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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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シンディたちの食傷

 最近はこちらの世界での麺づくりにいそしんでいる。そこで商会からの帰りに木工職人のところに寄る。


生地をこねるための薄くて広い板と、麺棒を注文する。麺棒は少し太めの丸い棒で、表面が滑らかなものだ。




 そして家に帰ると2人の話し声が聞こえてくる。


「ああ、またあればっかり食べさせられるのね」

「前のときはどれくらい続いたんだっけ?」

「3日は連続。でもその後も断続的に」


なにか渋滞の報道のような言われ方だ。


「そうだ。アランたちも呼んできて付き合わせればいいじゃない?」

「そうだね。そうすると1人分の食べる量が減るね」





 俺の料理はジャイアンのリサイタルか? あれは確か元ネタが『寝床』という落語で大家が店子に無理やり下手な義太夫を聞かせる話だった覚えがある。


みんな言い訳をして逃げだすのに怒った大家が聞かないなら家から出てけと言い渡す。


息子思いの母親と親思いの孝行息子が、お互い相手に大家の義太夫を聞かせると体に悪いと、競って私が聞きますなどと争う美しい? 話だった。


今回は逆になっている。


そんなひどいものを食べさせているわけではないと思うのだが……。俺自身も食べているし。





 しかも日本と違ってこちらの食事は同じものを食べ続けることはしょっちゅうなのだ。麦がゆなど毎日続く。それなのになんで続くことに文句を言われるのか。


うどんもどきが続いていてもよさそうなものだ。ただ慣れないものが続くのがよくないのかもしれない。


こうなれば慣らしてしまおうかとも悪だくみをする。




 そんなことを考えつつも、すぐに入れないのでしばらく時間をつぶしてから家に帰る。なんともみじめだ。


あたりを歩いて時間をつぶしてから、少し大きい音を立てて家に入る。2人が話をしていてもすぐにやめられるようにだ。


少し休んでまた試作品づくりをはじめ、味見に入る。2人への試食をさせなければいいのだが、なんとなくそれも不自然だ。


「ねえ、フェリス。アランたちも呼んできて、一緒に味見してもらえばいいじゃない?」

「そうだよ。多くの人の意見を聞いた方がいいよ」


さっきのやり取りを聞いていたことを言うと感じが悪くなりそうなのでぐっと飲みこむ。ニコニコして

「そうだね。じゃあ声をかけておいて」

と返す。

ああ、完全にオッサンだ。俺の方から声をかけるのは悔しいので、せめてそれは向こうにゆだねる。

アランたちがウンザリしたら、巻き込んだのはシンディたちだ。、



 気を取り直して麺づくりに取りかかる昨日の失敗があったのでもう少しこねる時間を長くし、また寝かせる時間も長くした。


ただ冷蔵庫がないので、長く生地を外に放置していいのかわからない。パン生地の発酵もこんなもののような気もするけれど。


相変わらず不格好だが、前よりはちぎれない。ちぎれた場合とちぎれない場合でいちおうメモしておこう。こういうとき失敗例の記録も大事だ。


失敗例が記録されれば、後の人はそれを避けることができるし、失敗してもそう言うことがありうるとわかる。


自分自身だって実は半年もすれば忘れてしまう。その時にも失敗の記録があるとそれを避けることもできるし、失敗したときに不安にならずにすむ。




 こねの方がうまくいくと今度はゆでの方に集中できる。お湯はたっぷり沸かした方がいいんだったな。


それでまた何度か取り出してみて、ベストなタイミングを計る。浮いてくるくらいがいいみたいだ。それなら今後は浮くまでは放っておいてもいいのかもしれない。


また試食する。うん、明らかに昨日よりはいい。そこでシンディとマルコもつき合わせる。


「また試作品ができたんで、試食をお願い」

「あら、昨日とは形が違うのね」

「ずいぶん長い形をしているね」

「初めはこのつもりだったのに、昨日は細かくなっちゃったんだよ」

「まあ昨日より面白い食感のような」

「少し食べにくいかも」


確かに麺は初めての人には食べにくいかもしれない。すぐになれるだろうけど。




 そろそろスープに入れたい。日本だったら濃縮のだしつゆやら粉末スープがあるから楽だった。だいたい醤油だけでもまあままの味になっていた。


こちらだとスープは一からとらないといけない。しかも鰹節や昆布や煮干しがないから、鶏ガラや肉や野菜を使って結構面倒だ。ああ、スープ屋はないのかな。




 日本でラーメン屋が流行っていたときに、職人がスープを取るのに長時間かけてえらい苦労をしていた。


あんなものは機械でするべきだと思っていたが、俺の考え付くようなことはとっくに誰かがしている。大手はそうやっているようだ。


うちでうどんやラーメンを出すときは郊外の工場でまとめてスープを作ることになるのかもしれない。


だいたい前世だってスープは店で作ったとしても麺は外注が多かった。別にスープを外注してはいけないわけじゃない。




 あ、そうだ。麺打ちの方も考えないといけない。いまはペダルを踏む足踏み式のこね機を使っているが、量が多くなるようなら水車式も導入した方がいい。


もちろん規模は大きくなるし、メンテナンスも大変になると思う。ただ量が多くなったときにいつまでも人力に頼っているわけにもいかない。両方とも一緒に配達すれば効率もよさそうだ。


そんな感じでまだ試作品もできていないのに、皮算用だけは進む。


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