいい。ギルドがつぶれるのは全くないとは言いませんが、めったにないし、手数料が得られるならぜひしたいです。いやいい方法を教えてくれた」

「こちらのシルヴェスタ氏はうちの自慢の商人でして、まったくクルーズンに行ってしまうのが惜しいくらいです」

「これからもちょくちょくクラープ町に参りますよ」




 相殺についてはうちの場合は別の方法もある。今後はクラープ町のシルヴェスタ・ドナーティ商会とクルーズンのシルヴェスタ商会の間で取引が盛んになる。


もちろん別の商会だ。取引の際にはお金のやり取りがあるが、やはり3日の距離がある。直接現金をやり取りするのは上手くない。


そうするとたぶん帳簿上の相殺を繰り返すことになると思う。ただ一方的な取引が多くなったらやはりどこかで現金の決済もしないといけなくなりそうだ。





 ところでお金を動かすのに正直な話、手数料はあまり払いたくない。警備費用より安いと言っても俺の場合は金を運ぶのにギフトがある。


いちおう危険として、クラープ町でギルドからクロのいる家までと、クルーズンで本社からギルドまで運ぶところがある。


ただそちらは距離が短く警備は簡単だ。しかも人目が多いし、まさか大金を運んでいるとは誰も思わないだろう。




 こんご向こうで商売を拡大するのに一定の現金は必要だ。そこでパストーリ氏に少し現金を動かしたいと頼んでみた。


「クルーズンで物件を買ったり人を雇ったり調度を買うのに少しお金が要ります。相殺でなく実際の現金を少し向こうに移したいのですが、よろしいでしょうか」


パストーリ氏は少し戸惑ったような様子だ。

「数千万くらいならすぐにご用意できますが……」


俺は7億ほど預けているが、それは北側の事業を買い取ったパラダたちや南側の株を買い取った土着商人たちの口座から移動したものだ。


ギルドがそんな金を遊ばせておく必要はないからどこかに融資するのはわかる。理屈はわかるが何となく不安になり、パストーリ氏に確認する。


「まさかパラダたちには貸していませんよね」

「いやそれは0にはできませんが、彼らには数百万ずつですね。しかも担保も保証人も取っています。連中の商売の仕方を見たら、怖くて貸せませんね」


ああ、よかった。連中に多額を貸しているとなったらそれは無理してでも引き上げないといけない。


「それではどこに貸しているのですか?」


「それは幅広くです。ドナーティさんにも融資していますよ。商家が建物が必要になれば融資を受けて建てるか買うかして、うちは担保に取り、商家は商売で少しずつ返す。

余裕のある商家が預けて、資金の必要な商家に貸す。そういう仕組みです。ですからうちは小売り・卸売り・製造それぞれあちこち広く貸しておりますよ」


「それではうちの7億は……」


「ええ、幅広く。うちから借りる方も、うちに預ける方も幅広いです。

いままではどこかが突出して大金を預ける感じではなく、ときどき1億を超えるくらいの家があったくらいですが、シルヴェスタさんがちょっと異常でしたね」


そうか、やはりかき回していたのか。ちょっとそれは申し訳ないような気もする。やはり出て行って正解なのかもしれない。


過去にも資金の引き上げはあったらしいが、それでも数千万単位だったので、特に問題なく支払えたそうだ。今回は金額が少し大きすぎた。





 けっきょく本部と家を買うための1億4千万は相殺方式で支払うことにし、それ以外に当座の金として5千万を持っていくことにした。


バレやしないだろうがさすがに怖いので、ギルドから家までは馬車に乗せてスコットに護衛を頼み、家からギフトのホールでクルーズンの東本部に持っていった。


そこからクルーズンのギルドに預けるにもまたスコットについて行ってもらう。



 いずれにしても支払いも済ませて、クルーズンでの商売上の拠点と自分の家を手に入れた。






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