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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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クルーズンでの軽食の話し合い

 クラープ町でしていた商売でクルーズンに進出している。もちろん他の商売をしてもいいのだが、人が少ないのでとりあえずは得意分野からだろう。次は軽食になる。




 軽食についてはこちらには料理を監修してくれたレオーニ氏がいる。


もともとクラープ町で俺が元の世界の軽食を出そうと思っていたが、それだけだとすぐまねされそうなので、クルーズンのシェフのレオーニ氏に監修してもらったのだ。


そこでクラープ町ではクルーズンの名店レオーニ亭の監修ということを掲げて商売をしている。秘密の手順があるため、競合の店よりやはりおいしいと評判だ。





 レオーニ氏には軽食を何らかの形で売り出すことを勧めていた。ただお好み焼きとか餃子とかその類だったので、彼の店のような高級店では出しにくい。


そこで賄いまかないつまり調理人たち向けのありあわせ料理と称して販売する提案をしていた。だがレオーニ氏は商人というよりシェフなのでそういう方にはあまり意欲がないようだ。


確かに日本でも有名シェフの名前を使って店を展開することはあるが、どこか別の業者が関わっていることが多い。


料理人が単独で目の前でコントロールできる飲食店以上のことをしていることは多くなかったように思う。だから彼がしないのももっともだ。




 だったらうちの商会が関わってしてしまえばよいと思う。もちろん名義使用料はきちんと払うつもりだ。そういうわけでレオーニ氏を訪ねる。


「今日は何をしに来たんだい?」

「実は当商会もクルーズンに進出しまして、そのご挨拶に」

「それはご丁寧に。ずいぶんとやり手だね」

「はい、おかげさまで」

「リアナは上手くやっているかい?」

「ええ、うちの食品部門を引っ張っています」


実際の管理はむしろエミリだが、トップであることは間違いない。


「それで今日は? 君が来たということは何かあるんだろう?」

「お話が早い。実はこちらでも軽食を売りたいと思いまして……」

「そんなことだろうと思ったよ」

「レオーニさんがなさるならうちは遠慮しますが、なさらないようでしたらお任せ願えないかと」

「まあちょっとこちらはできそうにないね」

「はい、こういうことはやはり商人の領分でして」

「クラープ町では軽食だけでもかなり広げたようだね」

「ええ、おかげさまで、店や行商先も増やすことができました」

「それをこちらでもしようと考えているのかい?」

「はい、そのつもりです」

「また僕の名前を使うのかい?」

「ええ、そうさせてもらえるとありがたいです。もちろん費用はお支払いします」


そう言うと、レオーニ氏は何か考えている。

「なんとなく気が進まないんだよなあ」




 高級店でああいう軽食みたいなものは格が下がるのを心配しているのだろう。それを打ち消す。


「以前も申しましたが、『レオーニ亭のまかない』などという名前を付けて、お店とは別物であることを強調します」

「いや、名前の方じゃないんだ。あれはあれで自信作だし、監修をうたってもいいんだけどね」


その後はなんとなく商売の話から遠ざかってしまい、同意を得ることができないまま別れることになってしまった。





 軽食は商売を広げる上ではぜひ欲しいところだ。目の前にあるのに、しないという選択肢はない。だがレオーニ氏といさかいを起こしてまで強行するのも気が進まない。


ギフトですぐに帰れるので、クラープ町に戻りリアナに相談することにした。


リアナはレオーニ氏に監修してもらった後に、誰か料理ができる人をよこしてほしいと頼んで送ってもらった、彼の弟子だ。


「レオーニ氏にクルーズンでも軽食を展開したいと頼んだんだけど、何か気が進まないらしいんだ。心当たりある?」



 リアナは少し考えている。それからたどたどしくだが言葉をつないだ。


「それは……、師匠はフェリスのやり方はあまり好きじゃないかもね」

「俺のやり方ってどんなの?」

「マニュアル作ってみんなに同じ事させるとかそういうの……」


ああ、なるほど。それはわからないでもない。俺でも嫌だと思うことがあるから。


「うーん、わかるんだけどね。だけど効率を考えるとこれの方がいいんだよなあ。しかもこっちの方が職場としてはホワイトでしょ」


レオーニ氏の店はどうもあまりホワイトではない。高級店で修行となるとそういうものなのかもしれない。前世でもかなりの高級レストランでもブラックということはけっこうあった。


「まあ、そうなんだけどね。あたしは少しはフェリスの言うこともわかるようになったけど、やっぱり料理人とは感覚が違うなと」


いやそれは、料理人だからとか商人だからというわけではない。ドナーティ商会のマルキもブラック経営者だったし、パラダあたりも怪しい。


日本の経営者だってブラック気味が多いが、ホワイトだっている。料理人だってホワイトがいないはずがない。


「だけどなあ、このやり方を否定されちゃうと、商売自体が成り立たないからなあ」

「フェリスの言うこともわかるよ」


リアナも考えが変わってきたらしい。




「じゃあどうするかだなあ」

「商売のやり方の方で説得するのは無理だと思う。だから別の方で攻略した方がいい」


「どうすればいい?」

「前に餃子とかいろいろ持っていったでしょ。師匠はずいぶん感心していた。やっぱりね、新しいことをしていると気分が上がるんじゃないかな?」

「新しいことってどんな?」

「例えばまた新しい料理ネタとかない? すぐには難しいかもしれないけど」


いやそれはいいことを聞いた。むしろありすぎるくらいだ。前世で食べていて、こちらでも食べたいものがある。


いくつもあるがすぐに作れるわけではない。とりあえずすぐに欲しいのは麺だ。


「それなら、ある!」

「え? あるの? じゃあ、それを持っていけばたぶんいうこと聞いてくれるよ」


そんなわけで今度は麺を作ることになった。

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