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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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行商はじめと今後の展望

 行商をいよいよ始めることになった。開店時は事前のポスターやセールなども行って人を集める。その日は別に赤字でも構わない。


ただ数量制限や売切れごめんなど起こりうるトラブルについては事前にポスターで注意しておく。


こういうのも経験がたまってきているから可能なことだ。




 基本的に行商はジラルドに任せている。とはいえ初めは俺も視察に行った。ジラルドは危なげないがついている2人はまだたどたどしい。そのうち慣れるだろう。


俺はクラープ町での仕事もあるのでこちらにつきっきりというわけにはいかない。だいたいクロが世界の中心なのだから毎日帰っている。家はあちらだし。


でもそうするとクルーズンのジラルドについた2人の子は気になるようだ。ジラルドから相談された。


「彼らにフェリスさんのことをいろいろ聞かれるんですよ。どう答えたらいいのでしょう?」


「『商会長ってふだんは何をしているんですか?』『何かひまそうですよね』なんて調子でして」


なんということだ。こちらは忙しいのに。猫もふに猫なでに猫のご飯に猫のトイレの始末についでにあのうざい神に文句も言わないといけない。とはいえ、そんなことは言えない。


「それでなんて答えたの?」

「商会長はクラープ町の方でも仕事があっていろいろ忙しいと」


まあ、その通りだ。間違いない。


「ところがそう言うと今度は、『だけどいつもこちらにいるじゃないですか? 向こうで仕事をしている時間はありませんよね』と聞かれてしまって」


いや向こうには行っているのだがそれはギフトを使っているからだ。確かにふつうに行くと馬車でも最低往復4日はかかる。しょっちゅうこちらにいたら、行っていないと思われるのは当然だ。


やはりギフトを隠そうとするとやりにくい。幹部だけでも知らせておいてよかった気がする。かといってまだ彼らに知らせるわけにはいかない。


アランなら何かうまく煙に巻いてくれそうな気もするが、まじめなジラルドだと難しそうだ。それはそれでいいのだけれど。




 どうしたものかと考える。彼らは妙に好奇心を持っているのであまり底の浅い嘘だと簡単にバレそうだ。


「今度は神の家の仕事をしていると言っておいてくれ。教会育ちだし、司教ともいちおう顔見知りだしね」

「わかりました。そう言っておきます」


神の家というのはクロの家つまり俺のおうちのことだけれど。神が入りびたりで、この世界で一番神の滞在時間が長い。


必要なら神とは何にも関係ないが司教からの手紙を見せてもいい。せっかく少なくない金を出したのだから積極的に活用しよう。




 紆余曲折はあったが順調に行商は進んでいるようだ。正直に言えば赤字になっていないだけでたいして儲かってはいない。


だけどとりあえずは後進が育てばそれで構わない。十分に人が増えたときが本当に儲ける時だ。いまは仕込みでしかない。



 3か月くらいしてずいぶんと慣れてきたので、ジラルドなしで彼らに店を任せてみることを考えた。


「そろそろ君なしでも彼らはやっていけるんじゃないか?」

「いや、まだ心配なところはありますよ」

「アランだってもっと早く店長やって、失敗もしていたけど、何とかなっていたよ」

「今から考えるとむかしはけっこういろいろ雑でしたよね」


むかしと言ってもまだ2年もたっていない。


「まあそう言うことだから、やらせてみようよ。少しくらいトラブっても俺たちが頭下げればいいだけだから」


大けがとか人死にとか出なければ、後は金で解決できる。頭を下げるのは役職者の仕事だ。


「それはいいですが、3人だったところ2人だけでいいですか?」

「そうだね、2人でもできる仕事だけど、雇ってもう1人つけようか」

「そこまで必要ですか?」

「いや、3か月後に彼らに店長をさせるときになれている店員がいた方がいいだろ」

「あ、なるほど。そうですね。じゃあまたギルドに頼んでおきます」

「2人頼んでおいて」

「わかりました」




 たぶんこれだと赤字になりそうだ。とはいえそれはあくまでも投資だ。3か月後から少しずつ取り戻せるようになる。儲けようとするとやはり先立つものがないとやりにくい。


前世でも貧乏な人は電気釜がないから弁当買って、洗濯機がないからコインランドリーに行って、お金貯められていなかったな。


料理の方はもう少しいろいろ要因があった。簡易キッチンでとても料理などできないとか、それなりのサイズの冷蔵庫も高いとか、そもそも長時間労働で疲れて料理する気が起きないとか、料理ができること自体が文化資本だとか。


持っているものがますます富んで、持っていない者がますます貧しくなるわけだ。




 始めて後輩二人に店を任せるとき、ジラルドはやはり心配になり変装して陰に隠れてみていた。


実は俺もこっそり見ていたのだが、なぜか広場で露店をかぎまわる怪しい男に気づいて、よくよく見るとジラルドだった。


露店とジラルドと両方を眺める。露店でちょっとしたトラブルが起こりかけたときジラルドは飛び出しそうになったが、俺は肩をつかんで止めた。


「マニュアルも渡してあるし、十分に育てただろ。けがさえしなきゃ後で俺たちが謝ればいいだけだからな」


ジラルドは出たそうにしているが、強く引き留める。しばらくしてトラブルも片付いたようだ。



行商が終わって2人が戻ってきて素知らぬ顔で状況を聞く。


やはりトラブルはあったが大したことはなかったようだ。


だいたいシンディなんか恐喝相手に大立ち回りをしたくらいなんだぞ。これくらい全然大したことないと思う。



 そんなわけで新人に店も任せられつつあるようになり、ジラルドには新規の出店先の開拓の仕事を振ることにした。


そちらはそろそろ流通も考えた方がいいので、カミロにも相談してみる。もうすぐ12カ所以上になるはずで、クルーズンでも発展の兆しが見えた。


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