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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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幹部たちの貯金

 面倒な計算を終えて、株の配分は当初は出資に応じて俺がほぼ8割だった。しかしそれではすべての権限が俺に集中してしまう。


そこで3割分は売りに出して、俺が5割、カテリーナとマルクで1割ずつ、残りの3割を他に分けることにする。


取引先の商会などにはもちろん話を持っていく。ついでに新商会は大半が元はうちなので、うちの商会の幹部連中にも声をかける。


「株を買ってほしいんだけど、貯金はある?」


みんなに聞いてみる。プライバシーについてはかなりあまいようだ。


実はある程度はみんなの貯金額を知っている。なぜかというと社内預金制度があるからだ。


前世の銀行までの組織はないが、庶民金融のようなものはある。とはいえ危ないものも少なくない。庶民金融がつぶれることもよくあることだ。


かといって現金を家に置いておくのも結構怖いところがある。日本では報道で聞くくらいであまり身近になかった泥棒や強盗が平気である。


そこで俺が預かって、それは事業に使わず、まとめて商業ギルドに預けることにしているのだ。ギルドの方は店主以外お断りだからだ。


もちろんこれもうちの商会が倒産して、借金の返済を迫られたときには従業員たちの金として扱われるか、会社の金として扱われるか微妙なところがある。


ただ預けていることが表に出ているわけではないから、その辺はうまく処理できると思う。


そもそもそれは相手が知るはずのない情報だからあてにされても困るし、また知らないうちに幹部たちに返してしまうこともできる。




 シンディは剣術以外に興味がなく、もらったものはほとんどそのままほったらかしのようだ。だから結構な金額がたまっている。


だいたい服も宝飾品も興味がない。剣や鎧は欲しがるがそれも実用品ばかりのようで、何か銘品などは特に必要ないらしい。


「そんな面倒そうなものじゃ、まともに打ち合いできないじゃない?」


何となく株も売ることなく、ブタ積みにして、いつの間にか資産家になっている未来が見えそうだ。




 マルコは実家の方にかなり出しているらしく、手元には余裕がなさそうだ。


ただそうすると株を買う金はないが、向こうに出資していることで向こうがらみで株が割り当てられそうな気がする。マルコには株を持っていてほしい。



 アランは派手に給料を使ってしまっていて、あまり余裕がないようだ。


「なんか特別手当がでる仕事ありませんか?」


何かいつもよりやる気がある。口調も丁寧になっている。正直な話、移転やら何やらで仕事は山のようにある。ふだんは勤務を最小限にしているアランが一番長い時間働くようになった。




 ジラルドはしっかり貯めている。うん、予想通りだ。やはり南部の引継ぎも彼に頼むのだろうな。


クルーズン進出では1人で支社を任せて、クラープ町撤退でも1人で支社を任せて何か気の毒なところはある。


それでまた別に手当が出るから、またため込むのだろう。いったい何に使うのか。




 ところがカミロとなるとよくわからない。社内預金にはあまり出していない。


どうも独自に運用しているらしくすぐには出せないらしい。怪しげな商売に関わらないといいのだが。


「ギルドの金利では将来の物価高には対応できませんからね。それなりにリスクを取ってリターンを追求しないと」


もしかして港区あたりから転生してきたのか? なにか言うことが不穏だ。





 リアナは、それなりに珍しい食材にお金を使ってもいるようだが、その程度でそれなりにためているとか。


「お金をためて世界中を回ってみたいんだ。世界中で料理しながら、その土地の食材を食べる」


いい夢だ。おじさんは感動する。株を持っておくと帰ったときに大化けして店を出すくらいになるかもしれない。




 エミリは実家に仕送りしているようだ。ただセレル村に戻ったときに聞いてみると実家の方は特に困ってないとのことだ。


「まあエミリの将来のために貯金しておきますよ」


家にお金を置いていても町に比べれば犯罪は少なそうだからたぶん大丈夫だろう。




 アーデルベルトはうちの稼ぎなど必要ないようで適当に遊ばせているようだ。


「まあ老後を過ごすくらいのお金は用意があります」


彼なら2000万問題と言われても慌てそうにない。



みんなそれぞれ、性格が違っていて面白い。




 そこでみんなに株の購入について説明をする。


「買うのも買わないのも自由だ。これは事業への出資だから事業がこけたら紙くずになる。ただ事業がうまくいけばギルドに預けておくよりもあがりはいい。配当金は出るし、商売が大きくなれば他人に高く売ることもできる」

「まあ事業と言ったって、大半はうちの事業だからな。見込みがあるかどうかくらいはわかる」

「そうだね。まずくなったことに気づいたら売ってしまえばいい」


それはインサイダー取引と言ってまずいのだが、この世界ではまだ禁止されていないからなあ。そのうちトラブルになりそうだ。いちおう注意しておく。


「そういうやり方は後でトラブルになるから、やめた方がいいよ」


なんやかんやと話して、けっきょく割と貯金額に応じてそれぞれ株を買ってくれることになった。


もちろん株は貯金に比べると投機的な部分もあるが、自分たちの育てた商会だから、一部でも自分のものにしておきたいらしい。


アランはいちばん買いたがっていたが、いちばん余裕がないようだ。やはりふだんから貯金はすべきだ。それでも手当や他のお金をかき集めて、それなりの金額を用意していた。どうも家族に借金したらしい。親御さんは株を質に取っておいた方がいいんじゃないか?




 けっきょく株については俺が5割、カテリーナとマルクが1割ずつ、それにクラープ町土着の商会とパストーリ氏とうちの幹部が数パーセントずつ持つことになった。


軌道に乗るまでは俺が5割持っていてもいいが、その後は下げてもいいように思うのだ。


向こうに移れば、こちらはこちらでまた新しい幹部が育つだろう。彼らも株は持った方がいい。


それにクルーズンで商売がうまくいけば、相対的にこちらの資産の重要性はなくなるし、だいいち俺が関わる時間がなくなっていく。その時にいつまでも支配を続けるのもどうかと思う。


そんなふうに南側の方の問題は片付きつつあった。


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