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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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株式を説明して絶賛される

 アーデルベルトとパストーリ氏相手に株式の仕組みの説明を続ける。


「前に話した出資方法の続きです。出資したことについて証書を発行して、その証書を売り買いできるようにします」

「それはまた斬新な」

「いやすごいですよ。出資するのに、出資先とは何の相談もなく出資が決まるのですから」

「借金の証文を譲渡することはあり得ます。その延長です」

「ただ出資先に何の断りもなしというのは大丈夫ですか?」


「そこは考えがあります。まず経営への介入は出資者の総会という形式でのみできるようにすること。

それから経営者のみがタッチできる領域を作ってその部分は出資者にも触らせないこと。

ただ経営者自体を入れ替えてしまうことはできるようにします」

「出資は容易になる上に、出資したことについての効果を明確になりますな」

「総会の形なら出資者間での公平を図られますね」



「それから経営者が出資者に譲渡制限をつけることもあり得ます」

「でも出資者が自由に売り買いできるというのはこの制度の魅力なのでは?」

「そうですね。資金が必要になったときに、経営者や他の出資者への断りなしに他人に売れるというのは制度として魅力です」


「それに対応するため、経営者が出資者の売却を制限したときには、経営者自身が買い取るかあるいは代わりに買い取る者を用意しないといけないことにします」

「なるほど。それなら出資者にとってもお金が必要な時に融通が聞いていい」

「いやこんなすごいアイディアがどこから出てくるのか」

「本当に素晴らしいですね」



「出資というからには利子もあるのでしょうね」

「はい、定期的に事業の配当金を出します。ただし事業がうまくないときは出しませんし、好調のときは多めに出します」

「それは諸表が公開されれば妥当か不当か判断できそうですな」

「それに応じて出資者は異議を唱えたり、場合よっては経営者を変えればいい」



「ところでこの素晴らしい制度はなんと呼んだらいいのでしょう?」

「何かの集まりのメンバーの権利を株というので株式というのはどうでしょう?」

「なるほど! それはぴったりだ。出資は株を買うことで、その株が売り買いできるようにするのですな」

「はい」





「ただ前も言ったように出資金以上の危険がないようにしないと、安心して出資はできなくなりそうです」


いまの制度だと経営者には無限責任を貸し、つまり会社がこけて借金が残っていたら、経営者個人の財産もその分取り上げられる。


出資者はある意味で経営に介入しながら、商会がこけたときに、出資金以上は払わなくてよいのかということだ。


株式会社制度なら払わなくていいし、それによって多くの者が安心して出資するようになる。


そんな会社がこけたときに株が紙くずになった上に、残った借金の一部を負担しろなどと言われたら、多くが出資を躊躇しそうだ。


「それはなかなか難しそうですな」

「確かに」

「例えば一定規模以上の商会にのみ認めたらどうでしょう。大きい商会はやはりつぶれにくい」


日本でもむかしは株式会社は一定以上の資本が必要でつまり一定以上の規模の会社にだけ認められていた。

もちろん大きくたってつぶれるときはつぶれるが、やはり中小・零細企業に比べるとつぶれにくい。


「なるほど」


「それからギルド会員については互いに出資者には求めないルールにすることはできませんか?」

「それはありかもしれませんな」


「それからこの出資制度を使う商会用にあらかじめ契約書の形式を作っておいて、契約の相手先に出資者への追及はなしとすることを常に求めたらどうでしょう」

「なるほど、それはできるかもしれませんね」




 本当は法制度として株主が出資した分以上に追及されないようにした方がいいのだが、すぐにはできそうにない。


代わりにいろいろ小細工を弄することにする。もっとも契約書を作ったとしても、当事者のどちらかあるいは両方が嫌がれば、それを使わないことは十分ありうる。


そうすると場合によっては出資者のところに金出せと言ってくるのが出てくるかもしれない。


「ただ資金に困っていて少しでも多く借りたい商会はそういう金を借りるのに不利な契約書は使わない気がしますな」


やはりアーデルベルトは気づいた。


「そこが問題なんですよね。本当は国や地方の制度にしてもらえるといいのですが。例えばこうしたらどうでしょう?

ギルドの規定に従って株式を発行したら、その特別な契約書以外を使ったときには、見つけたときに何らかの違約金を払わせ、さらにもし破綻したときは本人に対する追及をふだんより厳しくすることを予告しておくことにする」


「ちょっと面倒ですが、そんなところでしょうか。ふだんなら破綻してもみんなで助け合うこともあるところを完全に財産を取り上げるくらいにしてしまうのもいいでしょう」


そうか助け合うこともあるのか。会社更生法か民事再生法みたいなものかな? まあその方が後々いいこともあるだろうからな。


「もっともそんな制限された形で経営に介入して、実際は金を貸したに近いくらいでは、破綻時でも金を出せとまでは言われないでしょうな」


「たぶんそう言うことになるでしょうが、完全に保証された形にしたいのです。そうでないと安心して出資ができません。その保証があって投資が飛躍的に増えるでしょう」


「いや、本当に素晴らしいアイディアだ。どこからそんな考えが出るのか。前に町一番の商人と言いましたが、国一番かもしれません」


「本当にあの店主の考えた出資の仕組みはすごい。世の中を変えるものです」

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