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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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20. アランたちの試食

 次の日は麺の試食にアランたちも来ることになった。勤務後まで会社関係に付き合いのというのブラック気味のような気もする。


ただうちの商会はもともと勤務時間が短くて、暇を持て余している人も多いので、あまり嫌がられないらしい。


ただアランたちがクラープ町の俺の家に来ると狭いので、食品工場の方に行くことにした。本部から家まで15分ほど、さらに南の工場まで15分ほどだ。




 工場はリアナが怖い顔で仕切っている。手洗いをして、白衣もつけないといけない。


「いい、こっち(厨房)に入るなら、必ず手洗いしてね。それからこちらの白衣に着替えてね」


手洗いの仕方もブラシを使ったりやたら念が行っている。リアナの部下たちは当然のようにこちらに圧をかけてくる。リアナ軍団だ。


この辺は俺も食中毒には気を使うし、リアナ自身も師匠のレオーニ氏から仕込まれたようだ。


エミリも

「ご面倒おかけしますがよろしくお願いします」

と表面がソフトになっただけで同じことを求めている。それはそれでいいと思う。




 着替えて白衣になったお互いを見合ってなんとなく笑いがこみあげてくる。


シンディもアランもなんとなく落ち着かない。カミロは借りてきた猫のようだ。マルコはわりと似合っている。一番おかしいのはアーデルベルトだが笑ってはいけない。


少し硬めのインテリのような顔でこの衣装はなんとなく似合わない。ジラルドは連れてこれなかったので後でうどんを持っていこう。



 そこでみんなの見ている前でうどんを打つ。何か注目されるとやりにくい。


むかしどこかのうどん屋で手打ちの場所をガラス張りにして見せていたところがあった気がする。あの人たちもはじめはやりにくかったのかな。


なお打つのも結構つらい。すぐそこにこね機があるが、まだ1度も使っていないので試食用には使わない方がよさそうだ。打った後は寝かせる時間が1時間くらいある。




 その間にスープを作る。肉や野菜を適当に炒めて、鳥の骨と水を入れて煮出す。リアナが何か言いたそうだ。そりゃ素人の仕事じゃ満足できないか。


いやそのうちリアナにやってもらうから、今日のところはこれで我慢してくれと思う。


スープもあとは放っておけばよくなって、しばらくみんなで雑談する。これなら先に来て打っておけばよかったのかもしれない。




 出来上がってゆでた麺をスープに入れて出す。ただ丼のようなものがなくて、小さな器でなんとなく物足りない。


「なんか変わった形だな」

「器にスープが入り、長いひも状のものが入っています」

「そうだな、始めてみる料理だな」

「とりあえずいただいてみましょう」

「遠い異国にこのようなものがあると聞いたことがありますな」



 シンディとマルコはもう見ているのでそんなに強い反応は示さない。


それでみな黙々と食べている。やはり長いものは食べなれないと食べにくいようだ。けっこうみんな悪戦苦闘している。


巻いて食べていたり、細かく切って食べていたり、上に引き上げて食べたりといろいろな食べ方をしている。ただなんというかみんな黙々と食べている。


「なんか変わった料理だったな」

「ひも状のものは小麦粉を煮固めたもので、独特の歯触りがありました」

「いや面白かった。スープはまだ改良の余地ありだけど」

「フェリスさんはやはり珍しいものを作ってくれますね」

「長生きしたつもりでもまだまだ経験していないことはありますな」



 みんなそれぞれに評価してくれる。ただなんというか、正直言うと反応が薄い。出す前はみんな激賞してくれるものだと思っていた。


俺が麺に対してあまりにも憧憬が大きかっただけで、実際の評価はこんなものなのだろうか。もう少し魅力を伝えられないかと説明してみる。


「この長いのを麺と呼ぼうと思う。それでこの麺の作り方もいろいろ工夫ができるし、スープの種類も変えられるし、スープでなく別のものをかけてもいいと思う」


そう言われてもみなピンと来ていないようで、皆は当惑するばかりだ。


そんな感じでなんとなくしらけた感じで会はお開きになる。いちおうリアナにはまた展開について近いうちに相談すると言っておいた。




 せっかく意気込んで作ったのに反応がいまいちでさすがに気落ちする。


もしかして俺の作るものの試食が嫌でみんなで示し合わせて……なんて疑心暗鬼になったりする。


いやあのメンバーはそこまで陰険な策略はしそうにないな。やはりいまいちだったんだろう。そんな感じで半分あきらめる。


ジラルドにも持っていって出してみたが、おいしいとは言われるがそんなに強い反応ではない。


これは考え直さないといけないかなと、かなり憂鬱になる。




 麺がダメとなるとレオーニ氏に持っていく新しい料理自体も考え直さないといけない。


その点はまだいくらでもアイディアがある。アイディアというがつまり前世にあって、今でも食べたいものだ。


とりあえずから揚げにとんかつに、とんかつとなればカツどんにカツサンドだ。カツどんは醤油がないから無理かもしれないが。


うん、そちらを考えてみよう。そんな風に思っていたが、実は全然必要がなかった。



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