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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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セストの修行終了と軽食始め

 クルーズンでの軽食の展開では、レオーニ氏に頼んで麺の改良をしてもらった。それを手伝っていたリアナも帰ってきた。あとはこの麺と従来の軽食をクルーズンで売り出せばいい。


だがスタッフが十分でない。いまはレオーニ氏の店で徒弟のセストを育ててもらっているが、まだ2月はかかる。


リアナはクラープ町の食品工場から引きはがしてきたので帰さないといけない。


工場の方では1月行ってもらって構わないと言っていたのだが、もしかしたらリアナもレオーニ氏みたいに思いついたら猪突猛進で周りを引っ張りまわしているのかもしれない。


それはともかく、ギフトでリアナを町に帰すことにする。




 ホールを通ると、クロがいる。リアナはクロに会ってないわけではないのだが、クロは基本は警戒モードだ。あまりお近づきになりたくないらしい。


リアナには馬車で帰ったことにするように言い含めて、うちから出て行ってもらう。お邪魔虫がいなくなれば、昼間からクロとの蜜月タイムだ。


よほど甘えたいのか、両手でこちらの左手をつかんでくる。耳の付け根あたりをかくと、首をひねってこちらに頭を擦り付けてくる。


もう俺がいなくても商会は動きそうだ。やはり重要な仕事に集中するべきだろう。




 軽食の方は早く展開したいが、セストの修行が終わるまでは動けそうにない。もともと展開したとしても小規模になりそうだし、それほど儲かりそうもない。


当面は人を育てるのが目的だ。だからわずか3か月であるし、修行の終わりを待つことにする。


その間にリアナは町で麺を部下たちに教えている。クラープ町でも麺を売ることになるのかもしれない。ただ他の軽食とは売り方を変えないといけないので簡単でもなさそうだ。


なおリアナにはクルーズン市での事業拡大の都合もあるので、人を増やすように言っておいた。




 リアナは工場で麺を打っているようだ。もちろんかなり評判がいい。毎日でも食べたいという者も出てくる。


 本社の方にも持って行ったりすると、もちろんこちらでも評判がいい。シンディも喜んでしょっちゅう食べている。俺の試作品は嫌がっていたのに。そりゃ、出来が違うことはわかるけれど……。




 リアナはリアナで少し複雑なようだ。彼女の作った麺も悪くなかったが、レオーニ氏の作った麺はやはりもっと洗練されている。


「やっぱり師匠には敵わないよな」


ただそれは違うところもあると思う。


「確かに彼の技量は相当だと思うよ。だけどリアナはまだまだ修行中じゃないか。しかもレオーニさんはリアナの作ったものをもとに、その上で工夫ができたんだから、ずっと有利だったんだよ」

「ありがとうな。もっとすごいもの作るから」

「ああ、そうしてくれ」



 1月半ほどたってまたリアナをクルーズン市に連れていくことにする。軽食を作る厨房を借りるためだ。


「リアナ、いい? また今度、クルーズンに行ってもらいたいんだけど」

「おう、今度は何をするんだ?」

「近いうちにセストの修行が終わるだろ。そしたらいよいよ向こうでも軽食を展開する。だから物件を見ておきたいんだ」

「ああ、わかった。じゃあ工場の方は調整しておく」


クラープ町の工場はエミリが管理しているので問題なく回るそうだ。


なおこのごろは、麺を打って、みんなで食べたり、本社の方に持って行ったり、ときどきは客に出したりしているそうだ。そっちの方が評判で、今日はないのかと聞きに来る客もいるという。だから早く通常メニューにする準備をしているとか。


まだ設備などがいまいち整っていないので商売としていつでも売っているわけではないが、売るようになるのも時間の問題だという。これはかなり儲かりそうな気がする。




 クルーズンでは初めは小さく始めるつもりなのでそんなに大きい物件は必要ない。行商の方がまだ大規模でないので、それほど売れないからだ。


さすがに物件を借りること自体は幹部会議で承認を取ったが、規模が小さいので詳細までは会議にかけていない。



 そこでリアナと物件を捜し歩くことになった。場所はやはり市の東地区だ。やはり拠点から近い方がいいし、行商で持っていくためにも行商の拠点に近い方がいい。


ただ前もそうだったが、別に表通りに面している必要はないので、やや裏手でも構わない。家賃の安さの方が優先事項だ。


それにとりあえずは麺は出す予定がないので、その場で座って食べさせる必要もない。テイクアウト

ばかりで十分だろう。


この物件もとりあえずであって後々また変えるかもしれないので2人で決めてしまう。東地区の行商の拠点から15分ほど歩いたところだ。


作業できるのは3人ほどだが、とりあえずはそれで十分だろう。おかげで家賃も高くない。




 そんなこんなをしているうちにセストの修行終わりの時期が近付いてきた。レオーニ氏から修行の終わりを見に来ないかと誘われ、リアナとともに向かう。


さすがにレオーニ氏やリアナに比べると動きがよくないが、とても3か月前までは素人だったとは思えない動きだ。


出された料理も高級店というものではないが、十分店の味になっている。


「けっこういいんじゃないか?」

「まあいちおう基本はできているみたいだね」

「これからも精進だな」

「3か月間大変ありがとうございました」


そんなわけで無事うちの店で引き取ることになった。




 そこでリアナとセストの2人で軽食の調理をしてもらうことにする。行商の方はジラルドの下の2人の部下がそれぞれ出店のリーダーになれるようになった。


そうは言ってもいま行商は多い時で3組、通常は2組しか行っていない。だからそんなにたくさんの軽食を作る必要があるわけでもない。


1人でも足りるのだが、セスト1人だとまだ少し不安だ。かといってリアナ1人だとセストの技量向上につながらない。そんなわけでよけいに金はかかるが、2人でやらせている。



 そうするとリアナがやはり物足りないらしい。借りた厨房の店先で、露店をしようかなどと言っている。


まあ勤務時間が短すぎるのも技量の向上などを考えると困るだろうから、リアナの裁量でさせておけばいいのかもしれない。


「じゃあ店先で、売るってことでいいな」

「その厨房のある店の店先でも、こちらの行商の拠点の店先でも、あるいはどこか好きなところに屋台を出してもいいよ」

「ああ、そういう手があったのか。でもまあ馬車を頼むのも面倒だから厨房のある店先でやるよ」


リアナは勝ち気で、セストは言いなりのようだ。とはいえまだブラックでもないし、まずくなるまで放っておこうかと思う。

前にちょっと覗いてみたら、麺やらブリトーなども出していた。


麺の方はかなりの評判で結構遠くからも食べにくるものがいるという。このままだとまた人を増やさないといけないかもしれない。うれしい悲鳴だ。



 そういうわけでクルーズン市でもまだ東側だけだが、少しずつ行商を広げつつあるし、それに軽食も出すようになった。


始めたころは赤字だったが、だんだん黒字が出るようになり、しかもそれが拡大している。事業としては上手く行っているのだろう。


何となくクルーズンでの明るい未来が見えたころ、クラープ町の方で事件が起こってしまった。

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