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猫の世話人、冒険も商売も猫のためのチート能力で9時5時ホワイト勤務  作者: 猫の手下
3章 12歳~ 商売の展開とクラープ町での陰謀 クルーズン市
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行商の仕入れ先探し

 クルーズンでも商売を広げるのに、まずはクラープ町でしていた諸事業を展開しようと思う。


初めは塾と洗濯だったが、それ以外にも行商と郵便と軽食がある。




 行商については市場や商会のある南の方に拠点があった方がやりやすい。


ジラルドに物件を探してもらうことにする。ジラルドもかなり行商には慣れているので、よさそうな物件を探す能力は高い。


ただ街自体が人口増加気味なので、あまり安く借りることが難しいのが難点だ。家賃が安くなる要素については馬車の出入りくらいはできてほしいが、表通りである必要はないことくらいか。


人口が増えていることについて物件を借りるには損だが、商売をするにはいいことだ。


人口増加に対して店の増加が追い付いていない。つまり入り込める余地が多いということだ。


場合によってはクラープ町で初めにしていたように、拠点なしで家畜用の厩舎も倉庫も借りる手もある。


もちろんいろいろ費用はかかるだろうが、選択肢としてないわけではない。




仕入れについて青果商のブリュール氏と相談する。


「私どもはクラープ町ではいろいろな商売をしておりますが、一つの柱として食品の行商をしております。ブリュール商会からも仕入れをお願いしたいのですが、可能でしょうか?」

「それはもちろん大歓迎です。どのようなお品物が必要でしょうか?」

「行商先によって様々ですが、青果はもちろん肉・魚・穀物・調味料など多種多様に扱っております」

「手前どもでは青果しか扱っておりませんので、他のものとなるとまた別の業者をご紹介することになります」




そういえば、そうだった。クラープ町では友達のマルコの親類ということで何も考えずにドナーティ商会に仕入れを頼んだのだった。


ドナーティ商会は食品小売りをしていたので、いろいろなものを取りそろえられた。


ブリュール商会は青果専門なので、小売りもしているとはいえ、青果以外は仕入れできない。その点も考え直さないといけなかったのだ。


仕入れ値の目安なども聞いておく。やはり量が多くなればその分安くなるようだ。


一人で決めるより多くの意見を聞いた方がよいので、この情報をもとに幹部で話し合う。もちろんジラルドも連れてクラープ町に帰るのだ。




 いつものことながら俺の家のクロの前に出る。そしてすぐにクロにモフモフする。


「それはしないといけないことでしょうか?」


ジラルドが聞いてくる。どういう意味なんだろう。


ジラルドもしなくてはいけないという意味なのか、それとも仕事中にそんなことをするなという意味なのか。


前者ならクロ様のご意向次第で、触られたい者もいれば触られたくない者もいるだろう。雌猫なので傾向としては知らない人には触られたくないようだ。


後者ならやはりクロ様のご意向次第だ。クロ様がそれをお気に入りならするべきだし、そうでなければしない方がよい。猫の福祉はこの世界の最重要事項だからだ。


どういう意味か聞き返すのも面倒なのと、どちらにしても答えは変わらないので、その通りの答えをする。

「それはクロ様のご意向次第だね」




 ジラルドは面食らっている。納得したのか、もう相手しても仕方ないと思ったのか、どちらかはわからないが、この話は沙汰やみになった。


いやこれは高度に神がかりな判断であって、趣味や嗜好のような簡単なものではないのだ。




 ともかく本社に向かい、早速幹部を集めて会議を開く。


「クルーズンでの行商の仕入れについてだけど、専門店に依頼するか、食品小売商に依頼するか話し合いたい」

「それぞれ利点と欠点はどんなものなの?」

「専門店の方が仕入れ値は低い。だけどいくつも回らないといけなくなる」

「小売商の方はどうなの」

「専門店に比べると仕入れ値は高くなる。ただ一か所で仕入れられるし、場合によっては倉庫代わりに使える」

「なるほど、それぞれ利点欠点があるわけだ」

「さてどちらにしたものか」

「いや、両方ということもありうるよね」

「え? それ何?」

「つまり店舗が少ないうちは小売商の方が都合がいい、だが拠点が増えてきたら専門店の方が都合がいい。

だから初めは小売商に頼んでおいて、店舗が増えるごとに専門店からの仕入れを増やしていけばいい」

「なるほど、それは方針としては考えられるね」


やはり相談してよかった。新しいアイディアが出てくる。


もちろん前世を思い出すと、相談するとわけのわからないことを強硬に主張するのが出て来て、しかもその思い付きを何が何でも押し通そうとして混乱させられたこともあるから、常に相談がいいとは限らないのだけれど。たぶん今のこのチームがいいからうまくいくのだろう。




 そんなわけで小売商に交渉に行く。ギルドから紹介のあった業者だ。


「私ども、クラープ町で食料品の行商をしているシルヴェスタ商会と申します。店がない地域に露店を出しております。最近こちらのクルーズン市でも商売を始めました。仕入れをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか?」


こんな感じで声をかける。1軒目は商売敵を増やすなどとんでもないと拒否される。


2軒目は話は聞いてくれたが仕入れる店舗などいろいろ条件が合わないため見送りする。


3軒目でようやく妥協できる仕入れが可能になった。家畜や荷車の預かりも有料だがお願いする。


青果商のブリュール氏には、店舗が増えたら仕入れを増やしますからと言って、とりあえずは日持ちする根菜類のみ仕入れることにした。後のこともあるので付き合いはつなげておく。




 後はロバと荷車も購入しなくてはいけない。幹部が何人もいれば任せればいいだけなのだが、こちらにはいま俺とジラルドしかいない。


2人で駆けずり回る。その間もジラルドは全部メモを取っている。あとでまとめてマニュアルにしてくれるそうだ。なんとも頼もしい。


一度ある仕事を経験したときの経緯をまとめたものがあると2回目をするときにはるかに楽になるし、引継ぎも簡単になる。


また他の人に協力を頼むときもそれを見せれば全体の経緯がわかるのでやりやすい。


今後もロバや荷車を購入することもあるだろうが、どんどん楽になりそうだ。初めにクラープ町で商売を始めたときはそこまでは思い当たらなかった。


というより全然そんな余裕がなかったように思う。

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