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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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ドナーティ商会との合併と株の配分

 株式会社化の方は幹部の方で同意が優勢のようだ。細かい点についてはいろいろ注文はあるが、商会の中の大勢は進める方向になった。


 そこでマルクだけでなくカテリーナも含めて話し合うことにする。内容は


1. シルヴェスタ商会とドナーティ商会を合併すること、

2. 新たな商会の統治形態として株式会社化すること、すなわち出資割合に応じた議決権を持ち、また取締役を選んで、経営者を監督させること。

3. カテリーナとマルクが経営にあたること。

を軸とする。


実際は他にもいろいろある。ドナーティ商会に融資している商人は他にもいるのでそちらも株主になってもらうことや、俺を含めいまのシルヴェスタ商会の幹部が取締役になることなどが必要になりそうだ。



 マルクには少し話してあったが、カテリーナにも説明する。とはいえ法制度として保障されたものではないので、あくまで出資者間および経営者との間の契約のようなものだ。


「フェリス君はずいぶん難しいことを考えるのねえ」

「本当にな。うちの兄貴マルキなんかじゃ敵うはずないな」

「あれでも、うちの子たちの父親ですからね。それくらいにしてくださいな」

「ところで兄貴はちゃんと修業はしているのか?」

「ずいぶんと愚痴は吐いているけれど、一応はまじめにやっているみたいだよ」

「まあ、それならいいけれど」


脱線が過ぎるので適当なところで話を戻してもらう。


「それでこの制度についてはどうですか?」

「うちは事業も安定するから反対はしないけれど、フェリス君はこれでいいのかい? ここまで育てた事業でしょう?」

「はい。もうクルーズンに行くつもりですから。株についても5割は持つつもりですが、いくらかはうちの幹部や町の商家の人たちにも譲渡するつもりです」


うちの商会の方が大きい上に、ドナーティ商会が傾いたときに出資したこともあり、合併しても俺が8割くらいの株を持つ計算になる。


日本の制度だと3分の2超で定款の変更という、会社の基本法のようなものを変える権限も持てるが、そこまで持つ必要はないと思う。


それよりクルーズンで商売をするための原資があった方がよい。




 2人も前向きなので、後はギルドで話をすることにする。ドナーティへの出資は俺がずいぶん引き受けたが、他にも出している商人もいる。


それ以外に取引先などもある。そちらとも話をつけておいた方がいい。


ギルドマスターのパストーリ氏は株式の制度に大絶賛で、もう何度も話を聞かれている。そこで他の商人への説明のときも同席して説明を手伝ってくれる。


「とにかく彼の考えた制度はすごいんです。これはもう世界を変えるものですよ」


確かに制度自体はすごい。だけれどみんなが儲かるかどうかはまた別問題だ。事業だからリスクはあるし、それを明示化しただけだ。


俺も何度も説明を繰り返して、ノートにも書きつけてあるのでずいぶん上手に話せるようになったかと思う。


今回のような商会の運営体制について、領主でもないので法として作ることはできないので、出資者および経営者間の契約として作ることにする。そして譲渡するときもそれを守る相手以外は譲渡できないようにする。


株式の譲渡制限については、パラダたちを排除するためでもある。現在の株主が売っていい相手を限定し、その代わりにその株主に求められたら、買い取る先を探さないといけない条件だ。


「趣旨は分かりましたし、ドナーティ商会が安定するのも歓迎ですが、株を5割も持つのではシルヴェスタさんの発言力が強すぎるのではないですか?」


「はい。5割の株を持っていれば議決ができます。ただ逆にほとんど出資もしていないのに、例えば経営者と顔なじみだとか、経営者を脅しただとか、経営者にしつこく迫ったなどの理由で意見が通ったら、そちらの方がむしろ問題ではありませんか?」


「まあ、それはごもっともかと思いますが……」

「それに株主総会は臨時がない限り年に1回です。むしろ取締役会でしょう。こちらも私以外の残りの5割の株でそれなりに取締役を選んでもらえればふだんの経営を監督できます」

「なるほど」

「重大なことなのですぐに決めろとは言いません。どなたかと相談してくださって、結構です。1週間後にまたお会いできればと思います」



 1週間たってギルドで話を聞くが、ドナーティ商会に出資していたり、ドナーティ商会と取引している商人たちも同意した。


そこでシルヴェスタ商会とドナーティ商会は合併し、さらに株式を発行することになった。




 合併に際しての事務作業量はすさまじいものだった。残業づけのようなことはしたくないので人を増やそうとしたがそうもいかないようだ。それならよけいに日数にかかってもいいと思うが、


「みんな期待しているから早く済ませたい」

「どうなるか先が楽しみ」


と作業を先行させる。せめて手当くらいはきちんとつけることにした。サービス残業など組織的な恐喝のようなものだ。




 作業ではドナーティの方もいちおう諸表や記録が残っているのは幸いだった。


それがないと全くの聞き込みで資産を把握しなければならないし、後からわけのわからない借金やらお荷物が出かねない。


マルキはともかく歴代店主やカテリーナがきちんと商売していたのがよかった。




 アーデルベルトはぼやいている。

「これはとうてい引退した老人の仕事ではありませんな」


全くごもっともだと思う。そうは言ってもやはり彼が一番技術があるし、役職にもついている。どうしても頼らざるを得なかった。




 合併比率を話し合ったりする。ドナーティ商会には出資しているので割と強気で出られるが、末長い付き合いをしたいし、彼らに経営も任せるので無茶はしたくない。


前世でも合併比率を決めるのは結構ややこしかったらしいが、あまりややこしいと「えいや!」と1:1にしてしまうなどということもあったようだ。


純資産だけで計算するとうちが不利になるし、利益だけで計算するとうちが有利になりすぎる。結局その間くらいにする。



 それから株式の譲渡価格を決めないといけない。資産だけで計算できるなら簡単だ。ただ北部の譲渡のときもそうだったが、実際には利益との兼ね合いがある。


いろいろノウハウを持っていて資産のわりに多くの利益が出ているので、資産だけから計算すると見積もりが安すぎることになる。


少し話は違うが前世で企業買収のときに純資産より高く買い取ることがあって、差額をのれん代などと言っていた。評判やノウハウに払うお金だ。その類のことがある。




 さすがに前世でも上場価格決めなんてものに関わったことはない。中小企業の株の評価に関する専門書の名前を聞いた覚えはあるが、現物も見ていない。


もしかしてアランたちは商会を大きくした分だけもっと安く手に入れるべきなのかもしれないが、それもちょっとわからない。


いちおうかなりの厚遇で払ってきたからいいような気もする。そう自分の都合のいいように考えるのはブラック経営者っぽいのだけれど。


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